Day3,4-入院生活2

 点滴の話が出たので、ひとつの出来事を紹介しよう。入院2日目に「点滴の減りとスピードが早すぎるのではないか」疑惑が生じた。その話には続きがある。
 急激に衰えた若い体を戻すには、ほぼ滝のように落ちる点滴のスピードが良いのかもしれない。しかし、500mlほどの点滴液が30分もしないで空になるのは、さすがにおかしいのではないか。私は医療関係に疎いので、術後の点滴スピードはそんなものなのかもしれないが……
 さて、見舞いに来た父は見兼ねて、点滴のスピードを遅くした。私一人のときは自分で調整した。勝手にやっていいか分からないが、止めるわけではないから良いだろう。それに…点滴が刺されている腕が、どんどんとドス黒く変色してきているのだ。少々血管が押される痛みもある。これは腕の中で点滴が漏れているかもしれない。ナースコールを押す。
 私は血管が細い。採血でも肉に刺さるほど厄介な細さだ。ある意味看護師の腕の見せどころなのだが、はたしてこのヴェネツィアではどうだったか。
 女性看護師(尿瓶の彼女だったかは思い出せない)に腕の状況を見せると「ふふん。」と納得した様子で、ブチッと針を抜き、反対の腕にブスッと刺して終了。「痛いか?」「ここはどうか?」など、一切聞かれない。
 案の定、反対の手もやがてどんどんとドス黒くなり、またもや点滴液が腕の中で漏れはじめた。私は自分で針を刺せないから、もう諦めて、点滴のスピードを調整して我慢するしかない。
 点滴のスピードが早いのも看護師に指摘したが、やはりというか「問題ない」で片付けられた。両腕に漏れた点滴痕は、長いことドス黒く残ったままであった。20年経過した現在は、この痕跡も残っていないのでご安心を。

 

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