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ドローイングワークショップを開催します

岩手県、北上高地の早池峰山麓で山を見ながら暮らしている絵描きです。岩手県立美術館の企画展「IMAをうつす7人ー岩手の現代美術家たちー」に出品しています。

岩手県内陸部も先週から本格的な雪となり、気温も低く積もった雪が融けません。このまま根雪となりそうです。

岩手に住み始めた頃は初雪を見てわくわくしたような気がしますが、その記憶も薄れ今では雪を見た瞬間に早く春が来ないかな…と思っています。家の前の雪かき。屋根からの落雪。冷蔵庫内の方が暖かい寒さ。いま地球温暖化を願うわけにはいきませんが、実は毎年暖冬を願っています。

さて、FIFAワールドカップ カタール2022も終わり、私は中二でサッカー部(ポジションはベンチ)だった’86年メキシコ大会の時もマラドーナではなくプラティニがヒーローだった(’98〜2006は当然ジダンだった。そういえばフランスに留学もしてた)ので今回もフランス代表を応援していたので残念ですが、アルゼンチン寄りに見えた審判(後で全部見たらそうではなかった)とアルゼンチンの応援しかしていなかった解説者とフランスが攻められない展開が嫌になり睡魔もあって前半でリタイヤ…起きていればその後の激闘に興奮したと思うけど今日が寝不足で辛かったと思う…何の話だっけ。そう、もう一度思い出してもらいたいのが岩手県立美術館で開催中の展覧会「IMAをうつす7人ー岩手の現代美術家たちー」です。

こちらは岩手にゆかりの現代作家を紹介する展覧会ですが、開幕から3週間、そんなに盛り上がっているようには思えません。岩手県立美術館が今年最も多くの人を集めた、江口寿史「彼女」展は2万人を動員したそうです。そこまでとは言いませんが「IMAをうつす7人」もぜひ多くの人に見て頂きたいです。展覧会会期はトータルで63日間なので、一日10人来ても630人…さびしいですね。集客の見込める夏休みに集客の見込める展示をし、雪と寒さで出足の鈍る冬に無名の地元作家の展覧会をするのは経済学から言って当然といえば当然ですが、せっかくなので多くの人にご来場頂きたい。

美術館では展覧会に関連したイベントを用意しています。一つがアーティスト・トークです。すでに2回が終わり、最終回は1月14日(土)に私と石田貴裕さんがそれぞれ担当の学芸員と展示室で何か語ります。14時から。
もう一つはワークショップです。これは年明けから3回あり、初回が1月8日(日)に私、1月9日(月・祝)が出町隼人さん、1月28日(土)が中島香緒里さんの担当になっています。上の展覧会ウェブサイトからご覧ください。

やっと本題に辿り着きました。1月8日(日)の私のワークショップ「八重樫理彦 うごきのかたち」について書きたいと思います。

私はいま住んでいる花巻市大迫町に伝わる早池峰神楽(はやちねかぐら)という民俗芸能を何度も描いています。描いていると言っても、タブローにすることはあまりなく、お祭りの舞台で踊っている人をその場で見ながら何百枚か描いてきました。そういう、生で人を見ながら短時間に描くようなことをクロッキーとかドローイングとか言いますが、日本画なり油絵なりのための下絵とする人もいると思います。私も以前はそうした作品を制作していましたが、最近ではドローイングそのものを作品として発表しており、今回の企画展にもドローイングを出しています。
私がなぜこの神楽を繰り返し描いてきたかというと、大変に素晴らしい芸能だからです。これでは何の説明にもなっていませんが、この芸能に出会って30年、その間様々な舞踊芸術を観ましたーパリに留学中はパリ市立劇場の会員になってコンテンポラリーダンスは山海塾を含めほとんど見ていましたし、オペラ座ではシルヴィ・ギエムの白鳥の湖を見たり、また2000年代に来日したピナ・バウシュの舞台は全部観ました。大野一雄の舞踏も観ましたーが、それでも早池峰神楽のいい舞をみた時のような感動をしたことはありませんでした。

この素晴らしい舞を紙の上に描き留めたいというのが私がこの芸能を描いてきた動機です。私の神楽のドローイングは、舞の流れるような動きを記録しながら2次元上に何か見たことのない面白い絵が現れることを期待して描いていて、神楽の衣裳や舞手の瞬間の姿形の美しさを描こうとするものではありません。絵を見た人からは「何が何だかわからない」と言われることも多いです。止まったような絵を描こうと思えば描くこともできますが、それは私にとってそれほど面白いことではないのです。よい舞手さんのよい舞が見られた時、私は筆をとり、その結果生まれたドローイングはどういうわけか抽象度の高い面白いものになります。

大償神楽 山の神 2006年4月23日 墨、和紙 2006年
抽象的になった1枚。
「鳥舞」 墨・顔料・膠 パネルに麻紙 130.3×130.3cm  2006年
ドローイングを元に制作した一枚。(今展には出品していません)

今回のワークショップ「うごきのかたち」では、実際に神楽を舞う人に舞って頂き、その姿を描きます。ただし、正式な神楽の公演をやって頂くのではなく練習のような形で舞って頂きますので衣装は付けていません。そのぶん動きに特化して描けると思います。
美術大学や美術学校では静止ポーズの人物デッサンだけでなく、「ムービング」と呼ばれる、動く人を描くデッサン・クロッキー・つまり写生をよく行います。私の学生時代、武蔵野美術大学の日本画学科ではよく舞踏家の舞踏を描く授業がありました。留学したパリのボザール(国立高等美術学校)でもコンテンポラリーダンスを描くクラスがありました。

今回のワークショップでは画材は鉛筆・色鉛筆・パステル・墨・不透明水彩などに、紙も各種取り揃えてお待ちしています。参加者は手ぶらで参加できます。もちろん使いたい画材を持参しても構いません。私が普段どのように描いているかも見ていただけますが、皆さんには自由に描いて頂きます。創作には正解はないからです。多分、だいぶ面白いワークショップになるのではないかと思っています。申し込みの期限は今週の22日(木)に迫っていますが、まだ余裕があるようなのでご興味のある方はどうぞお申し込み下さい。ワークショップは1月8日(日)13:00〜15:00、会場は岩手県立美術館のホールです。
お申し込みは下記リンクから参加申込みフォームに進んでいただくか、お葉書で。
どうぞ奮ってご参加ください。

「八重樫理彦 うごきのかたち」 
2023年1月8日(日) 13:00~15:00  岩手県立美術館 ホール 小学生以上15名まで



私のドローイングについての文章は過去の記事でもお読みいただけます。


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