見出し画像

ドラマシナリオ⑪ もう一つの模試③(終)

■あらすじ■

 作品テーマ(キープレイス?)は「軽井沢」。家庭の事情で離れた幼馴染との再会を描く。
 新浦智彦佐竹さゆりは幼馴染の高校2年生。模試をサボって軽井沢に向かう新浦。文化祭でライブをやるさゆりをサプライズで応援するためであった。さゆりの学校についた新浦は、さゆりの家族とともにライブ会場である体育館に向かう……

■シナリオ本編■

◯軽井沢高校・体育館入り口前

入り口に白地に黒のゴシック体で「ボルケーノ ライブ」と書かれた立て看板。生徒や来校者が入っていく。
きよみに引っ張られながら、キョロキョロ見回しながらあとに続く新浦。硬い表情の佐竹、柔和な表情の涼子が続く。

涼子「パパがカチコチになることないのよ。さゆりはさゆりだから」

佐竹「わかってるんだけどなぁ……どうも緊張しちゃうな」

佐竹を小突く涼子。
新浦、きよみを引っ張り返す。驚いて振り向くきよみ。リュックをおろして中からケロ太を取り出す新浦。目を見開いてケロ太を受け取るきよみ。

きよみ「わぁ、かわいいね。お兄ちゃん、この子どうしたの?」

新浦「君のお姉さんを応援したいという、昔の友達」

涼子「あら! ケロ太じゃない! 懐かしいわねぇ」

新浦「僕がきよみちゃんを肩車して、きよみちゃんがケロ太を掲げてくれれば、さゆりだって気がつくかな、と思って」

差し出されたケロ太をぎゅっと抱きしめるきよみ。
佐竹、新浦ときよみを促すように肩を抱いて入り口に入る。


◯同・体育館・中

生徒や来校者で満員の体育館。「噴煙フェス2018 軽井沢高校」と書かれた看板が下がっている舞台。
人混みをかき分け、体育館の真ん中に進む佐竹、涼子。二人のあとにきよみを肩車した新浦が続く。
舞台にはドラムセットが置かれており、ギターを抱えたさゆり、ベースを抱えた女子生徒、スティックをくるくる回す女子生徒、大きく手をふる女子生徒が舞台袖から小走り出てくる。歓声と拍手の中、舞台で楽器のセットを始めるさゆり達。
全員ポニーテールで溶岩のような色のリボンで髪を結んでいる。

佐竹「さあ、いよいよか……」

硬い表情で腕組みする佐竹の肩を撫でる涼子。

涼子「ヤダ、私もなんか緊張しちゃうわね」

肩車したきよみを見上げる新浦。

新浦「きよみちゃん、見える?」

きよみ「うん、すっごいよく見えるよ! お姉ちゃんカッコいい!!」

ケロ太を振り回すきよみ。
振り向いたさゆり、驚きの表情を浮かべるが、すぐに左右のメンバーに頷いて、後ろのドラムの生徒に片手を上げ、マイクスタンドに歩み寄り、マイクを引き抜いて、スイッチを入れて、マイクを数回叩く。体育館にボンボンとマイクを叩く音が響く。こくりと頷いて、会場に向かって一礼するさゆり。一呼吸遅れて一礼するバンドメンバーの生徒たち。

さゆり「こんにちはー! 今日は私達、ボルケーノの発表に来てくれてありがとうございます!! 短い間ですが、楽しんでくださいね!!」

大きな歓声と拍手。
さゆり、楽器を持たない生徒にマイクを渡して、下がるように手を振り、ドラムの生徒に片手を上げる。
スティックでカウントを取るドラムの生徒。カチンカチンと打ち鳴らす。
さゆりとベースを持った生徒が元気よく楽器をかき鳴らし始める。
新浦の周囲で歓声が沸き起こる。驚いて盛り上がる周囲を見渡すきよみ。

きよみ「おねーちゃん!!!! カッコいいよー!!!!」

ベースの生徒が客先に向かって指さし、片手を上げる。
湧き上がる歓声と同時に、拳を振り上げるメガネ姿の中年男性と女性。

涼子「あ、くみちゃんのパパとママね」

佐竹「やっぱくるよな、娘のライブだもんな」

ベースの生徒、中年の男女に手を振り、舞台後方のドラムの生徒に位置に下がる。楽器を持たない生徒が、激しい演奏をするさゆりを舞台前方に促す。
演奏しながら客席を見渡すさゆり。
客席でケロ太を振り回すきよみと新浦、佐竹と涼子を見つける。

さゆり「(つぶやく)智くん、ほんとにいるんだね……」

新浦とさゆりの視線が合う。
新浦、笑顔でさゆりに話しかけるが、歓声にかき消されてさゆりに聴こえない。
うつむいて、より激しく演奏するさゆり。歓声がより大きくなる。
楽器を持たない生徒、客席を煽りながらチラチラとさゆりを見ている。

さゆり「まみちゃん、ごめん。一発技、彼氏に見せたいの!」

さゆり、演奏しながらギターを振って、楽器を持たない生徒に下がるように促す。
呆れ顔でドラムの位置まで下がる、楽器をもたない生徒。
さゆり、演奏を止め、客先の新浦たちを指差し、そのままギューンと弾いて、ベルトを使って身体に沿ってギターを一回転。
新浦にウィンクするさゆり。客席、一瞬静まり返る。
大喜びのきよみ。抱き合うように寄り添う佐竹と涼子。どよめく客席。

新浦「さゆ……すげぇ……すげぇぞっ!! サイコーだっ」

肩車しているきよみのバランスを取りながら、拳を高く突き上げる新浦。

(終わり)

基本的に全文見れますが、投げ銭と同じ扱いにしてありますので、作品や記事が気に入って頂ければ、ぜひサポートお願いいたします。