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知財業界のコスパが良い知見や資格

本記事はパテントサロンの知財系もっと Advent Calendar 2023投稿です。

私は大学卒業以来長年、知財業界に所属し、様々な組織に所属してきました。様々な組織の知財関係者の知人も多く、この業界に精通している自負があります。

そんなこともあってか、大学生や第二新卒の方から知財キャリアについて相談を受けるケースが以前ありました。

「弁理士資格を取るために予備校に通った方が良いのでしょうか?」

「大企業の知財部に入るにはどうすればよいでしょうか?」

こんな感じのことを聞かれて、自分なりの考えを参考までにお伝えしてきました。

そんな中、ふと、「もし私が大学生に戻って、改めて知財キャリアを目指すなら、どんな知見や資格を身に着けるのがコスパが良いかな?」と考えたことがありました。

今回は、独断と偏見で、私なりのランキングを発表します。

気軽に読み流していただければと思います。

第5位 弁理士資格

特許事務所勤務を目指すならばもっと高い順位かもしれません。

特許事務所では、所内の立場や収入に直結します。特許事務所で働くのであれば、できるだけ早く取るに越したことはありません。

ただし、特許事務所に限定すれば、明細書作成スキルの方が優先順位は上と思います。

コンサルタントや事業会社知財部では、弁理士資格はなくても基本的に業務に問題はありません。資格手当がもらえる企業は少ないですし、目に見えるメリットは特許事務所勤務に比べて見えづらいです。

しかし、弁理士資格が昇格やPJアサインの際に考慮されるケースもあり、弁理士資格を有することで、隠れた恩恵を受けられる可能性が大いにあります。

私はコンサルティング会社勤務時代、唯一の社内弁理士だったため、知財に関係する話が多く舞い込んできて色んなチャンスに恵まれました。

マネージャへの昇格にももしかしたら影響していたかもしれません。

また、資格があることで、弁理士内はもちろん他士業との人脈を広げることも容易です。

ただし、難易度が高く、膨大な勉強時間を費やす必要があるので、この順位としました。

第4位 特許調査スキル

調査スキルというと汎用性のあるスキルでなぜこんな順位に?と思われるかもしれません。

しかし、私のキャリアは常にこの調査スキルに支えられてきました。

事業会社では知財戦略を立てる際に、調査スキルを土台に、様々な分析を行うことができました。

私は特許審査官として勤務した際にこのスキルを習得しましたが、知財キャリアを進む上でなによりも大きな財産となりました。

コンサルティングにおいて、顧客への提案活動をする際や、企業の技術分析をする際に、自分で特許調査分析を行うと、通常のコンサルタントと違う観点で説得力の高い資料が作ることが可能です。

高度なスキルまでは多くの場合必要ないが、短時間でパッとDBをたたいて必要な情報を取れるスキルは汎用性が高いです。

もし事業会社の知財部に配属された際には、このスキルを磨くと、いろんな場面で助けられることでしょう。

そこまで頑張らなくとも一定レベルまでは習得可能なスキルである割に、あらゆる知財業務を下支えするスキルなので、敢えて弁理士資格を差し置いて、この順位としました。

第3位 事業経験

何も自身で起業する必要はありません。

私は、事業会社で事業に関わった経験がほんの少しあります。ほんの少しではありますが、その経験はあらゆるシチュエーションで私を助けてくれました。

特許出願費用の予算がどの部門に紐づくのか、知財部長の決裁権限はどの程度なのか、事業部と知財部との力関係はどうなっているのか、研究開発テーマがどのような流れで定まるのか、等々。

こういったことは、やはり事業会社に所属しなければ、なかなか実感を持って理解できないと思います。

新卒で特許事務所などに就職すると、この事業経験が欠けてしまうのは、自身で営業して顧客獲得をする際に結構痛手かもしれません。

自身のキャリアの最終目標が特許事務所を設立しての独立なのであれば、特許事務所に就職する前に、事業会社で事業経験を積むのは大いにありと個人的には思います。

第2位 簿記3級


資格自体に大きな価値はなく、大卒の方が履歴書に書けるレベルではないかもしれません。(新卒や第二新卒ならば履歴書に書いてOKと思います。)

しかし、簿記3級の勉強を通して得られる簿記の基礎や財務諸表の基本的な考え方は、事業会社やコンサルをするならば、最低限必要な知識です。

PL(損益計算書)とBS(貸借対照表)の関係などは理解しておくと社会人生活が一気にスムーズになります。

最近は、コーポレートガバナンスコード改定に伴い、経営指標と知財指標を如何に関連づけるかという議論が方々で行われています。

コンサルティング会社は当然ながら、事業会社の知財担当者も最低限の財務・経営指標の知識を身に着けることはほとんど必須と思っています。

なお、よく2級まで取ると良いと良く見聞きしますが、それなりに難易度が高いですし、2級のコスパは3級に比べると良くないと思います。

個人的には第一位にするか悩むレベルですが、特許事務所では経営者にならない限り不要かもしれませんのでこの順位です。

第1位 英語


この順位に異論がある方はかなり少ないと思います。

現代ビジネスでほぼ必須といえる英語ですが、特に知財業界での重要性は他の多くの業界より高いことは周知の事実です。

最近はAI翻訳のレベル向上に伴い、自身で英語ができる必要が必ずしもないと思われる方もいるかもしれません。

知財業界はどんな組織に入るにしても多くの場合、TOEICの点数が要件としてついて回ります。出来るだけ早く800点程度をクリアしておくと、その後の知財キャリアでTOEICの点数で悩むことはなくなります。

人によってはそれなりの勉強が必要になるかもしれませんが、その時間を費やす価値があります。

どのような組織に所属したとしても、英語力があることで、日々の業務が円滑になることはもちろん、国際会議への出席や海外交渉、留学など可能性が一気に広がるでしょう。

また、実用レベルのビジネス英語を話せれば、かなり知財人材の価値が上がります。

私も最近は国際会議に出る機会をいただけていますが、やはり日本人は日本人や少なくともアジア系で固まりがちです。

そんな中、単独で欧米系の方と支障なく話せるレベルの英語スキルがあれば、他の日本人とも差が生じます。

新卒や第二新卒の方は、一刻もはやく英語をクリアして、豊かな知財キャリアを築いていただければと思います。

以上、偏見にまみれたランキングでしたが、気軽に読んでいただけたなら幸いです。

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