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口伝 受け繋いでいくということ

実はとっても気になっているんです。口伝。

デジタルの時代になんのこっちゃという方に、一応、意味を書きます。

口伝とは……口頭で伝えること。口伝伝承、口頭伝承とも言います。伝統芸能や古武道の芸道においては、師匠が弟子に芸や学問や奥義を口頭で伝えること。

なぜ気になっているかというと、私がいる業界は実は口伝が多く馴染みがあるんです。統括する官庁から正式な書類が出ていないことが多い。官庁への届け出や提出方法など、書類にない慣例がよくあります。

最近、少しずつ書類として出てきましたが、いまだに口伝が伝統なんです。そんな官庁は横において、デジタルの時代だって、意外と口伝は大事だよなあと思うことが多々あります。ちょっとしたニュアンスは、結局マニュアルではなく口頭伝承ですよね。


町内会の貼り紙に切ない思い

で、昨年の夏、今年の夏と気になっているのが、盆踊りなどの地域行事の中止のお知らせ。

夏の思い出といったら、盆踊りを思い出すんです。

浴衣を着て、焼きそばやかき氷を食べて、近所のおじさんおばさんに会って、同級生といつもと違う時間にあって。皆が、ぺったんぺったんサンダルや下駄をはいて会場に向かう。

そんな光景が頭に浮かぶのです。

大人になって思い出す光景って、そうした行事の一場面なんですよね。思い出して、懐かしい気持ちになったり、切ない気持ちになったり、時の流れを感じたり。

行事には日本人の心の機微や郷愁を、大人になる過程として蓄積する役目もあったと思うのです。そこが日本人のアイデンティティでもあるのではないかと。

口伝継承は大丈夫なのか

もう一つ心配なのが、地域の伝統の継承です。立派な大きな行事でなくても、町内会の小さな盆踊りもすべて、毎年携わった人たちが次の人たちへ、これまでの学びを伝えているはずです。

その伝統の継承が途切れてしまうのではないかと危惧しています。

この2年の間に、これまで関わっていた人が関われなくなってしまうことも当然あるはずです。

決まった年齢で行うはずの行事もたくさんあります。孫の行事を楽しみにしていたおじいちゃんおばあちゃんもいるはず。

私の祖父は、江戸時代からの地域口伝の踊りを知っている、唯一の人間でした。

30年以上前に復活させたその踊りは、今も地域に継承されています。祖父が復活させずに亡くなっていたら、その踊りは消滅していたはずです。

歌い継いだり語り継いだりする文化がたくさんあるわけで。口伝だから味が出るものがたくさん存在しているわけで。

大事な伝統まで途切れてしまうのかと心配になります。そんなことを考えると、どうにもならないと思いながらも切ない気持ちになるのでした。

なので皆さん、デジタルを駆使してでも、この時期を乗り切って後世まで伝えてください。お願いします。

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