終・Vtuberについて徒然と思うこと

 今は昔、3年間ほどブログをやっていました。先日noteでちょっとVtuberについて書いただけで、ブログ1年分の閲覧数を持っていかれました。何それ怖い。

 もう本当にどうかと思うんですけど、これを最後にするくらいの気持ちで、金魚坂めいろさんの騒動(に対する鳴神裁さんの対応)について、ちょっと書いておきます。

1.  はじめに

 先ほど、鳴神さんがyoutubeとnoteを更新されているのを見かけ、あまりにも基本がなっちゃいなかったので、筆を取った次第です。

 予め言い訳させていただくと、以下の記事(無料部分)と動画を前提としております。

note


YouTube


2.  結論

 ある意味社会人にとって当たり前の話が以下だらだら続くので、先に結論を書いておきますと、鳴神さんのまずかったポイントは、「運営が悪い」(要旨)という主張について、その理由に、余人には理解しがたい部分があり、多分ご自身もあんまり理解できていないんじゃないかなぁと思われる点です。どのような理由で運営が悪いと考えたのか、整理ができないまま適当に話を進めてしまったので、人に伝わらない主張になったのだと思います。

 そのこと自体が直ちに悪いわけではないんですが、主張の整理ができていないなら、証拠を不用意に出しちゃダメです。これは自戒を込めて、念押ししておきます。
 なお、「3. 鳴神裁さんの何がまずいのか」の「(3) 争点がはっきりしないまま証拠を出してしまったこと」が事実上のまとめになるので、面倒な方はそこまで読み飛ばしていただいて差し支えありません。

3.  鳴神裁さんの何がまずいのか

 正直に言って、私には彼の言い分がさっぱりわからないですし、noteの有料部分も読んでいないです。例えば有料部分に「うっそピョーン」と書かれていたら、もう恥しかないです。
 そのリスクを覚悟してでも、将来への自戒として、又は新たに社会人になる皆様へのよい反面教師になるのではないかと思い、以下ダラダラと記載します。恥ずかしいので、まともな社会人の方は見ないでください。

(1) 主張の骨子がよくわからない
 動画でもnoteでも運営が悪いといった論調で語られていますが、その主張の骨子がよくわかりません。
 私が理解したところによると、彼の主張は以下のとおりです。

画像1

 主張を整理してみると、彼の主張は、「夢月ロアの主張は不当である」ことを前提として、夢月ロアの主張に対する運営の対応を批判しているんじゃないかと考えられます。
 これらの適否は後ほど論じますが、夢月ロアの主張が不当であることが所与の前提とされすぎているあまり、主張のロジックが分かりにくいものとなっています。というか、そのような理解でいいんですかね?
 noteでは、「『夢月ロアがいじめた証拠まだ??』だの来るが、正直何を求めているのか分からない。」とありますが、まさに「夢月ロアの主張が不当である」部分の根拠が薄弱で、「夢月ロアがいじめた」ことを前提に、その証拠を握っていなければ鳴神さんの主張は成立しないというところまで分析した真摯な視聴者だと思うので、大切にしてあげてください。

(2) ビジネスモデルに対する無理解
 私も企業系Vtuberのビジネスモデルに詳しいわけではないので、半分妄想といえば妄想です。彼も知らないだろうし、私もよく知らないんですが、企業系Vtuberのビジネスモデルは多分こんな感じなんじゃないかと思います。

画像2

 クソ汚い図ですし、細かい用語等はどうでもいいんですが、ポイントは、(i)夢月ロアさんと金魚坂めいろさんの間には潜在的に利益相反が存在すること、(ii)どのようなライバーを採用し、どのような戦略を取るかは、運営次第であること、(iii)ライバーと運営とは本質的に異なる利害関係が存在することです。多分。

 (i)はシンプルな話で、ライバー同士、究極的にはライバルであるということです。厳格にどうであるかまではわからないですが、少なくともライバーの誰かに払われたスーパーチャットはみんなで平等に山分け、という制度にはなっていないだろうと思います。

 (ii)も難しい話ではなく、今回でいえば、運営は、金魚坂めいろさんについて、「夢月ロアとキャラの被るライバーを採用し、競争させる」か、「夢月ロアとはキャラが被らないよう住み分けさせる」か、自由であるということです。この帰結として、運営がいうところの「話し方を変えて欲しい」と、夢月ロアさんの言うところの「話し方を変えて欲しい」は全く意味が異なります。運営が言うところの「話し方を変えて欲しい」は、「運営の戦略として、キャラ被りは避けたいし、そもそも、採用時からキャラがあんまりブレるようだとコラボや企業案件をお願いしにくい(後述します)から考えて欲しい」という意味になりますが、夢月さんがいうところの「話し方を変えて欲しい」は、「パイの奪い合いは嫌だから出て行ってくれ」という意味になります。
 なお、鳴神さんは、動画にて「夢月ロアと運営の言い分も異なる」旨を動画で述べていますが、利害関係が異なるのだから、当然のことです。多分、この点が理解できていないから、夢月さんサイドに偏った対応をしていると判断したのだろうと推測できます。
 実際にキャラがかぶっているか否かを私は知りませんが、運営が一方の話し方について変更の余地ありと判断したということですし、金も出していない我々が、経営方針に関わることに口は出せません。仮にこの点に異議があるのであれば、鳴神さんはとりあえず26億円くらい出してからいうべきでしょう。
 私個人として、夢月さんは金魚坂さんに対してDMをすべきではなかったと思っていますが、その根拠もこの点になります。運営を通すのと通さないのでは、意味合いが全く異なるので、プロフェッショナルとして、筋を通して運営から説得させるべきでした。

 (iii)もいうまでもないかもしれませんが、運営が考えているキャラと異なる言動をされると、コラボや、特に企業案件に出しにくいということです。
 ちょっと極端ですが、タレントのベッキーさんが不倫をした時の例がわかりやすいのではないでしょうか。本来、プライベートで不倫をしていようがいまいが、所属事務所にとってどうでもよいことのはずです。しかし、当時ベッキーさんは複数のCMに出演していたため大問題になりました。というのも、広告を作るときは、往々にして、「出演者は商品のイメージを壊すようなことをしないこと」というのが契約内容として含まれています。不倫がこの「イメージを壊すようなこと」に該当したため、契約違反が生じ、所属事務所は巨額の損害賠償をしなければならなくなったわけです。
 一般に、事務所はこのような損害賠償なんかしたくないですから、ときに契約で、ときに指導を行うことで、所属タレントに「イメージを壊すようなこと」はしないよう注意します。このあたりは社会常識なので、知らなかった方は反省しましょう。
 Vtuberといえども、企業案件では、遂行すべき業務が広告の一種である以上、似たような契約になっていると思われます。したがって、例えば企業側から(特定の地域のPR等で)京都の方言の指定があった場合や、広域へのPRのため標準語が求められていた場合に、九州の方言が出てしまうと、契約違反で損害賠償の対象となってしまいます。そんな損害賠償金は払いたくないので、キャラにブレがある間は、運営として、金魚坂さんを出演させられないというのは、まあわかる話です。

(3) 争点がはっきりしないまま証拠を出してしまったこと
 正直この点に尽きると思うのですが、鳴神さんは、動画内において、いちからの声明の整理をすることなくいきなり認否を始めてしまったので、正直動画を視聴することが苦痛でした。再生回数を7回ほど増やしたと思うので感謝してください。

 冗談はともかく、鳴神さんと運営とで根本的に食い違っているのは、ざっくりいうと、「夢月ロアさんの主張の妥当性」と「運営の対応の妥当性」です。
 より具体化すると、①夢月さんが運営に対して金魚坂さんに話し方を変えるよう要望を出したこと、②夢月さんが金魚坂さんにDMで話し合いを求めたこと、③運営が金魚坂さんに対して「話し方を変えて欲しい」と述べたことの3点について、その内容及び言い方の適否が争点(=3点×2(内容or言い方)で6つの争点がある)となっています。鳴神さんはこれらの争点との関係で、事実関係をどのように位置付けられるか、整理する必要がありました。主張している事実関係が同じか否かは、それ単体では意味がなく、主張の食い違いにどのようにつながっているか(理由を含めて)説明することが重要です。動画を見ていて、何がどうつながっているのか、よくわからなかったので、上からgo throughしていくのは、やり方としてどうかと思いました。あまり詳しく存じ上げないのですが、彼は配信初心者なのでしょうか?

画像3

 まず、(1)と(2)からすると、上記の①と③について、少なくとも「内容」についてはあながちおかしなことではないといえそうです。もっとも、③について細かい説明の内容や、説明の仕方等についても検証の余地が無いわけではなく、(厳密な意味ではともかく)パワハラ類似の不法行為が成立する余地もあるのかもしれません。
 ③の「言い方」については、チャット中の「優しい口調でした」の部分をカットしたのは、悪質な捏造といわれても文句は言えないでしょう。③の言い方の分析の観点からここは非常に重要な部分です。これが例えば暴力を伴っていたり、そうでなくても執拗に強い口調であれば、金魚坂さんサイドの主張を裏付けるものとなっていましたが、そうでないことを知っていながら隠すのは、ちょっとなぁ、と思います。

 この点について、鳴神さんのnoteによれば「俺が全体チャットの画像を流用した意図は、最低限の信憑性の担保と『全体チャットで訴えかけて、それに沢山のライバーが反応し、その後運営に使い方を注意され以降マネージャーとの話し合いに至った。』と説明する為なので、当然必要な分しか載せてない」とのことですが、そこで主張が食い違ったわけでもないので、証拠を載せる必要ないです。「最低限の信憑性の担保」は、傷がないことの確信がないとやっちゃダメです。実際傷があったし、こういうことになるから、最後まで証拠は出しちゃダメなんです。

 その他、鳴神さんサイドから、①、③の内容について、ネガティブな評価をする理由や証拠についてはよくわかりませんでした。おそらく、鳴神さんも運営もほぼ同じ事実を見て、それに対する評価、言ってしまえば感想が異なることに端を発しているような気がしています。鳴神さんはこれを解釈違いと表現されているのだと思いますが、いちからなりVtuberなりのビジネスモデルを理解した上で述べているのか、よくわかりませんでした。多分わかっていないような気がするので、わかっていないような気がするという私の感想だけ記載しておきます。私もわからないので、お互い様です。

 そうなると、最後に問題になるのは②ですが、こちらについては何か色々とあるのだと思いますし、多分何かあってもそれを話すことはできないのだと思います。そうだとすれば争点として取り上げるべきではないです。見通しをたててから組み立てる必要があり、テクニカルで難しいところではありますが、もうちょっと小出しにするとか、工夫するといいと思います。週刊文春とか結構考えられていると思うので、真似するといいんじゃないでしょうか。

(4)  雑感
 今回の件は、鳴神さんが取り上げなけりゃ、そんな大ごとにはならなかったんじゃないかなぁ、と思います。動画において、鳴神さんは、運営が「夢月ロアを露骨に擁護」していると言いますが、出ていく人間を擁護して、身内を守らない運営に、人はついてきてくれません。この当たり前の組織論を超えて、「露骨に擁護」と言える根拠がよくわかりませんでした。夢月ロアの首を絞めに行ったのは鳴神さんではないでしょうか。
 声明文が長すぎるというのは同感ですが、それは鳴神さんがいうことなのかなぁと思います。正直鳴神さんの動画は、見てもなんもわからないので、わかりやすい動画作りを心がけていただけると、便乗して甘い汁が吸えるので、大変ありがたいです。

 教訓としては、①主張整理もせずに、争点も明確でないのに、事実が云々とかいっちゃダメ、②『夢月ロアがいじめた証拠まだ??』だの送ってくる真摯な視聴者を大切にしよう、です。知らんけど。


<ご指摘を受けて改稿+追記 (2020.10.26 22:53)>
 私の読解力が不足しており申し訳ないのですが、もしかして、鳴神さんは金魚坂さんと運営の契約解除そのものを問題としているのでしょうか?
 コメントのご指摘を受けて気づいたのですが、私も解除を所与の前提としておりました。人のこといえませんね。反省。
 また、ご指摘のとおり、運営は「契約の解除」の経緯を問題としている一方で、鳴神さんは「話し方に関するコミュニケーション」を問題としております。極論、情報漏洩があった時点で、何があっても金魚坂さんは契約解除を免れられませんから、契約解除の是非を論じるのであれば、話し方についての一連のやり取りは良し悪しを論ずるに必要がないのはそのとおりです。その観点からも、やはり鳴神さんの主張のゴール地点がよくわかりません。

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