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最後の旅人-The Last Adventure- 第3話【note創作大賞2024 漫画原作部門 応募作品】
■前回までのあらすじ
旅人として旅立った13歳の少年リトン・シティーバーは、職人が集う街「アポカロナ」に辿り着いた。
食事をするために飲食店に入ったが、この街の洗礼を受け、市場に向かった。そこで、リュウ・ビッグサマーという食材の目利きに優れた料理人と出会い、質の高い食材を選んでもらい飲食店に戻った。
リトンとリュウが美味しく料理を楽しんでいるところで、事件が起きたのであった。
飲食店からはお客が消え、残されたのはリトンとリュウ、店主と数名の従業員、市場で敵に回した魚屋、そして数十人の裏社会の用心棒たちだった。
「ハッ、お前、自分が置かれている状況がわかっているのか?」
用心棒のボスと思われる男が、リトンに顔を近づける。
「まあいい、とにかくそこをどけ、おれは隣にいるコックコートの男に用があるんだ」
「だからー、おれはご飯食べてんだよ!邪魔すんな!お前があっちいけ!」
リトンは口をもぐもぐさせながら男を睨みつける。
「おい、リトン、マジでやばいぞ!あいつはここら辺じゃ有名な裏社会で暗躍してるブレセドってやつだ!滅多に表に出てこないやつなんだぜ!」
リュウが小声でリトンに話しかける。
「おい、魚屋よ。依頼にはねぇが、こいつもやっちまっていいか?」
ブレセドは眉間にシワを寄せ、背中の大剣に手を握った。
「ふん、勝手にしろ」
魚屋の店主はタバコを吸いながら他人事のように眺めている。
「だとよ、まずはお前からだ!!」
ブレセドは大剣を大きく振りかざし、リトンに襲いかかった。
ズドーーーーーン!!!
土埃が店中に舞い、カウンターには男の大剣が食い込んでいる。
「感触がねぇな、うまくかわしたか、それともまぐれか?」
手応えのなさから、攻撃が避けられたことを察する。
「あっぶねー!せっかくのご飯が台無しじゃねぇかよ!」
リトンは、攻撃をうまくかわし、膝をつきながらもなんとか体勢を保っていた。片手には食べかけの皿を持っている。
「おれの攻撃をこの距離で避けるとは、お前、何か匂うな」
用心棒の男は、何か思い当たることがあるようにあごに手を当てる。
「リトン!大丈夫か!?」
心配そうにリュウが駆け寄る。
「ああ、どうってことねぇ。ちょっとこれ持っててくれ。こぼすなよ」
リュウに食べかけの皿を預け、膝の汚れをパンパンとはたき、立ち上げる。
「よし、お前は悪いやつだな。あと、魚屋のおっちゃんも悪いやつか。いやー、あんまり戦いたくないけど、おれの大切な人やモノが傷つけられるのは、それ以上に嫌だから仕方ないな」
リトンはストレッチをしながら呟いている。
「悪いやつだったらどうした、正義か悪かなんて、どの視点から見るかだけで、本質は意外と変わらないと思わないか?」
「うーん、よくわからないけど、おれが悪いやつだと思ったら、悪いやつだ。お前は悪いやつ、ここの店の人たちと、リュウは良いやつ!」
「うるせぇな、ごちゃごちゃ言ってねぇで、さっさとくたばりな!」
用心棒の男は再び襲いかかってきた。
「おせぇって」
リトンは一瞬で男の懐に入り込み、両手に炎を宿し、衝撃波を与えた。
「まじか、まだ、いたのか…」
ドガーーーーン!!!!
あまりの衝撃の強さに、店の壁が破壊され、用心棒の男は数メートル先まで吹っ飛んでいった。
「リトン、お前は一体…」
リュウが呆然と立ち尽くしている中、他の用心棒や魚屋の店主はリトンに釘付けだった。
「ベルが最後じゃなかったのか?」
「おれもそう聞いていた、どうなってるんだ?」
「これじゃ計画が振り出しだぜ」
用心棒たちがひそひそと怯えるように話している。
「な、なんだ、お前は、その力、旅人か!?」
魚屋の店主は尻もちをつき、驚きを隠せずにいる。
「だったらなんだ!おれは旅人のリトン・シティーバーってんだ!覚えとけよ!」
リトンは魚屋の店主を指差し、仁王立ちで立っている。
「バカやろう!さっさと逃げるぞ!」
リュウがリトンの腕を掴み、店から出ようとする。
「料理、美味しかった!レッドアグロの煮込み時間あと5秒増やしたほうがいいぜ!じゃあな!お金ここに置いておく!あ、二人分な!」
リュウはお金をカウンターの上に置き、リトンの荷物も持って逃げるように店を出た。
「彼らはなんだったんだ?」
お店のマスターはあっけらかんとしている。
アポカロナの人たちが一斉にリトンとリュウがいたお店の周りに集まってきた。
「これはまずいぞ、おい!そこのお前!すぐに本部に連絡しろ!あと、各方面にもこの事態を報告するんだ!緊急事態だ!」
魚屋の店主が冷や汗をかきながら用心棒たちに伝える。
「ガハハハ、こりゃまいったな、完全に油断しちまった。だが、顔覚えたぜ。声も聞こえた、リトン・シティーバー!ベルのばあさんから何かを聞いたみたいだな、面白くなってきたじゃないか」
壁にもたれかかっているブレセドが、不気味な笑みを浮かべている。
「はぁ、ここまでくれば大丈夫だろ」
リュウが額の汗をぬぐい、近くにあった大きな木に寄りかかる。
「あーあ、もっとあの店で食べたかったなー」
リトンは何事もなかったようにお腹を抑えている。
(おれは、ひょっとしたらすごいやつと出会ってしまったのかもしれないな)
リュウは心の中で喜びを抑えていた。
「リトン、これからどうするんだ?」
「そうだな、この街はもう出たほうが良さそうだから、とにかく北に向かう!」
リトンはもう前を向き、出発の支度をしている。
「そうか、奇遇だな、おれも北に用があるんだ。ベースイースト大陸のもっと先、ベースノース大陸にな」
リュウも支度を始める。
「おー!そうなのか!よっしゃ、そしたら一緒に行こうぜ!」
リトンは嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
「もちろん、そのつもりだ」
大きな荷物を背負った二人は、遠くまで広がる大地に向かって歩き出した。
そして、アポカロナでの一件は、瞬く間に世界中に広がった。
最後の旅人リトンは、そんなことは知らず、ベルから受け取った大きな使命を果たすために、旅を続けるのであった。
つづく。
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