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最後の旅人-The Last Adventure- 第2話【note創作大賞2024 漫画原作部門 応募作品】
■前回までのあらすじ
13歳になり、旅人としてベネトルドの街を後にしたリトン・シティーバー。今は亡き師匠ベルの赤いスカーフをまとい、大きな使命を背負い旅立った。
リトンはまず、育ての親であるカイムとの再会と、伝説の旅人メルシュの謎を明らかにするために、ベースイースト大陸北部に位置する「アポカロナ」という街を訪れた。
リトンが最初にたどり着いたのは、アポカロナという小さな街だった。ここは、様々な職人が集まる場所として有名な街で、いたるところに工房や小さな専門店が立ち並ぶ。
リトンはベネトルドの街から出たことがなかったので、初めて見た外の世界の景色に感動している。
「すげぇな、ベネトルドと少し似ている部分はあるけど、人も雰囲気も全然違うな〜!」
ぐぅ〜
「さすがに腹減ったな。道中では1日に1回しか飯食わなかったから、食いまくるぞー!」
リトンは最初に目に止まった、大きな魚の看板が立っているお店に入った。
「いらっしゃい!」
ドアを開けると店員の大きな声が店内に響き渡る。1人の女性店員がリトンに近づいてきた。
「いらっしゃいませ、食材をお預かりしますね」
「え?食材なんておれ持っていなけど」
「あら、きみ、この街に来たのは初めて?」
「まぁね、ベネトルドって街から来たんだ」
「そう、残念だけど、この街ではお客さんが食材を持参して、お店が料理を提供するという文化が根付いてるのよ、だから、料理を食べたければ食材を持ってきてね」
リトンは仕方なく魚屋さんを出た。
「食材って言ってもな、お金は一応たくさんもってきたけど、どこを探せばいいのやら。適当に散策も兼ねてちょっと歩いてみっか!」
それからリトンは市場を探しながらアポカロナを散策した。するとすぐに市場は見つかり、食材を探しに入って行った。
「すっげぇな!ベネトルドにも食材はたくさんあったけど、ここも負けてねぇや!」
アポカロナの市場は規模は小さいものの、並んでいる食材はどれも質が高く厳選されたものが並んでいる。
「あんちゃん!この街じゃ見ない顔だな!食材探してんだろ?うちの店見ていきな!」
市場を歩いていると、がっちりとした体つきの店主が話しかけてきた。
「おー!すげー!これ全部おっちゃんが獲ってきたのか?」
「いや、おれが獲ってきたわけじゃねぇんだ。漁師が獲ってきて、おれはそれを買い取って売ってるのさ。ただ、おれの目に狂いはねぇから、どれでも選んでくれ!」
店主の男は自信満々で伝える。
「いや、そんなの嘘だね。これとこれ、あとその奥の魚もだめだな。うーん、これはまだましかな」
突然リトンの隣に現れたのは、頭にはちまきを巻き、白いコックコートを着た背の高い男だった。荷物もたくさん背負っており、旅の途中のようだ。
「な、お前、なんなんだ!おれの目利きに狂いがあるとでも言いたいのか!?」
「ん?そう言ってるだろ?全部いいなんてインチキなことしてないで、ちゃんと価格見直しな。この品質でこの価格、こりゃ詐欺だぜ」
男は大きな荷物を地面に置いて、目を光らせて魚をじっくりと見つめている。
「おい、お前こそインチキ言ってんじゃねぇ、おれは何十年もこの店やってんだ。たかが坊主にそこまで言われちゃ、たまったもんじゃねぇな!」
店主が大声を発したことで、気づけば市場の人がこちらを見ている。
「はは、インチキなんかじゃないって。そうだな、たとえばこのレッドアグロを見ろよ。レッドアグロはトワイライトゾーンって呼ばれる深海の中では浅いところで獲れる魚だ。本当に新鮮なレッドアグロは、目が透き通っているのはもちろん、尾ひれが直角になってるんだぜ。ここにあるのは全部85°から80°くらいってところかな」
「そ、そんなレッドアグロの情報聞いたことないぞ!お前こそインチキなんじゃねぇのか!?」
「聞いたことないって当たり前だろ?だって、おれが何千匹を釣って、さばいて、食って得た実体験からくる知識だからな。そこら辺の真実かどうかわからない情報に踊らされてる奴らとは違う。嘘だと思うなら、漁に出て新鮮なレッドアグロを釣ってみな」
店主は言い返す言葉もなく、呆然としている。
「ってわけだ、この店はやめたほうがいいぜ。ざっと回ってきたけど、ましなのはあそこの店だな」
コックコートの男は、看板を指さしてリトンに案内し、大きな荷物を背負い店をあとにしようとしていたが、リトンが目を輝かせて彼を見つめている。
「な、なんだよ」
コックコートの男はリトンを見て引いている。
「お前すげぇな!誰も知らない魚の知識もってるんだな!だったらおれの食材も選んでくれよ!おれ目利きなんてできないし、あんたに任せたら間違いない気がする!」
「いいけど、そう簡単に人を信用しないほうがいいぜ」
「信じるかどうかは自分で決める!おれ、リトンだ!よろしくな!」
「リュウ、リュウ・ビッグサマーだ」
リトンとリュウは互いに手を取り合い握手を交わした。
2人は別の店で新鮮な魚を選び、リトンが最初に行った大きな魚の看板が立っている店に再び訪れたのだった。
食材を預け、リトンとリュウはカウンターに座り、料理を食べながらお互いのことについて話していた。
「ふーん、なるほどね、師匠の言葉を信じて旅立ち、今は北に向かってるのか。具体的な場所にあてはあるのか?」
リュウが料理を食べながら話す。
「うーん、わかんねぇ!」
リトンは少し考えたが、吹っ切れたように笑顔で答えた。
「はー!?ごほっ、ごほっ、決まってないって、お前、あてもなしに飛び出してきたっていうのか?」
リュウは料理を喉につまらせて咳き込んでいる。
「まあ、そんなところだ!だって、街でじっとしてても何も始まらないだろ。それに、元々旅人として外の世界を冒険してみたかったんだ」
「お前すごいな、この先大丈夫なのか?」
「なんとかなるだろ!そういや、リュウはどうしてこの街に来たんだ?荷物もたくさんあるし、この街の人じゃないだろ?」
リトンは口に料理を頬張りながら喋っている。
「ああ、おれは、自分のお店を開くために各地を回っている。世界にはおれの知らない食材や食文化がたくさんあるんだ。それを全部体験して、うまい料理をたくさんの人に食べてほしい。それがおれの夢だ」
リュウは少し照れくさそうに話した。
「へへへ!いいな!それいいな!」
リトンは満面の笑みを浮かべている。
「こうして自分の夢を話すのは久しぶりだ。リトン、お前は不思議なやつだな」
リュウはどこか寂しそうに、顔をあげて遠くを見るように言った。リトンは黙って聞いている。
「これまで出会ってきた人たちには、散々馬鹿にされたてきた。そんなのできっこないってな。でも、諦めきれなかった。その想いがこうして故郷から遠く離れた場所まで連れてきてくれた」
「へへへ!やっぱりリュウはおれと同じ匂いがするな!」
「はは、同じ匂いってなんだよ」
リュウは照れくさそうにつっこんだ。
「そうだ、リュウがお店を開いたら、おれが最初のお客さんだからな!もう予約したからな!へへへ!」
「予約って…。ははは、わかったよ。おし、お客第一号はリトン、お前で決まりだ!」
バタン!!!
突然大きな音を立ててお店のドアが開いた。
「い、いらっしゃいませ、しょ、食材は…」
お店の店員が怯えながら対応する。
「うるせぇ!」
「きゃっ!」
入ってきた男は、耳を貸さずに店員をはたき、突き飛ばした。
男は筋肉質で、体にいくつも傷や入れ墨が入っており、背中には大きな刀のような武器も確認できる。
「ここに白いコックコートを着た男がいるな。うん?おい、魚屋の店主よ、そこのカウンターに座ってるやつであってるか?」
男は後ろにいる何者かに話しかけた。
「ああ、あいつだ、おれのことを侮辱した生意気なガキだ!痛い目に遭わせせてやるぜ!」
そこに現れたのは、リュウとリトンが出会った魚屋の店主だった。
「なんだ、あの野郎、裏社会と繋がりがあったのか。こりゃちょっと面倒くさいな…」
リュウはまずいことをしたと後悔しつつ、その場から逃げようとする。
「おい、リトン、ちょっとまずい状況だ。このままだと店の被害は計り知れない…。早く店を出よう」
「ん?まだ食ってるだろ。せっかくお店の人が作ってくれたんだ、ちゃんと残さず食べろよ」
リトンはあっけらかんとしている。そこに男が近づいてきた。
「おい、そこの飯食ってるガキ。そこをどけ。怪我するぜ」
「ん?怪我するのはお前だろ?」
第3話に続く。
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