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「こんなこと、誰もしてくれない」 ショートステイでのひととき

私が通う施設では数日間だけ入居する「ショートステイ」の受け入れをしていました。
この日は、そのショートステイ利用のお客さまを訪ねます。

慣れない場所、周りは見知らぬ人ばかり、食事や入浴以外はひとり個室で時間を持て余す…
この施設のショートステイのお客さまは、そんな環境で緊張や不安な気持ちを抱えていることが多いです。

施設スタッフさんと一緒にお部屋を訪問すると、女性がベッドで横になっていました。
「今日はアロマの日なんですよ。いい匂いでマッサージしてもらいましょうね。」
スタッフさんはそう話して、部屋を出ていきました。

ここからはお客さまと私、二人だけの時間です。
あいさつから世間話を経て、今の気持ちや体調を聞き出します。
どうやら、とても不安な気持ちになっているよう。
身体は脚の調子があまり良くないとのことで、フットトリートメントをすることにしました。

お客さまはベッドに横になったままの体勢でひざ下にオイルを塗り、ゆっくり丁寧に繰り返しなでさすります。

「はぁ~。気持ちいい。」
ため息と一緒に出た言葉とともに、身体の緊張が解けていきました。
そして、うとうと夢の中へ…

おわりのご挨拶の時のひとこと。
「こんなこと、誰もしてくれない。」
普段から寂しさを抱えていらっしゃるようにも思え、なんとも切ない気持ちになりました。

「ありがとう、ありがとう。」
部屋を出る時、何度もそう言って送ってくれました。

せめて今日1日だけでも、不安が消えて満たされた気持ちになっていればいいなと願い、次の部屋へと向かいました。

まだまだマイナーな職業です。ご支援いただけましたら嬉しく思います。なお、いただきました御厚意は今後の活動資金に充てさせていただきます。