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育休復記その2~業務はコンパクト化して引き渡す~

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※この記事は投げ銭制です。

こんにちは、ゆきち先生です。
もう正産期です。

育休復帰からの約1年の記録、前回・苦悩編からの続きです。

前回までのあらすじ

職場復帰から半年、ほとんど社内転職かという感覚に陥った複数要因のストレスからようやくフリーになれたかなという矢先、第二子妊娠が判明。出産予定日から逆算すると、新年度明けて1~2ヶ月後には、2度めの産休に入る必要がある。

さすがに2度めなのでスムーズだった報告

迷わず第一子でお世話になった産婦人科にかかって、心拍確認が取れ妊娠3ヶ月になった11月下旬頃に、取り急ぎリーダーと上司へ報告した。あ、当時のリーダー、上司はいずれも男性でした。

ちなみに私のかかりつけ婦人科は心斎橋にある小さな個人クリニックで、予約すれば待ち時間が10分もなく、診察も特に問題なければ10分ぐらいで完了する。勤め人、さらには時短勤務で働くオカンにとって、所要時間が読みやすい病院というのは本当に助かる。ただし先生は人気の女医ではなくおっさんです。
定期妊婦健診は妊娠30週過ぎた頃に分娩できる(産科のある)総合病院に移るのだが、総合病院の時間の読めなさにはほんと毎回辟易する。
また、後に担当医がたまたま同郷であることがわかって、里帰り出産の話も早かった。巡り合わせに感謝しかない。

で、相談の結果、年明け2月からは具体的に後任を決めて引き継ぎを始める、年内は体調を見ながらそれに向けての業務整理などの準備を進める、という段取りを確認した。

プロジェクト景況は刻一刻と変化する

前回触れたとおり、提供しているサービスにはおおよその寿命があり、これまでの担当業務では2~3年というのが平均的だった。復帰後に私がぶっ込まれたプロジェクトもサービスインから3年目を迎えるもので、いわゆる成熟期に入っていた。収益は月により波がありつつも均して見れば漸減、というターム。スタートアップなどの一部業種を除いてどこの職場にも共通することと思うが、そういう段階ではプロジェクト人員もどんどん減らされていく。
新プロジェクトも発足するなかでメンバー離脱や入れ替わりがあり、結果的に私自身が抱えていた特定の人間関係に由来するストレスはだいぶ緩和されたものの、チーム単位では一部メンバーへの負荷増大、若手新メンバーがなかなか定着しない問題(前回記事)等もあって、猶予はありつつもチーム離脱する身として、どう業務を見直していくかは、チャレンジングな課題でもあった。
また、悩んだ時期と年末進行を脱してタスク管理に少しの余裕を持てるようになり始めたあたりから逆に調子づいて(社畜時代に培った悪い癖)、担当業務の成果物に「私ってこんなこともできますよ!」的な心理が働くようで、誰に頼まれるわけでもなく、内容を少し盛るようになっていた。真面目な日本人とは恐ろしい。
まさに、パーキンソンの第1法則だなと思う。

パーキンソンの第1法則
仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する

時短勤務で業務遂行するためにやってたこと

育児系のビジネス記事やブログでよく言及されることだが、私も例外でなく、限りある時間で業務を遂行するために、タスク管理に対する意識が激変した。
IT系業種だと当たり前のことかも知れないが、とにかく自身の稼働・負荷状況、調整できる時間の情報を、関連メンバーに対してアクセス可能にしておくことが重要だと日々感じていた。
以下はその具体例。

1。タスクのスケジュール化と公開
OutlookなりGoogleカレンダーなりの管理ツールで関連メンバーにスケジュール共有するのはチームでもルール化されていたのだが、その情報の精度・濃度は個人によって異なっていた。私の場合、前職場があまりにもアナログで自分も他人も使途不明時間の宝庫だったので、自身のタスク管理のためにも徹底して見える化した。
以前はチェックボックス式のタスクリストをオンラインで別途作って処理してたこともあるんだけど、全部期限切ってスケジュールに落とし込むことにして、折に触れ眺めるのが重要。
設定した時間内にこなせなかったタスクは「こなせない」ことを、理由を再点検ポイント(後回しにしがちなタスクは、結局優先度が高くなくて省略可能だったりする)

2。関連メンバーの行動把握
これは1。の逆パターン。ツール上の公開スケジュールや過去のメールログ、チャットで確認できる離着席状況から、相手を捕まえやすい時間や場所や方法を研究して、コミュニケーションの精度を上げる。
例えば、「(紙なんてほとんど使わない文化だけど)この件は出力して担当者に口頭取材のうえ朱入れしたのをタタキにして資料化」とか「このミーティングはキーマンが集まるから直後に同じ部屋/メンバーで別ミーティング設けて、定型アジェンダのついでにリマインドしておき、週内にメールで刈り取りするが、メンバーのレスが悪ければ最終は責任者にだけにチャットで言質取る」とか。
関連メンバーにヒアリングしたり内容確認を依頼するタスクが7割くらいなので、相手の傾向を見極めるスキルが日に日に重要化していった。
特に人員削減の波に突入すると、特定のメンバーに判断や確認の権限が集中してボトルネックになりがちなので、前職を含めてこのへんの崖っぷち経験値が多少あったのは助かった。(ちなみにこの立場でやる気がないと、自分の仕事進まないのを他人のせいにできる妖怪社員になれるぞ!)
あと、これによって「できる人ほどレスが明確かつ速い」健全な組織だと肌で理解できたのは本当に良かったと思う。

3。とにかく居残りしすぎない
預け先の保育園は最大19:30まで預かってくれるところだったが、実績として繁忙期でも最大で1時間半、平均30~45分を死守。
周囲から「あれ、フルタイムでも行けるんじゃん?」と思われるのがいちばん回避すべき事態で、「フルタイム定時よりも早く上がる人」だという印象付けが大事。

4。ちょっとした息抜き時間の削減
結局タスクがかさむと、昼休みを削ったり、コーヒーを飲むとかデスクに突っ伏して眼を休ませるとか雑談とかの10分ぐらいの時間を省いてしまっていたのだが、これは気分が鬱々してきていろんな能力が鈍るので、まったくオススメしません。
最低限、フルタイムなら午前と午後で15分ずつ、時短なら10分ずつぐらいのインターバル、脳の休息は必要かなと感じている。

悪阻の時期

12月に入った頃は悪阻が始まって(もしくは自覚出来るレベルにまで悪化して)しまい、それまでの業務クオリティを担保するのが困難になってきた。第一子のときは悪阻がほとんどなかったので、ちょっと想定不足。
症状は「24時間、船酔いのような気分。吐き気にまでは至らないが、うっすらと継続的な不快感」。で、私の場合特に厳しかったのが、「作ってるのがモバイルサービスなのに、スマホ画面で細かな部分を見続けることがかなりの苦痛」という点で、わりとこれは業務上致命的だった(リーダーに相談して検証作業からは外してしてもらった)。
調子こいて業務を盛っていたことで自身の首を絞めることになった結果、「納品する成果物の水準を“体調の良いときのリソースで完成できるレベル”に設定していると、そうでないときにとても苦労する」という当たり前のことを実感。
タスク管理において大切なことなので、段落を変えて、もう一度言う。
「納品する成果物の水準を“体調の良いときのリソースで完成できるレベル”に設定していると、そうでないときにとても苦労する」

あと余談だが、このときの悪阻ではやたら濃い味のものが食べたくなって、家ではさっぱり鍋とかでなく、ル・クルーゼで洋風煮込み料理ばかり作って食べていた。健康的なものを美味しく感じた第一子のときと対照的だった。牛肉と野菜とを赤ワインでマリネして煮込むの、超絶面倒だったけど美味かったな。

悪阻は幸いにも年末には収まって、年明けからは引き継ぎモードに移っていった。

工数管理を自分でやる

あとこの時期、チームメンバーの個別の負荷を洗い出すために、リーダー指示で「自身で抱えてるタスク工数をリスト化し、チームで共有して重複や無駄をチェックの上、削減可能な項目を検討する」というのをやっていて、いろいろ目ウロコだった。
成果の一つは、私の担当業務Aはわりと川下に近いところで情報をとりまとめる系の分野だったので、川上でうまいこと情報分岐すれば専任担当者を置かずとも回るのでは、とか、担当業務Bは別の業務Cと目的が実は一緒だからCのフローに寄せようとか、そういう仮説が立てられて引き継ぎに生かせること。
もう一つの成果は、現場担当者が形式的なルーティン業務に振り回されがちなのか、クリエイティブ業務に苦悩してるのか等の状況が見えたこと。特に若手にはなかなか他のメンバーのタスクにまで興味が向かないかもしれないが、他者と比較することで見える事実は思いの外多いので、応用可能な組織ならこの方法をオススメしたい。

引き継ぎの難しさ、後継者問題

産休2ヶ月前には後任が決まって引き継ぎを始めたが、引き継ぎの難しさは、後任のスキルやパーソナリティーに極力左右されない「再現性」をどう担保するか、にある。具体的には①業務そのものから自身の手癖を極力差し引いて渡すこと、②適切なマニュアル資料化だ。
このあたり、料理のレシピに考え方が似ているかも知れない。誰にも作れない美味いものを作れるシェフよりも、誰が後継者であっても味がぶれない再現性の高いレシピを残せるシェフのほうが職業人として優秀で価値が高いと常々思っている(前者は職業人というより芸術家だな)。

リーダーの後任チョイスは信頼しているし、後任担当は実際に経験も多くある人だったのだけど、一度こんな思考実験をしてみたことがある。

もし、いまの業務の引き継ぎ先が
・新卒ぺーぺー社員だったら?
・再雇用の高齢社員だったら?
・人間でなくAIだったら?
レシピのように「再現性」は担保できるか?

そこまで考えてみたら、かなり業務の削ぎ落とし案ができた。工数で換算して半減ぐらいかもしれない。

で、実は1ヶ月前に諸事情で業務Bの後任が急遽変更になって、急ぎで別の人に引き継ぎ直す必要が生じたのだが、職業人としては初代後任候補ともまた全然違うタイプで、この思考実験が結果的に役立ったなと思っている。

あと、そうは言っても完璧な引き継ぎは存在しないので、レシピのアレンジは好きにやってくれ 、そもそもプロジェクトにとっての当該業務の必要性もどんどん変化していくから「あとはよしなに」という覚悟は必要だ。

医師から「安静に」と言われた3週間

3月に安定期に入って、たまたま院ゼミの懇親会、学部ゼミ生の結婚式、家族旅行など、お腹いっぱい美味い系イベントを詰め込んでいたら、定期妊婦健診で「尿蛋白」「体重増加」で引っ掛かってしまう。妊娠高血圧症にならないよう、母子手帳に、「安静に」と書かれてしまった。

安静に?
安静ってwhat?

ただ、「絶対安静」となって、ある日いきなり出勤停止のドボンは私もチームも避けたい。
翌日、ノートPCで在宅対応などの提案を含めて上司・リーダー相談したら、結果的には上司から「稼働を半分にして」という明確な指示があり、有休や午後出勤、早退を組み合わせて、実質稼働を週5日から2.5日にした。結果、3週ほどで幸い安静指示は解けた。
明らかな体調不良ではないのに早退するのは少し気が引けるときもあったが、代わりがいないのは間違いなく職場より腹の中の人なので、時間差出勤も早退ももう全部共有スケジュールに落とし込んで、堂々と体調管理を徹底。
その頃にはおおむね業務整理を完了していたので、関連メンバーにも助けられて、何とか業務は回った。

まとめ

そんなこんなでなんとかかんとか復帰からの1年ほどで、組織内での働きかた、業務の在りかた・進めかたについて、自身のOSがまるまる入れ替わったような変化を感じている。転職もせずに40歳でそれを体験できたのは大変有難い、本当に濃密な1年だった。
私の場合、確かに所属先の制度が充実しなおかつ風土が合っている、娘が比較的身体が丈夫、夫も協力的で手が掛からない(←これすごく重要!)など、環境的にも恵まれている。とはいえ、家庭の有無や事情如何にかかわらず、労働人口が減少しつつある各業界に、共通して応用できる部分があるかもしれないなと思う。

この1年で得た教訓をごく粗くまとめます。

一、ときに残酷かもしれないが「変化があること」は基本的には「自分の味方」
一、【自分のために】担当業務の水準を、健康&フルコミットで完成できるレベルに設定しない
一、【後世のために】すべての業務は基本減らせるものと常に考える。無批判に前の世代や前任のやりかたを(特に気力で)受け入れる前列を作ってはいけない
一、【家族のために】集中して働き、さっさと帰る。オフ時間は仕事のこと考えない。

今回は以上です。おしまい。


カバー画像ロケ地/最寄りの公園


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