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大型商談を成約に導く「SPIN」営業術ーニール・ラッカム

著者であるニール・ラッカム氏は行動心理学の研究者を経て起業。35000を超える商談を分析していく中で、独自のセールスプログラムの構築を行い、それは世界23か国、マイクロソフト・IBM・GEを始め様々な企業で取り入れられています。
改めてですが、行動心理学を学んだ方のマーケティング・セールスのノウハウ・ナレッジには凄みを感じます、改めて。

よく営業のセオリーでは、価格は言ってはいけない(聞かれるまで待つ)、顧客のニーズに対して提案をしろというものの、その本質を定義する考え方はなく、周知の事実として伝承されてきたのが実態です。そして、現場で経験を積んでいく中で、諸先輩方の助言が正しかったと気付くケースが多いというのが実態かと思います。

大型商談という”モノ”の考え方

まず大前提として、大型商談と小型商談では戦っているフィールドが異なるという事を理解する必要があります。

小型商談とは異なる

短期決定型のBtoCに多い小型商談。一方で大型商談とはBtoBの商談に多く、金額が多額でありという幾つかの特徴を持つ商談です。営業という流れにおいては本質は変わりなのですが、フィールドが異なるがゆえに、戦い方は大きく変わります。

「受注可否の判断は売り手のいない場で行われる」
相対する人の目の前で決断を促す、これが古典的な営業の進め方です。しかし、大型商談の場合、複数人が絡むからこそ、別の場で決断がなされます。

「感情営業は時に失敗に」
決断を促すうえで感情は非常に有効な施策です。しかし、大型商談は別の決定の場があることを忘れてはなりません。感情でしか納得をさせられていない人は、更に他人を納得させることはできません。

「相手の記憶に頼る」
結局のところ、継続的な商談は実現しないのです。相手の記憶の中でしかないわけですので、1週間時間が空けば大半のことは忘却の彼方へ。古典的なクロージングも意味がなくなります。

大型商談における成功と失敗の定義

商談に成功と失敗の定義づけを、改めてつけてみましょう。この成功と失敗の定義づけをすることが営業品質を見ていく上で重要となります。
具体的に大型商談において成功とは「受注」「進展」であり、失敗は「継続」「失注」であると言えます。
「お客様との関係性構築ができたので良かった」という営業マンがいますが、これは具体的な進展を得ていないという点において、商談としては失敗という判断になります。

質問が全てを決める

商談にはステップがあります。アイスブレイク⇒調査⇒解決⇒次アポイントという流れが一般になるかと思います。この時に、最も重要なフェーズは解決ではなく「調査」の段階であると言えます。

質問をする目的は解決課題の明確化

質問をするというのはお客様の課題を明確にすることの手法です。この課題を明確にするという事が非常に重要になっていきます。
課題というのは、こちらが認知をしていても意味がなく、お客様が認知をして行動を起こす欲求へ繋げなければ意味がありません。その点で言うと、大型商談の成功は「進展」であり、「進展」させるには行動を起こす為の欲求を高めなければなりません。そして、その欲求を高める為には、課題を認知させ、それを大きく受け取ってもらう。そして、自身が行動することが、得られるメリットと比較して小さいコストであると認識させるという事が必要になります。
潜在的なニーズが見つかった場合、新人営業マンほど「この課題を解決すれば上手く行きます」と提案し、ベテラン程「この課題をどう育てるか考えなければ」と思考するものです。

状況・問題質問から示唆・解決質問へ

その具体的な質問の仕方というのが、このSPINに定義される質問手法です。状況を聞いていく中で、課題と思う事項について問題として認識をしているかの質問を行う。
そこから、その問題がどれほど重要で解決すべき課題であるかの質問を繰り返していく、これが示唆質問・解決質問の領域へと入っていきます。
示唆質問は問題点の認知にをさせる為のネガティブなイメージが強く、解決質問は解決策を一緒に考えるポジティブなイメージが強いものと考えれば大枠合っているでしょう。

特徴・利点・利益の3つの向き合い方

お客様の課題が明確になったうえで、特徴・利点・利益の3つを伝えていきます。特徴は定量的な評価、利点は顕在的なニーズに対するメリット、そして、利益は潜在的なニーズに対するメリットと考えれば良いでしょう。

買い手の受け取り方

まず大前提として、特徴は顧客に提示を指定も良いことはないという事を知っておく必要があります。プラマイゼロ、或いは、マイナスにしかうけとれないでしょう。
小型商談の場合、利点を伝えることが成約には影響していきますが、大型商談の場合は逆に反論を生む可能性が高い物となります。大型商談ほど、潜在ニーズにアプローチをする利益の伝え方が成約に大きく影響していきます。

応酬話法ではなく反論予防話法

大型商談で利点が反論を生む理由となるのは、特徴で価格に対する懸念を持ち、利点で反論をするという買い手側の「失敗したくない意識」が生まれる為です。(高そうだな~これはうちとはフィットしないな、断ろう的な。)
したがって、その反論に対して対症療法的なやり方では意味がなく、原因から対策する必要があります。
それは、お客様に対して価値を高める提案をして、それでもやるべきだというスイッチングコストを超える状況にするという方法を取ります。具体的には、上記の質問でニーズを育て上げるという方法ですね。

クロージングという魔法と現実

多くのビジネスマンの関心事はクロージングと言われています。理由とすると、クロージングを勉強することが成果に直結するからです。しかし、忘れてはならないことは、それは数あるテクニックの一つであり、本質は別にあるという事です。

小型商談のクロージングと大型商談では異なる

大前提として、小型商談のクロージングは決断を促す工程です。決断を促すことにより、契約してみようという顧客心理を作り上げます。
一方、大型商談の場合は冒頭お伝えした通り、目の前の人が決裁者ではないことが多いですし、組織故、経済合理性などが評価の工程に入ります。したがって、クロージングというものに対する見方から変える必要があります。

大型商談におけるクロージング

実際に大型商談において、クロー人をすればするほど「商談は短くなる」「売れにくくなる」「売った後の満足度も低くなる」という統計データがでているとのこと。改めてですが、大型商談では、クロージングの様に一方的な後押しは意味がないという事ですね。
改めてですが、大型商談の場合はクロージングとは、冒頭で伝えた成功商談のことであり、次アポを取るという事に他なりません。

余談:適切なアイスブレイク

大きくお話を進めてきましたが、最後にアイスブレイクの話を。営業においては、提案の前に信頼関係を構築すべきだという話があります。それ故に、信頼が先か、仕事が先か議論は往々にして起きる訳です。
本書では、アイスブレイクに関する記載は少ししかなく、端的に、「何者か」「目的(売りに来たではなく)」「質問をして良いかの確認」この3つをすれば十分であると伝えています。
また、一人に対して商談を繰り返すからこそ飽きさせないためのレパートリーも持っておきましょうとのこと。

最後に

営業を科学するということは全営業マンの課題事項であると言えます。過去は気合い・勢いで営業ができましたが、今はそのような世の中ではない。本質が何かを見定める力が改めて重要だと感じます。
それにしても行動心理学は本当に強い。

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