骨盤の評価
骨盤、寛骨
「骨盤の歪み」が身体の不調の原因になるということは多くの方がご存知かと思います。
整体などでは「骨盤矯正」と謳っていたり、メディアでも取り上げられたりしていますからね。
実際、私自身も骨盤の状態はチェックしますし、骨盤が整うことで腰痛や膝の痛みなど、さまざまな症状が改善するのを経験しています。
そこで今回は骨盤をどのように評価するかポイントをまとめてみました。
どのように評価し、治療に結びつけていくか知りたい方はご参考にしていただけたら嬉しいです。
まずは解剖学です。
骨盤とは別で「寛骨」という言葉もありますがこの違いについて。
「骨盤」は寛骨+仙骨と尾骨を指します。
「寛骨」は腸骨+坐骨+恥骨を指します。
仙骨と尾骨は脊椎なので1つですが、寛骨は左右に1対ずつあります。
骨盤の後傾や前傾と表現されますが、細かく言うと寛骨と仙骨で微妙に違った動きをします。
これが「仙腸関節」と言われる関節の動きになります。
また、仙腸関節は骨盤の後面での話で、前面には左右の「恥骨」が恥骨結合を介して連結しています。
超超基本的な話ですが、この後の話がわかりやすいように整理しておきましょう。
評価
では、骨盤はどう評価していくのでしょうか。
ざっくりポイントをあげると、
①上前腸骨棘(ASIS)の左右差
②上後腸骨棘(PSIS)の左右差
③仙骨の傾き
④恥骨の左右差
⑤腸骨稜と大転子の距離の左右差
このあたりを臥位、立位、片脚立位などでチェックします。
荷重時と非荷重時をチェックすることでより詳細な情報が得られますので丁寧に評価していきましょう。
①上前腸骨棘(ASIS)の左右差
前方から両側のASISを触診します。
この時に下側に下がっている方の寛骨が前傾、上側に上がっている方が後傾していると推測します。ただ、これだけで判断するのは安易すぎるます。
あまりパターンとしてはみたことありませんが左右の寛骨が挙上、下制しているなどの可能性もあります。
②④の評価と合わせて判断しましょう。
②上後腸骨棘(PSIS)の左右差
後方から両側のPSISを触診します。
PSISは腸骨稜からたどるように触っていくと比較的わかりやすいかと思います。慣れていないと触診しづらい人もいるので、、、
左右で比較して上側に上がっている方が前傾、下側に下がっている方が後傾と推測できます。
慣れてきたら、①と②の評価を同時に行うこともできますのでいろいろと試してみてください。
①②の状態から前傾、後傾がなぜ起こっているかを推察します。
例えば、腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)や大腿直筋が短縮していれば前傾したり、広背筋や大殿筋が短縮していれば後傾などが考えられますね。
短縮だけでなく筋力低下、機能不全によっても前傾、後傾はおこります。この辺りが臥位と立位での差になるのでしっかりと評価しましょう。
そして、①②の評価だけではまだまだ予測できる要因が多くて絞り込めないと思ったのではないでしょうか?
そのためにも、③④⑤の評価も大切になってきますので安易に前傾、後傾の原因を判断しないようにしましょう。
③仙骨の傾き
左右のPSISを結んだ線と仙骨が交わる角度をチェックしましょう。
正常であればPSISを結んだ垂直二等分線に対して仙骨が正中に位置します。
仮に仙骨が背面から見て右則に傾いていたら、右側の大殿筋や梨状筋などの短縮や左側の大殿筋や梨状筋の機能不全などが予測できます。
④恥骨の左右差
腹部から手掌を下ろしていくと恥骨にぶつかります。
恥骨の左右の高さをチェックしましょう。上側に上がっていると寛骨の後傾、下側に下がっていると前傾と推察できます。
恥骨の上方には腹直筋、下側には内転筋が付着していますので、どう影響しているかを推察していきます。
⑤腸骨稜と大転子の距離の左右差
大転子が腸骨稜に近い方が中殿筋が短縮しているのではないかと推察できます。もしくは遠い方が機能不全を起こしているかもしれません。
統合する
①〜⑤までチェックすることで骨盤がどのように歪んでいるか整理できると思います。しかし、上記評価はあくまで簡易的な評価です。
今回はほとんど触れていませんが、片脚立位での評価などまた機会があれば更新したいと思います。
また、上記の評価から得られた情報でも、そこからさらに細かくチェックすることでより詳細に把握することができます。
例えば、機能不全を起こしているであろう筋に対して徒手筋力検査(MMT)をおこなったり、トーマステストやオーバーテスト、エリーテストなど整形外科テストをおこなっていくことで、精度がより高まります。
また、寛骨のアライメントを徒手的に修正した状態で動かしてもらうことで、症状が改善したら、その方向に整えていくことで改善が期待できます。
これらの情報を統合化して、骨盤の歪みの原因をつきとめ、解決していきましょう!!
なぜ歪んだのか?
最後に重要なことを1つ。
上記内容だけでは、なぜ骨盤が歪んでしまったのかという根本原因にはなりません。
例えば上記の評価で、歪んでいる原因は大殿筋が短縮していたからだったとします。
大殿筋に対してアプローチすることで一時的に骨盤は整い、症状が改善します。
ですが、なぜ大殿筋が短縮してしまったのかがわからなければまた同じように歪みんでしまいます。
その原因はその方の生活習慣や動きのクセなど、さらに深く診てく必要があります。
ほんの一例として、
・デスクワークで片側に荷重が偏って座るクセがある
・ガニ股で歩くクセがある
・股関節の適合性が悪く筋性支持に依存している
・捻挫の既往があり、距骨の取り込みが悪い
など
その原因は人によって様々です。
もし、生活習慣に問題があったり、足関節に問題があるなら、その問題を解決しないといけません。
これが大殿筋だけでなく、中殿筋や腸腰筋、腹直筋や内転筋などの問題でも同じように「なぜそうなったのか?」を推察します。
一時的に良くすることは難しくありませんが、長期的によくするためにここまで探求していけるようになりましょう。
この根本の原因を探っていく作業は、クライアント自身と一緒におこなっていくことが有効です。
そうすることによって、自分自身で再発しないように心掛けるようになります。
ゴッドハンドのように治すことより、クライアントの行動変容に繋がるような関わり方ができるセラピストの方がカッコいいと僕は思ってます。
そのようなセラピストがたくさん増えてくれることを願ってます。
お読みただきありがとうございました。
謙虚・感謝・敬意
知行合一・凡事徹底
岩瀬 勝覚
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