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【読書感想】池井戸潤『アルルカンと道化師』半沢直樹が探偵となり右往左往の大捜索

ドラマも大人気の半沢直樹シリーズの6年ぶりの最新作!
帯の通り、半沢直樹がとある絵画に隠された秘密を探る為に、探偵の如く捜査を進める物語です!

ラストの逆転劇は圧巻です!2020年で最もドキドキした約30ページでした!

■あらすじ

物語の舞台は大坂にある東京中央銀行の支店。

そこで融資課長として働く半沢直樹の元に本社から、会社の利益の為に顧客に対してM&A(企業の合併)を勧めるように通達が来ます。

ノルマや評価の為に強引に顧客にM&Aを促す本社や支社長に対し、顧客の事を考えて無理なM&Aを止めようとする半沢直樹の戦いが始まります。

明確にパート分けがされている訳では無いのですが、銀行員として上司や本社と戦う銀行パートと、顧客の出版社と一緒に絵画の秘密を追う探偵パートに分けると説明がしやすいので分けて説明します!

■<銀行パート>利益の為に強引にM&Aを推し進める銀行と半沢直樹の対決

本作は半沢直樹の物語としては最も古い時代の話となりますが、既に半沢直樹は色々と本社で暴れていて目の仇にされている状態でスタートしています。

事業統括部の<宝田>を中心に、半沢直樹に恨みを持つ面々が次々と半沢直樹に圧力を掛けてきます。

<宝田>は自分の顧客である大手ITベンチャー企業と、半沢直樹が受け持つ中小出版社のM&Aを強引に推し進めようとし、不当なM&Aを避ける為に半沢直樹は仲間と共に奔走します。

何故、大手ITベンチャー企業が中小出版社をわざわざ買収しようとするのか。<宝田>の思惑と半沢直樹の対決の構図が描かれます。

■<探偵パート>M&Aを防ぐ為にアルルカンの絵画に隠されたナゾを探る

トラブルが発生した為、銀行から融資を受けないと経営が成り立たない状況になってしまった中小出版社がメインのパートです。

銀行の融資さえすれば経営は立ち行くと判断した融資課長である半沢直樹は、融資をするように動きます。

しかし、上記の<宝田>の息が掛かった上司や本社の方のせいで、担保が無ければ融資は受け付けないとの決定を下されてしまいます。

担保など用意が出来ない中小出版社の為に、本社が納得する為の担保を探し、半沢直樹は出版社に隠された<アルルカンの絵画>に纏わるナゾを追う事になっていきます。

■最後のページまで見逃せない逆転劇

半沢直樹を陥れようとする<宝田>達との息も付かせぬ攻防を描く銀行パートと、絵画の秘密を探る為に休日返上で各所に赴く探偵パートを繰り返し、物語は終着点に向かいます。

絵画のナゾは、美術ミステリーとして非常に洗練されたもので、芸術家の悲哀や隠された人間関係など、儚くも美しい物語を描いています。

そして、最後に待ち受ける<宝田>との最終決戦!
頭取含め、銀行の役員面々が参加する報告会にて、半沢直樹は自身の進退を掛けての大勝負に出ます。

ここが非常に素晴らしく、明らかに半沢直樹は絶体絶命の状態に追い詰められていて、ラストのラストまで半沢直樹の思惑が分からず、非常に緊張感溢れる展開となっています。

残りページが後僅かだというのに全くどう転ぶか分からない物語、最終章に入っての残り30ページが半沢直樹の逆転劇を描くにはページ数が少な過ぎてドキドキしましたが、最後に待ち受ける、全ての伏線を回収するラストは圧巻でした!

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