スタートアップの新人マネージャーが陥る罠と克服策 -経験から得た7つの教訓-
こんにちは、カミナシのカスタマーサクセスマネージャーのほそみ(@uta_somi)です!
2022年1月にカミナシに入社し2年が経ちました。カミナシのCSメンバーも20名も近づいており、ビジネスチームイチを争う大所帯となってきました。
私は、2022年11月からマネージャーをさせていただき、マネージャーという役割自体は初めてではありませんでしたが、「転職が初めて」「スタートアップも初めて」という状態でしたのでほぼ ”初づくし” という気持ちでした。この1年間の備忘録的に、初期に私が陥った新人マネージャーとしての病とそれに処方したいくつかの考え方や取り組みを紹介します。
すでにマネージャーを多くご経験の皆様からは「うんうん、あるあるだな」と共感していただけるかもしれません。(いつもお世話になっている先輩の皆様からは「そんなの序の口だよ。と言われるかもしれませんがご愛嬌でお願いします 笑 )
前提となる状況
私が陥りがちだった3大新人マネージャー疾病
1)誰よりも成果を出し続けないといけない思い込み病
マネージャーになってすぐの頃はメンバーとして案件を抱え、沢山のレベニューを抱えていました。
いつしか「自分もできてないことを強くフィードバックできない」というメンタルブロックが無意識のうちに発生していました。
メンバーの顧客対応に関する相談に乗りながら、「これを試してみたらどうですか?」や「これを行わないと問題が生じるかもしれません」と提案していましたが、同時に、「自分自身がすべての顧客にそれを実践できているか?」という疑問が湧き上がり、自己成果との不安に苦しんでいました。このような状況には、見えないプレッシャーとの戦いも加わり、自尊心が傷つくことを恐れていました。(今だから言えます)
自分自身が"完璧"にできていないことが多いなかで、あるべき姿を指摘することに抵抗を感じていました。
2)自分でやりたい&やった方が早いと思い込み病
昔から、わからないことは自分で調べる、できないことは恥だから自分でできるまでやってみる。という性格も相まって自分のポテンシャルをあげる事ばかりに投資をしてきた社会人でした。ですが、マネージャーになってからは「あれもやりたい、これもやりたいが、こっちもやらないといけない・・・」と、いつしかあらゆるタスクのボトルネックが私になっていることもしばしば起き始めました。
上記のような、誰からみてわかりやすい負のループに陥りました。
とはいえ、スタートアップです。みなさん同じように案件やタスクを多数抱え、「 私なんかがあれやって欲しい、これ巻き取ってほしいです。」と言うことができないと感じていました。当時は結果自分がやる。という安易な選択しかできませんでした。(スタートアップという特性上、自分がやってみて検証する必要性のあるものも多いのは事実です。使い分けが重要という考え方に近いかもしれません)
3)難しいことを難しく伝えるのがかっこいい勘違い病
次に陥ったのは、では、何をやりたいかを伝えようと必死に戦略や方向性のマップを書いて伝えたときのことでした。
ところが、難しいロジックツリーやKPIツリーを持ち出し、自分が頭で考えた難しいことをそのまま絵に書いて伝えることがしばしばありました。
メンバーからは「ムズカシイです。」と言われないものの、彼らの表情から「あれ、伝わっていないかもしれない」というのが浮かび、とても認知コストの高いコミュニケーションを行っていました。本当に申し訳なかったと感じています。
どんなに難易度の高い問題の解を数式で表現しても、それが伝わらなければ何の意味もないことを知りました。
そのなかで、カミナシでは、自分のような新人も含むマネージャーに対するフォロー施策・制度づくりにすごく注力してくれていました。
特に個人的には、昨年受講したMomentorさんのマネージャー向けトレーニングはとても刺激になり、自分のこういった状態を客観視し、リフレーミングするきっかけに大いに参考になりました。
マネージャーにチャレンジしていきたい人にとっては心強い環境だなと思います。そのなかで学び、実際に取り入れてみたコトを言語化していきます。
克服するためにリフレーミングしたこと
(1)1人で10歩を進む方法を考えるより、10人が1歩早く強く進むことを意識におく
いままでは、「自分でどうやったらできるか?」を考えPDCAを回すことを考えていましたが、「10人が1歩を早く強く出せるためにはどうしたらいいだろうか?」を意識下におきました。その結果、次のようなポイントを抑えるようにしてみました。
■前提の情報・状態を揃える
・会議や対話している人に前提となる情報を開示する
・概略を伝える前に、相手に期待値を伝える
・社内ドキュメントには「これはなにか」から記述する
■フォーマットを揃える
・会議の目的と役割を揃える
・議事録のフォーマットを揃える
・メンバーからのレポートのフォーマットを揃える
・顧客情報があつまる場所と情報種類を揃えるツールをつくる
■ゴールイメージを可能な限り極限まで揃える
・荒削りでもいいから理想の状態を言葉や図にして明確にする
・登山に例えて、途中のビジョンも明確にする(3合目、5合目の状態など)
(2)枕詞を「任せる」から「託す」に
前述の"自分でやりたい病" の私は人にお願いすることがどうも苦手でした。
そこで、依頼するときの枕詞を「〇〇さんに△△をお願いします!」ではなく「〇〇さんに△△を託したいです!」と置き換えるようにしてみました。
そうすることで、任せてばかりという心苦しい気持ちがすっと軽くなったような気がしました。また、心なしか、託された側の皆様も強烈なオーナーシップをもって進めてくれるように感じられるようになりました。
(3)伝わらない前提で考える
「せっかく頑張って考えたことがどうも伝わらない」「ひいてはなぜ分かってくれない」という思考の半分は、発信側に問題があると考えた方が健全です。(もちろん、聞き手にも分かろうとするスタンスと一定のスキルレベルは必要ではありますが)
「他人には伝えたいことの50%も伝わらない」その前提に立ったときから、
・情報のクリエイティブ性に意識を向ける
・前述の「前提が揃っているか?」に意識を向ける
・難しいことをシンプルに伝えるほうが尊いと考えてみる
あらゆる考え方がシンプルに考えることができるようになってきました。
また、変に伝わらないことへの他人への摩擦を感じることもほとんどなくなりました。
(4)人間はズレる生き物だからこそ、目標設定こそ魂を込める
5~6年ほど前に、尊敬するある飲食チェーンの社長さんから「いいか細見くん、マネージャの役割は5つだよ」と教えていただきました。
当時の私はそこまでピンときませんでしたが、チームの人数が増えるごとに認識のズレや方向性のズレは少しずつ感じはじめ、特に②がとっても重要だと分かるようになってきました。
目標設定は以下の要素を特に意識しました。
そしていろんな日々タスクが行き交うスタートアップにおいてもっとも重要なことの1つは、誰に託すかを明確化させることでした。
例えば、具体的なタスクは、複数人ではなく必ず1つのタスクにつきオーナーは1人、関係者はfollowerというやり方を採用するようにしました。
ズレるからこそ、目指すありたい姿を明示すること、誰がいつ何をどこまでするのか、これはマネージャーが取り組むべき最も重要なことの1つだと気づきました。
(5)手放していいことをダンコたる意志をもって決めて手放す
マネージャーになってからカミナシのビジネス本部長の宮城から、「細見さん、これって決めたことをしぼってそれをやり切ること、そして手放すと決めたことは手放す、ということが大事ですよ」と言われました。
体制が変わってやらないといけないことが増えて、なにもかも中途半端になりつつあり、また子供が生まれ育休に入ったりプライベートでもバタバタとした自分の時間で使える時間が相対的に減り、混乱していた私にとって、これは金言でした。
マネージャーになると、課題の数も深さも広さも増え、使える時間とリソースは取捨選択せざるを得ない状況が必然的に生まれます。そんな時にチームマネージャーだけが唯一できることは、「やらないことを決めることや、撤退基準を決めること」だと学びました。
また、「止める」「やらなくていい」という言葉に後ろめたさを持っていた私にとって、「止める」→「手放す」とリフレーズしてあげることで、そのハードルを低くしてくれました。
まだ自分がこの選択でいいんだっけ?と迷うこともあります。これはまだまだ今でも課題だなと感じます。
(6)自分の腹の内を見せないと相手の腹の内は見えない
前述の "1)誰よりも成果を出し続けないといけない病" に対して、自分の考えている価値観や抱えているコンプレックスなどをあえて周囲に伝えることで、理解され、時には共感してくれることで孤独から解放されることがあります。日常の会話や1on1で相手の本音を知りたいと感じるときは、まず自分から自己開示を行ってみる。そうすることで変化が生まれるかもしれません。
私がチームでキックオフする時や期初にメンバー全員で下記などを共有する機会を積極的につくるようになりました。
・個人の今のWILL(目標ややりたいこと)
・自分の大事にしたい価値観、ゆるせない価値観
・みんなに応援してほしいこと etc…
「細見さんって意外に繊細なんですね」と言われることもありましたが、恥ずかしい気持ち以上にわかってくれることのほうが嬉しいと感じる様になりました。
(7)心の拠り所はいつも「それはお客さんに向かっているか」
マネージャーは判断や決断の連続だったり、時にメンバーに対してネガティブなフィードバックを伝えなければならない場面が多くあります。
その時に、自分を奮い立たせてくれる(正しく律してくれる)のは「常に、今やろうとしていることが本当にお客様にとって良いことか」という軸です。判断や決断を下す際にはもちろん重要ですが、ネガティブなフィードバックを伝えることは伝える側の精神や肉体に大きな負担をかけます。その際、「今から伝えることは、お客様にとって重要だ。そして、そのお客様に対してあなたが果たす役割も重要だ」と感じることができれば、健全なコミュニケーションの促進に繋がります。
【最後に】結局は、根底にある人間のあり方次第
自身の持つ価値観はとても重要であり、それがマネージャーとしてのアプローチやリーダーシップに大きな影響を与えていることに気が付きました。他人に対する信頼や肯定的な姿勢は、チームメンバーとの関係を築き、チームの成果に寄与することができます。逆もしかり。
私は、「人間はその人が本当に変わりたければ変化できる」という価値観を持っています。
逆に「他人は信用できない、いつか裏切られるかもしれない」「否定されて、不要だと思われるのが辛い」この様な価値観をもっていると、無意識のうちに言動に滲み出してきます。
マネージャーは自分以上にメンバーの成長を信じられるか、相手の可能性を信じることができるか、なによりも自分を肯定し信じれるかどうか?がとっても重要な気がします。
価値観は確かに変化することができますが、それは時間がかかる場合があります。また、どの価値観が正しいというのは私はないと思っています。
ですが、「こういった価値観を私は持っているよ」「こういう価値観を大切にしているよ」その一つのコミュニケーションがあるだけで、そこから現れる、マネージャーの言動に振り回されるメンバーは減るんじゃないかなと考えています。
コミュニケーションを通じて自分の価値観を共有し、メンバーとの信頼関係を構築していくことが重要だと気づきました。
そして、人間磨きを継続することも重要です。先輩マネージャーや経営陣、他の成功したリーダーから学び、自己成長を促進することで、マネージャーとしての人間的成長がチームや組織のパフォーマンスを向上させることに繋がっていきます。マネージャーの力量以上に組織は大きくならないと常に考えるようになりました。
いかがだったでしょうか。
今回は、スタートアップのマネージャーがぶちあたった壁と具体的にやってみたことについて書いてみました。
マネージャーって大変ですし人間なんですよね。メンバーのかたにもぜひ読んでいただきたいなと思います!お読みいただいた、どなたかのなにか前向きなエネルギーの一助になれば幸いです!
お読みいただきありがとうございました!
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