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ジョブ型雇用における人材の適合性とはー企業に求められる雇用管理の転換の視点

コロナ以降、ジョブ型雇用が本格的に検討されるようになってきた感がありますが、日経ビジネス(4月5日号)を読んでいて、気になった記事があったので取り上げます。

「日米中の組織と日本企業の強み」というテーマで、慶應義塾大学の王英燕教授が連載しているシリーズです。

日本企業は、これまで「個人・組織適合」を重視した人材育成を行ってきたのに対し、
米国では「職務」への適合を、中国では「変化」への適合を重視してきた。

日米の雇用管理の比較はよくありますが、「適合」性をこのように整理したのは、なるほどと思いました。

米国で求められるのは、企業組織への適合ではなく、「職務」への適合。
ジョブ型雇用や成果主義から考えれば、確かにそうなりますよね。

つまり、今後日本企業がジョブ型雇用を導入する場合には、報酬体系や労働契約などの雇用管理だけではなく、
求める人材像の転換が必要となり、採用の基準や育成の方針の転換がおこると考えられます。

たとえば採用の基準。
日本の新卒一括採用において重視されるのは、「コミュニケーション能力の高さ」です。
これも、「組織文化や組織風土にいかに適応できるか」という点を重視していることのあらわれでしょう。
(2018年日経連調査 https://www.keidanren.or.jp/policy/2018/110.pdf

課題解決能力や専門性については低く、能力やスキルは二の次ですが、ジョブ型を導入させるのであれば、これを逆転させる必要があります。

ですが、ジョブ型と言いつつ、日本企業は完全に欧米型を指向しているわけではないようです。

2020年の経団連の調査では、ジョブ型採用実施は2割とあります。
2021年度入社対象 新卒採用活動に関するアンケート結果 )

内容を見ると、一部職種に限定している企業が多いと思われ、また
「特定の仕事やポストが不要になった場合に雇用自体が無くなることは想定していない」と注釈があります。

つまり、「タレントマネジメントを重視するか、総合力のあるゼネラリストを採用・育成するか」という二択のようでいて、
日本企業は、(成果主義の導入の時もそうしたように)折衷型を模索していると考えられます。

育成については、日本では職種をまたがる異動を繰り返しながら、ゼネラリストとして能力を高める育成が広まってきました。
アメリカでは、企業をまたがる異動を繰り返して、自分自身が主体となって能力を高めることが中心となります。

これを前提とすると、日本版ジョブ型採用行ったとしても、定年まで働くことを前提とした雇用管理を行う場合、
組織内異動も組織外への異動もできず、育成が弱くなります。
「組織への適合性は維持されるものの、進化に適合できなくなってしまった人材をどうするか」という問題が発生してきてしまいます。

ここで第三の選択肢として出てくるのは、やはり副業や複業、あるいはコロナ禍において注目されている業界をまたがった在籍型出向でしょう。

しかし、こういったチャレンジは、個人へのリスク負担が大きいものでもあります。経済的なリスク、健康面へのリスク、当然のことながら、新しいことにチャレンジするためのメンタル面への負荷も考えられます。
企業側が支援の仕組みを作ることが望まれます。

それも、自社の社員に対してだけではなく、副(複)業や出向で受け入れる社員も対象とする。企業が「働く人」をサポートしていくことがますます重要になっていくと思います。その時、王教授の書く、中国の「変化」への適合が、ヒントになるのかもしれません。

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