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【第17回】 シナリオ分析実践ガイドSTEP3-3:ステークホルダーを意識した世界観の整理

 STEP3の最終段階として、シナリオ毎に自社がどのような事業環境に置かれるかに関する将来像を整理します。シナリオ分析実践ガイドでは、この作業を「世界観の整理」と表現しています。以下では、シナリオ分析実践ガイドで紹介されている整理の方法について紹介します。

1.世界観の整理とは

 STEP3-1で選択したシナリオと、STEP3-2で入手したパラメータが揃うと、これらを組み合わせることにより、設定した時間軸における事業環境が導出できるようになります。「世界観」という用語を社内で使用することに馴染みがない場合は、「将来の事業環境」と言い換えてもよいかもしれません。
 シナリオ分析実践ガイドでは、自社を取り巻く将来の世界観を社内の対話を通じて共有し、合意形成を図ることが重要であるとしています。この対話において留意すべきことは、将来の世界観の予測の正確性ではなく、この後に続くSTEP5の「対応策の定義」につなげるためのベースづくりとする、という点です。通常の中期経営計画のように、積み上げ式・連続的な将来予測とは異なり、現時点では起こりそうにない仮定を置く等、非連続な変化に対してどのような対応をとるか?という議論につなげることが目的となります。
伝統的な中期経営計画の策定プロセスに習熟している企業ほど、「そんな極端な事が起こるのか?」「検討して意味があるのか?」という発想になり、思考を切り替えることが難しい場合があるかもしれません。正解はありませんので、シナリオ分析の目的を常に意識しつつ、「我が社ではこう考える」という将来の事業環境を社内でディスカッションし、コンセンサスを得ていくことが重要であると考えます。

2.世界観を整理するための具体的手法

 シナリオ分析実践ガイドでは、世界観を整理するための手法として、5force分析を例として挙げています。5force分析は、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が自身の著作「競争の戦略」において提唱している、業界構造を把握するための分析手法です。ポーター教授は、「新規参入業者」「競争業者」「買い手」「売り手」「代替品」という自社を取り巻く5force(5つの力)がどのように作用するかによって、競争の激しさと収益性が変化すると指摘しています。
 シナリオ分析実践ガイドでは、5forceの要素を気候変動の観点から調整し、下記のように、シナリオごとに一枚の図に整理したものを例示しています。

【ステークホルダーを意識した世界観の整理】

出所:「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイドVer3~」 
https://www.env.go.jp/policy/policy/tcfd/TCFDguide_ver3_0_J_2.pdf

 このような世界観の整理に当たっては、社内だけでは気づかず、見落としている事があるかもしれません。この点に関して、シナリオ分析実践ガイドでは、社外の視点もとりいれる事が有用であるとしています。

 次回からは、シナリオ分析実践ガイドSTEP4「事業インパクト評価」について紹介する予定です。

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