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短編小説奇々怪々「ひとだま饂飩」

短編小説奇々怪々「ひとだま饂飩」

第一景「実録うどんの怪」

「屋台」(Kさん・40代男)この前さ、家に帰るのに近道しようと思って。

墓地を通るんだけどさ。もう深夜になろうかという時間で。
墓石が黒い影になって並んでるんだよね。
墓石って全部形が違うじゃない。
高さとか大きさとか。それが影になってると

人が並んでるように見えるんだよね。そうしてさ、みんなこっち見てるような気になるの。
それで、良いお墓と悪いお墓がなんとなく分か

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黄泉比良坂墓地太郎事件簿「ムクリコクリの鬼」

黄泉比良坂墓地太郎事件簿「ムクリコクリの鬼」

海月くらげは今日16歳になった。
「16歳」
と海月くらげは声に出した。

「じゅうろくさい」
鏡の中の自分を覗きながらもう一度声に出した。
「ろく」の音で舌先が丸まって反り返る。そして軟体動物が新体操をするかの如く跳ねて、唇がくるりとすぼまった。
誕生日を迎えた、というだけで世界が自分が昨日よりも変わってみえる。

昨日よりも自分が大人っぽく見えるし、世界は昨日よりも明るく見える。
今朝のチョコ

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黄泉比良坂墓地太郎事件簿「かごめ」

「xxxxx!」
その日、恐山杜夫は罵詈雑言を喚き散らし、目につく墓石を片端から倒した。
「xxxxx!」
ユンボとは油圧式のパワーショベルカーのことであるが、杜夫はユンボのレバーを操って鉄腕を振りかざし、ヘヴィ級ボクサーの如くダイナマイトなブロウを墓石に見舞った。墓石は倒れ、崩れ、粉砕された。
夏の日であった。蝉が鳴いていた。土埃に塗れた黒い汗が玉となって流れた。杜夫の肺腑を輻射熱が焼いた。

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