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報復論

1993年の夏。小学校低学年だった僕は、父親に隣町のトイザらスに連れて行ってもらった。お目当ては、当時発売されたばかりのSFCソフト「聖剣伝説2」である。それは後にFF4の原案でもあり、シリーズ最高本数を売り上げたJRPGの歴史に名を遺す作品であった。特別に欲しかったわけではない。プレゼント買ってくれるというから買ってもらった。パパ活のプレゼントの言い訳と同じなのかもしれない。

だが、この作品は今後のゲーム人生にトラウマを植え付けるには十分な作品であった。ボス戦のバグに始まり、仲間の消失、さらには神獣戦でのマナの剣消滅。大人になると大したことのない事ばかりだが、幼き頃の僕の手を止めるには十分な出来事である。

それから26年。つい先日app storeを眺めていたら、聖剣伝説2が売られていた。iosに移植されていたのは知っていたし、steamでも発売されていたのは知っていた。だけど、僕はその事実を避けようとしていた。腕を壊した投手が再びボールを投げるのをためらうのと同じ感覚といえばいいのだろうか。しかし、人は時としてトラウマを乗り越えて行かなければいけない時がある。超えた先にある解放に感動があるのだから。

恐る恐る僕は購入ボタンを押し、DLを開始してプレイした。時を超えて、あの日の思い出が蘇ってきた。人生の1/3を超えた今だからこそ味わえる興奮なのであろう。今こそ借りを返しにいこう。聳え立つ壁だったあいつに、その壁に投げつけられた卵だった自分に。

wiredからreal worldへの切符代として