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「浦和レッズ三年計画を定点観測」~#9-2 2020 J1 第4節 vs鹿島 アンケート結果&振り返り~

今回も採点アンケートに協力してくれた方、この記事の覗いてくれた方、ありがとうございます。
まず最初の3連戦は2勝1分と結果だけ見ればとても上出来で、順位も川崎と得失点の差で2位につけていますが、内容は仙台戦、鹿島戦も自分たちが意図していたものをどれだけ出せていたかというと、もう一つ出し切れなかったという印象ですね。

今節の記事を出す前に、試合翌朝に思い立ってちょっと試合の内容を喋って動画にしてみました。

試合の中での戦術的な部分の大枠は話せたのではないかと思いますが、22分ありますので、時間に余裕がある方は観てみてください。

さて、本題です。
今節もご協力いただいたアンケート結果はこちらです。

採点結果

Q1.<保持/非保持 共通>個の能力を最大限に発揮していたか?
→ 2点

ちょっとこの試合では個人の能力をうまく発揮できるような仕組みになっていなかったように思いました。というよりも、鹿島のやり方を利用しようとしすぎて、自分たちの長所が消えてしまったような印象を受けました。

この試合で右SHに起用されたのは長澤でした。メンバー表の表記でDFとなっていて「おや?」となりましたが、試合に入るとおおよそその通りで大きく開いて高めにポジションをとる永戸をケアする意識がかなり強かったです。
そのため、ボランチと長澤の距離が空いて、その間を人やボールが抜けていくシーンが多々ありましたし、8:40頃のシーンでは興梠が左CBの犬飼にプレスを行いましたが、長澤は犬飼からのパスの出し先である町田ではなく、サイドに開いた永戸の方を気にしたため、町田がフリーで受けて前にボールを運べていました。
事前に今日は長澤は永戸をずっと見ることがチームとして徹底されていれば、浦和の中盤は今日は3枚だということで最初から内ー中ー内に立っていたり、興梠とレオナルドはプレスに行っても中盤からのサポートは出てこないので、まずはプレスに出ずに、相手のボランチを消したところで構えてCBからボールが出た先からアクションを起こしたのではないかと思います。

長澤は攻守ともに前へ出ていくときのパワフルさが長所だと思うので、永戸を最初からケアするのであれば、こちらも対人に強い橋岡を付けて、最終ラインにカバーリング能力の高い青木が吸収される形でも良かったのかなと思います。

ボールの位置によって前に出る、後ろに入るをやり分けることはなかなか難しいと思います。
前に出るときはあらかじめ前線の選手と近い位置にいる必要がありますが、永戸が常に高い位置をとるので、前に出ようとしている時には自分の背後を使われる危険性を承知でいかないといけないですし、そのリスクを負ってでも奪える確証があるプレスを興梠とレオナルドが出来ていたわけでもないので、このタスクの与え方自体が長澤にとって少しかわいそうだったかなと思います。

Q2.<保持/非保持 共通>前向き、積極的なプレーをしていたか?
→ 2点

非保持においてはなかなか前向き、積極的ではなかったかなと思います。それは、Q1での長澤のポジショニングに象徴されるように、得点することから逆算された守備ではなく、相手のやりたいことを防ぐことを目指した守備になっていたと感じたからです。
自分たちの強みを活かすよりも相手の強みを消すことが優先されていました。勿論、これは相手との力関係に依存するので、必ずしも相手の強みを尊重することがダメではないです。マリノス戦はそのおかげでチャンスを作ったわけなので。
しかし、今の鹿島であれば試合前の記事で出したように明確にネガトラに課題を抱えていたので、そこをつくための守備をして欲しかったというのが個人的な意見です。

ボール保持ではマンツーマンがベースの守備を利用して動画で言及したように、汰木がSBを引き連れて低めの位置を取ることで、山中がそのスペースへ走り込むシーンが13:18頃、26:25頃のように見られたので、この部分は評価したいです。
37:30あたりからのトーマスが運んでからの橋岡→長澤→橋岡の流れのように相手を引きつけながら前に進めるシーンもありました。
保持は今年は前にスペースがあるなら一気に蹴飛ばしたり、これはトーマスが入ったことで増えたシーンですが、いきなり最終ラインの裏が難しくても運ぶことで相手の矢印の方向を変えて前の選手を空けて前進したり、一辺倒ではない前進の仕方が出来ているので、これが試合を重ねていく中で体系化されて今以上に意図的に出来るようになると良いなと思います。

Q3.<保持/非保持 共通>攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをしていたか?
→ 1点

トランジションの部分はこの試合では意図的なものを見つけられませんでした。
鹿島がクロスを上げてゴール方向へシュート出来ないけど触れていたのでボール保持が移る時はプレーが切れていたり、これまでの2試合は杉本が献身的に中盤ラインまで下がって、ポジトラ時の預けどころになっていたのが、この試合では興梠とレオナルドの2トップで、どちらも後ろに下がるより前でボールを収めて欲しいタイプだったためにポジトラでのボール配球がアバウトだったのが理由だと思います。

また、ネガトラも柴戸がボランチに入っていなかったため、このポジションのダイナミックさが欠けてしまい、2トップがゴール前に入って行った時のカバー、ネガトラでのフィルター役がいませんでした。

鹿島が昨年までのカウンターがベースの隙あらば相手の背後へのいう意識から、自分たちでボール保持を安定させてから前に入りたいという意識へ変化したことのおかげで、ネガトラから即ピンチというシーンは少なかったと思います。

Q4.<保持>運んだり、味方のスピードを活かしたりしていたか?
→ 4点

保持の中で運ぼうとする意識や、前のスペースを自分が使う時まで空けておこうとする意識は感じました。

これまでの試合ではボール保持の時にはSHとSBは縦のレーンでかぶらないルールを守っていましたが、この日の左サイドはSHの汰木もSBの山中も外側にいた状態からスタートすることが多かったです。
これは、汰木が外に出ることでマンツーマンの意識がある鹿島のSB広瀬がついてくる、山中も外に出ることでSH染野もついてくる、これで鹿島の右サイドは2人とも外に出ているので、山中が得意な内側(ハーフレーン)のスペースから人を消しておいて、いざという時に山中がそこへ走り込めるようにしていたように感じました。
それがQ2で言及した13:18頃、26:25頃のシーンになります。

また先述の37:30頃のトーマスの運んだプレーや67分台に岩波が相手のプレッシングの矢印から外れて自分の前にスペースがある状態の時に一気に前に運んだプレーを見ると、相手のプレッシングの矢印から外れていることを認識できた時にはしっかり前のスペースへ運んでいくプレーを選択していました。

Q5.<保持>数的有利を作っていたか?
→ 1点

この試合の中ではあまり数的有利を作ろうとする意識はあまり見えませんでした。これは、鹿島が明確に人を捕まえてきて、多少ポジションをずらした程度では相手からを外せなかったことも原因だとは思います。
そのため、この試合の中で明確に数的有利を作れたのは前半最後のプレーになった46:55あたりの青木が最終ラインに落ちて、相手の中盤ラインに顔を出した興梠に斜めのボールを刺したシーンくらいで、あとは偶発的に2トップに対して3人を作れたという感じだったように思います。

ただ、人が人をつかめるということは守備側としては自陣ゴールに近い場所ほど数的有利を作りたいところが各所で同数になりますので、それはそれでリスクを抱えた対応になります。
浦和の後方の選手はいずれも精度の高いロングボールが出せる上に、前線も1vs1の競り合いには強さのある選手がいますので、数的有利が作れなくてもそれはそれでというスタンスでいたのではないかと思います。

Q6.<保持>短時間でフィニッシュまで行っていたか?
→ 4点

Q5のように、浦和にとっての前方はそれぞれ1vs1が出来ていましたので、それぞれが自分の目の前の相手に打ち勝てれば一気にボールを前に運べるしシュートを打てるという展開でした。
そのため、外にスペースがあっても中央の数的同数の場所へballを刺し込んで一気にフィニッシュを狙う意識が強かったのかもしれません。
個人的には動画で言及した36:25のシーンなどで、もう一つ大きく逆サイドまで振ることで相手の組織を広げて、最後の中の人数を分散させても良かったのかなとは思いました。

Q7.<保持>ボールを出来るだけスピーディに展開していたか?
→ 3点

鹿島が伊藤をCFに起用してきたこともあり、伊藤が西川までしっかりプレッシングに出ていくことで、西川は繋ぐのではなく滞空時間が長く、お互いにポジションを取りなおせる時間のあるボールを蹴らされてしまうことが多かったです。
鹿島の現在の弱点はネガトラからの陣形回復なので、伊藤がプレッシングすることでその時間を稼がれてしまい、スピーディに展開することは少し難しくなってしまいました。

Q8.<非保持>最終ラインを高く、全体をコンパクトにしていたか?
→ 2点

前半は試合序盤から給水タイムのころまで、後半も杉本が途中交代で入ってから給水タイムになるまで、前線と中盤以降の意図があっていないような印象がありました。
Q1で書いた通り、長澤が永戸を強く意識していたことで同じ列にいる選手もその高さに影響を受けたのかもしれません。永戸が高い位置をとって長澤が押し下げられることで、最終ラインを前にあげることが難しくなりました。
長澤のように前向きのアクションで力強さを出せる選手を起用していたので、全体として永戸のように高い位置をとる選手を最初から捨てて前に出てしまってオフサイドラインの裏に置き去りにして、鹿島のビルドアップをしている選手たちへのアプローチに重きを置くことでマークすることを捨てた選手へボールを出すことをさせないアクションもあってよかったのかなと思いました。

Q9.<非保持>ボールの位置、味方の距離を設定して奪っていたか?
→ 1点

この試合で自分たちから主体的にポジションを取ってボールを奪えたシーンはなかったように思います。
43:00あたりのGKへのバックパスをきっかけにしたプレッシングでは味方のポジションに連動して、次の選手がポジションを取ろうとしていましたが、いかんせん選手間の距離が遠いため、先にポジションを取った鹿島に先手を取られて、何度かひっかけながらも結局はボールを前に運ばれてしまっていました。

組織のコンパクトさと、ゾーン守備の基本的な考え方であるボールと味方の位置を基準としたポジションニングは比例の関係にあって、コンパクトであれば適切なポジショニングが出来るし、適切なポジショニングが出来ている時には組織全体がコンパクトになれているということになります。
そのため、このQ8、Q9はどちらかだけが点数が高く、どちらかだけが点数が低くなることはないと思います。
残念ながら、今回はどちらも点数が低くなってしまいました。

Q10.試合全体の満足度は?
→ 2点

内容だけでいえばもう少し低くても良いのですが、とにかく勝ち点を稼いだことは評価したいです。
また、クロスを散々あげられた中でも中央でしっかり跳ね返せたり、相手に十分な体制でシュートをさせなかったり、試合の結果を左右する部分での質はありました。
正直、川崎戦、札幌戦を踏まえての試合だったので、もう少し意図的に相手のスペースを狙えたり、ビルドアップをはめたりできるのではないかと予想していたため、この内容にはすこしがっかりしてしまいました。
勝手にハードルを上げてしまっていただけかもしれませんね。

アンケート結果

Q1.<保持/非保持 共通>個の能力を最大限に発揮していたか?
→ 2.8点

Q2.<保持/非保持 共通>前向き、積極的なプレーをしていたか?
→ 3.4点

Q3.<保持/非保持 共通>攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをしていたか?
→ 2.1点

Q4.<保持>運んだり、味方のスピードを活かしたりしていたか?
→ 2.5点

Q5.<保持>数的有利を作っていたか?
→ 2.6点

Q6.<保持>短時間でフィニッシュまで行っていたか?
→ 2.8点

Q7.<保持>ボールを出来るだけスピーディに展開していたか?
→ 3.0点

Q8.<非保持>最終ラインを高く、全体をコンパクトにしていたか?
→ 2.6点

Q9.<非保持>ボールの位置、味方の距離を設定して奪っていたか?
→ 3.0点

Q10.試合全体の満足度は?
→ 2.8点

Q.クラブが掲げていたプレーコンセプトに則ったプレーが出来ていた、あるいは行おうとしていたプレーを教えてください
・前半の山中のクロスに行くまでのシーン 長澤と橋岡がワンタッチで抜け出して、レオナルドにクロス送ったシーン
・今節は狭いエリアでの攻防だけでなく、隙きを突いた前線やサイドへの大きく力強い展開も多く見られた。
・今日はほぼなかった

Q.試合全体の感想やこのアンケート/取り組みへのご意見など
・鹿島に勝ったのは最高。けど放り込みに耐える展開は狙いとは違うよね
・今日はさすがに体が重かったかな。まあ、最初の3連戦で結果だけみれば上々。これを基準にどこまで上げて行けるか。フルで観られたゲームはなるべくアンケートに協力していきたいので頑張って下さい。いつも楽しみにしています。
・3連戦最後で少し疲れがあったように感じましたが、山中のキックの質を活かして得点できてよかったと思います!しっかり勝ちきれてよかった!
・サイドではとにかくボールを前へ運ぶためのパスや攻防というよりも、ボールを失わないためのプレーが多かったように見える。カウンターの怖さというよりは連戦の疲れが足を重くしていたのか、相手が鹿島だからか。

勝った試合でも満足度は2.8点と皆さんも辛めですね。
また、記述回答の項目は皆さんの意見がよく見えるので面白いです。
プレーコンセプトを体現出来たところについての、長澤と橋岡がワンツーで抜け出したシーンは私も取り上げた37:30~のところだと思います。同じ視点を共有できているからこそ、こうしてピックアップするシーンが揃うこともあると思います。
これはピッチ上の選手たちも同じで、同じものを目指していると、同じイメージを描きやすくなるはずで、こうした共通理解を積み重ねていくことで、プレー選択のスピードも上がっていくのではないかと期待したいです。

また、今日はプレーコンセプトに則ったプレーがほぼなかったという意見や、放り込みに耐える展開は違うという意見についても、チームが目指しているポイントを共有できているからこそ、勝ったからOKにはならない上に、どうやって勝つのが理想的かというイメージを持てているのだと思います。

最後に

一旦、試合が空くようなテンションになってしまいますが、土曜日にはもう次のFC東京戦、そこから水曜日に柏戦、日曜日に横浜FC戦とチームとしての個性が表現できているチームとの3連戦ですので、今回の連戦よりもタフな内容になることが予想されます。
私もこの3チームの試合は事前に確認して自分なりの予測を立ててから連戦に臨みたいと思います。

このところ、ちょっと思い付きでボードを使って動画を撮ったりしてみていますが、この記事では基本的に図を使わずに文字だけでやってしまっているので、それが分かりにくい方向けに少しでもサッカー理解が深まればいいなと思って撮ってみています。
たどたどしい喋りなことは自覚していますが、こちらも自分のペースで少しずつ上達できればと思いますので、頭の片隅で気にかけてもらえると嬉しいです。


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