【映画】「PERFECT DAYS」幸も不幸も愛する
(約3000字/7分)
あけたら地震びっくり、私です。能登に心を寄せて、ことよろです。今回はPERFECT DAYS、おばさんも感動した~って、PERFECTネタバレです。
意味という病(柄谷行人,1975)を思い出す
山やオチや意味がない(801)作品に触れると、この本※を思い出す(BLではない…おじいちゃん達のセクシーショットは沢山あったけど笑)。
現代人は人生に意味を求めすぎている。
死期を悟った男の「なーんにも分からないまま終わるんだなぁ」というセリフ、これは「分かる」ことが前提になっている。この映画も、なーんにも分からないまま終わる。金髪女は何故泣いたのか、後輩はなぜ飛んだのか、さゆりママの本命は誰なのか、平山はなぜ清掃員をしているのか、答えは何もない。だけど確かに人生こんなもんで、「分かる」という前提は失くしていいのかもしれない。人生とは何か、幸せとは何か、一瞬感じたとしても、分かることはきっと難しい。平山の返答「変わらないなんてことはない」も良い。男は結婚したけど離婚した。再婚したけど会いたくなった。100%の気持ちで離婚/結婚するわけじゃない。人間は揺らぎ続ける。そこに意味はない。
※偉そうに参照しているけど、難しい本で1/10も理解してない(´;ω;`)
無言の演技、カセットテープの豊かな音域
カセットはアナログで、CDはデジタル=サンプリングされている。学生時代、理系だったが耳が良い先生がいて、CDは音が悪いとよくボヤいていた。
自分の気持ちを言葉にする、というのも、ある意味サンプリング。食レポで「うまい」と言うのと「XXがXXで宝石箱や~」ではサンプリング数に大差がある。しかしそもそも言葉にしなければ、豊かな感情を私たち自身の心で再生することができる。平山は早朝空を見たとき、木漏れ日を見たとき、嬉しそうな表情をする。もし言葉で「きれいだな」と言ってしまえばそう思ってしまうし「今日も平穏な1日に感謝」と言えば宗教的にも聞こえる。無言にすれば、見ている人の中に眠っていた言葉を、平山が話してくれるような気がした。
平山という人が心にずっと生き続けるだろう
NHKのあさイチで役所さんがゲストのとき、架空の人物だけど心にずっと生き続ける人がいるって話してた。確かに私も、昔愛したキャラクター達は今も生きている! 未だに「誰?」って聞かれると、神々の遊びの「私だ」ってネタもやっちゃう!(違う)
平山に似た人も結構いるような…職人気質というか。自分も少し似ている点がある。仕事の道具をつくるのも好きだし、あの寝る前の読書姿は多くの人にとって共感では(若者はスマホだからないかなぁ)。ひたすらに人々の汚れを浄化する姿は修行僧っぽい。とにかくリアリティのあるおじさんであった。
缶コーヒーはBOSS、的なニヤリが沢山
たぶんBOSSを見て二ヤつくのは日本人だけ。そういう「分かる人なら」みたいなネタが沢山あったなぁと。BOSSのCMも日常を描いているので、平山版のCM、見たい! ベンチで謎に見てくる人も分かる~。更地になると思い出せなくなるの、分かる~!
前半、仏並みの平常心平山について
子持ち母の私としては、迷子と母親とのシーンは複雑だった。平山の身になれば「子供がトイレで泣いていたから一緒に母親を探してあげたのに、不審者扱いしやがって」と舌打ちしたくなるシーン。でも最後に子供だけが手を振ったときに「ふっ」と笑う(この笑い方も絶妙!)。これ最初は、きっと下僕扱いに慣れているから平常心でいられるのだと思った。
しかし後半になって、平山は金持ちであったことが明かされる(運転手付きなんて、相当な貴族やん…)。そこで思ったのは、過去は、平山も見下す側のにいた、だから見下されても理解できる、そっちの世界じゃそうなりますよね~みたいな(私はそう受け取った)。迷子の母、お礼くらい言って!と思うけれど、公園で子供が見つからないなんて、ハードだよぉぉ。下の子が大泣きするほど探すよ…しかも一人で探してたんじゃない? そしたらみんな敵に見えるよ…理解できると怒りはないよね。「繋がっているようで繋がってない世界がある」ってセリフもどんどん効いてきた。
ミニマリスト?SDGs?
湿らした新聞紙で掃除するの、久々に見た(笑)。基本外食、毎日同じ服で、銭湯、週1コインランドリー。相当モノないな、と思いきや、台所で寝るシーンで、めちゃくちゃあった(笑)。まぁ本や植物、写真もたくさんあるし、タイパを追求した姿なのかもしれない。玄関に小物並べている台、いいよね。ちょっとヒーローの変身シーンみたい、順に装備するのかっこいいな、うちにも作ろうかな笑。
江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ
給料前の現金6000円?たまたま現金なかっただけかもだけど。貧乏すぎると思いつつも、24時間つけてる紫外線?ランプ、フィルムの現像代、外食、スナック通いすればまぁいわゆる江戸っ子なのかなぁと。家の鍵、してなかったしね、盗まれて困るものはないってこと?「今度は今度、今は今」というセリフにしても。
ハイスミス 11の物語 すっぽん de 検索!
ニコが「この本のヴィクターみたいになっちゃう」と言ったので、気になるじゃん! どうやらパトリシア・ハイスミスの短編集「11の物語」の「すっぽん」という短編のようです。ネットありがたや! 支配的な母親を息子が殺す話らしいよ! ギャー!
深く知るにはセトリ予習が必要
しゃべらない分、音楽で語るシーンが多かった。ゆっくりな英語なのでなんとなく分かったけど、ラストシーンはそこまでハマれなかった…役所さんのマジ泣きすげぇ、とか思ってしまった(笑)たぶん音楽の理解が浅いからだと思う。
資本が輝く時代の、あとの生き方
歳をとれば、若かった頃のように生活することはできない。日本のGDP、そろそろ4位になるらしい。多くの先進国が経済力が低下している(欧米は清掃員なんて移民しかいない)。高級車で送迎されるような、すべてが手に入る時代は終わった、さあどう生きよう。その答えとしても、本作は捉えられると思った。人はPERFECTではないから、PERFECTに憧れる。貧しくったって、PERFECTになれますよ、光はありますよ、と。
反面、PERFECTは「完璧」以外に「ちょうどいい」って意味もある。
「ちょうどいいHonda」ってCMあったけど、他人は違うけれど自分にはPERFECT、ということ。平山にはダイハツ(!)がPERFECTである。私も似たようなバンが愛車。高級車がボロアパートの細い道を通るだけでヒヤヒヤしちゃう!
PERFECT DAYS、すべて受けいれられる日々
平山のような生活は憧れるけど難しい。けど自分にとってちょうどいいものを選び、ちょうどいい生活をする。そんなPERFECT DAYSなら私もできそうかな。それは時に不幸で、時に幸せな、うつろいゆく日々。意味なんてない、ただ愛すべき日々、いや「素直に愛せる日々」かなと思った。
今日は朝から忙しく、映画のように自分の朝食は自販機で100円のBOSS(カフェオレ)飲んでみたら、昼までもったし、何よりラク~。体に良いって朝はスムージーとか、未来のために頑張りすぎると今を愛せなくなるときがある。そういうとき、缶コーヒーでもいいかなと思った。さすがに毎日は糖尿病が心配(笑)。歳とっていつ死んでもよくなったらいいかな。
ともかく素敵な作品だった、心が弱っているとき、何度でも見たいのでDVDが待ち遠しい!