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あの時溢れ出た涙でさえも


アイドルグループのファンだった。
わたしの学生時代は追っかけで出来ていたし、誰かを応援することが自分の生きる活力になっていた。


誰かを応援することで、未来の予定ができて、楽しみを見出せて、その時生きている自分を肯定できた。

そのグループを好きになって、コンサートの楽しみや違う世界を知って、そのカテゴリーでの友達を自分で作っていって。多分昔から自分からなにか切り開く力は持っていたのかもしれない。


そこから派生して違うグループを好きになって、さらに友達も広がった。
だからこそ、最初のきっかけになったそのグループにはなんだか特別な想いがあった。

そんな彼らが解散となった。
長い年月、たくさんの経験を乗り越えて誰一人欠けることなく同じベクトルで進むということは本当に容易ではなく、もしかしたら困難なことの方が多かったかもしれない。

最後だからテレビ番組の特集が組まれていて、
その中で最後の挨拶として、
「いい時も悪い時もあって、それでも笑ってたらなんとかなったなって振り返って思う」
と言っていた言葉がグサリと刺さった。


もう追っかけからは数年以上離れていた。
そのグループの曲を聞くこともなくなっていた。
だけど、たまたま仕事を早く切り上げて帰ってテレビをつけてご飯を食べていたときにそれを見て、わたしは一粒、涙がこぼれた。


そうだな、って。
決して平坦な道を歩いてきたわけではない彼らから出る最後の言葉は軽やかながらも重みが伝わってきた。


彼と久しぶりに会ってから少し気持ちの上下があって苦しかったけれど、その言葉にふれて、久しぶりに彼らの音楽を聴きたいと思い、聴き漁り、なんだか大丈夫な気がした。
よくわからないけど、ネガティブなスローガンを自分で抱えていただけで、それをポジティブなスローガンに変えるのだって結局は自分でしかないと改めて気づいた。


そんな今日、わたしはまた歳をとった。
20代の頃より確実にアラサー独身は生きにくい。それに合間って、わたしの性格は生きにくさの塊だけれど、それでもここまで何度も立ち上がって生きてきた自分を今日くらい褒めてあげたい。


「りんさんみたいに仕事がしたい。仕事の方法を教えてほしい」と後輩が頼んできた。
わたしの仕事の方法は独自だし、正しいかもわからない。それでも、誰かにはちゃんと届いていた。良かった。だからね、誰かに届けられるようにこれからも仕事をしたいと、そう思ったの。

彼からもLINEがきた。
お誕生日おめでとう。これからもどんどん綺麗になっていくと思うけど、こっそり陰から応援してます、と。

公にはできないけれど、陰から応援してくれる人がいるって考えようによってはとても心強いのかもしれない。


お誕生日おめでとうとLINEをくれる友達がいる。一人いるだけでも幸せなことなんじゃないかな、と思う。



わたしの姿がここになくても、世界なんて当たり前にまわっていく。
でも多分まだ、未来に向かう道の途中なんだって信じたい。
だから、あの時溢れ出た涙にさえも戸惑うことなく進んでいきたい。



お誕生日おめでとう、わたし。


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