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トラウマが「達成感」を奪っていくートラウマと達成感の関係性について

最近、ある「歪んだ考え方のクセ」に気づきました。それは「どうせ途中でやめてしまうので、何もやり遂げられない」というものです。
この考えが頭から離れず、はっと思い出したのが、以前読んだ本の知識でした。

トラウマが生み出した、フルマラソンを全力疾走のライフスタイル

回避に基づいたライフスタイルの構築というテーマで、トラウマを持っている人は、
「常に全力でがむしゃらに物事に取り組むライフスタイルを構築してしまう」というものです。休む間も与えることなく走り続ける異常な「熱意」の裏側にあるのは、
「過去のトラウマの苦痛や恥や恐怖から、可能な限り遠ざかりたい」という思考から生まれる、立ち止まることの「回避」なのです。トラウマを心に抱えている人にとっては、立ち止まるということは、「トラウマに追いつかれてしまう」ことを意味しています。止まってしまえば、自分の心の傷と向き合わなければならなくなる。だから、止まることが出来ないのです。

しかしこれは大きな弊害があります。何かを達成してもすぐに次のことに取り掛かることで欠落してしまうものがあります。

「達成感」の喪失

それが、「達成した実感」です。
達成感を味わうためのわずかな余韻に浸るためにちょっとだけ立ち止まることすら、トラウマを抱えている人にとっては「逃げなければならない=立ち止まる余裕はない」のです。
そのため、実際には全力でたくさんのことを成し遂げてきた経験があっても、自分が成し遂げた経験の「達成感」を味わうことができないのです。達成した経験は「実感」としてその人の心には残らないため、「自分は何事も成し遂げてない」という歪んだ思考に結びついてしまうのです。

「達成感を味わう」ために、立ち止まってみた

私の「どうせやり遂げられない」という思考は、立ち止まることを恐れるあまりに「達成感」を得る機会を失ってきたことが背景にあるんだと気付きました。
ちょうど、いま取り組んでいた認知行動療法のワークも折り返し地点で、「これまでの取り組みを振り返る」という段階にきていたので、この「達成感を味わう」体験を実践することにしました。

普段の自分なら、「振り返る時間があるならさっさと先に進みたい」という思考になるのですが、今はこの思考の動機が、「トラウマからの逃避」であることに気づいています。なので、「振り返る時間をとって知識を定着させるのも悪くないのではないか」と自分にいいきかせることで、自分の取り組みを振り返り、ここまでの取り組みの実感を得ることにしました。

セルフ認知行動療法で得られた、多くの経験を実感

認知行動療法(CBT)は、自分の感情や思考に目を向けて、自発的に取り組んでいくことが必要であり、ワークに取り組む時間や落ち着いて取り組むための環境を整えたり、中には数日間日誌をつけたりするワークもあったりして、正直途中でやめようかな…って心が折れそうになったりもしてました。
そんなことを思い出していたら、「半分までこれたし、CBTについての知識も少しずつ身についてきたんじゃないか?」と思えるようになってきました。

わたしの取り組んでいる「体験的CBT」のワークは、本来は専門家がCBTを実践することで、CBTをより深く理解することを目的に作られたワークですが、一部専門用語があるものの、素人の私でも取り組めています。カウンセリングを受けてみたいけど経済的負担が気になる人や、カウンセリングを受けられる環境がない方で、自分と向き合うための一つの道具として活用するのにとてもおすすめです。

また、このワークを取り組むことで、「カウンセリング=治してもらう場所」ではなく、「カウンセリングは自分から積極的に心の問題に向き合う場所」であるということに気づかせてもらえました。
たくさんの気づきを得られた実感とともに、残り半分のワークにも取り組み、「何もやり遂げられない」自分から脱却したいと思います。

参考:
トラウマを乗り越えるためのガイド:マインドフルネスとメンタライゼーションの実践/リサ・ルイス、ケイ・ケリー、ジョン・G・アレン(著)、神谷栄治(訳)[2012]

体験的CBT (〈実践から内省への自己プログラム〉ワークブック)/J.ベネット-レヴィ、R,スウェイツ、B.ハールホフ(著)、佐々木淳(監訳)、伊藤絵美、丹野義彦(日本版シリーズ監修) [2021]


性依存症当事者の目線から、性依存症の専門書を翻訳した情報や、当事者として感じたことを中心に発信しております。 おもしろいな、もっと読みたいなと感じていただけたら サポートをしていただけると嬉しいです。