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MU-TON/CHILDRENの歌詞考察

白河は小峰城下レペゼンのTRI MUG'S CARTEL所属のラッパー・MU-TON。
2016年のUMB本選出場以来、バトラーとしての側面を語られることが多かったMU-TONだが、昨年リリースしたソロ1stアルバム「RIPCREAM」が良作揃いだった。バトル引退を仄めかすMU-TONは音源も格好いい。

CHILDRENは、トラックメイカー・プロデューサーのkiddblazz.との共作という扱いになっている。
YouTubeで4月にMVが解禁されているのに、現時点(7月初旬)で2万再生しかない。曲もめちゃくちゃ格好よくて、バトルでプロップスも稼いだMU-TONの新譜がこれしか再生数がないというのは、残念極まりない。

MU-TON/CHILDREN

リリックを見ていこう。

いつの間にか愛想笑いばっか上手くなって
面倒くせえよな 大人って
ガキの頃に憧れた俺は馬鹿だなって
思いながらペンを綴り この音が鳴ってる

1,3,4小節は基本に忠実な三連符。
8拍のうち、1拍目を抜いて2拍目の頭から「いつの〜」と始まる。
2小節目は、1~3拍目を抜いて4拍目に「面倒くせ」までは三連符。「え(ぇ)よな(ぁ)、お(っ)と」と節回しをつけ、飽きさせない工夫が成されている。
また、2小節目のラストと3小節目の頭がクロスオーバーして、後ろノリから前ノリへ変わる。
「ガキの頃にあ/こがれた俺は馬鹿だなって」と、スラッシュ部分で音を切る。一般的に、シンガーソングライターは歌詞を「単語と単語の結合」と捉えがちで、音節ごとに区切るということはあまり見られない。しかし、MU-TONはこれに全く該当しない。音の乗り方に合わせて単語をブツ切りし、気持ち良い歌い方に変える。これは彼のフリースタイルにもよく見られる。

韻について。

「上手くなって」「大人って」「馬鹿だなって」「音が鳴ってる」と、小節のケツごとに[a^e]で脚韻していて、聞き心地の良さを際立たせる。

細かく見ていくと、1小節目は拍/裏拍の頭の[a]にアクセントを置いている。
「いつのにかいそらいばっかうまくって」 と母音踏み。

赤いeye(s) 長いライン アインシュタイン
ベロの上に四角いの曲がりたい Life style
当たり前 建前 前ならえ 馬鹿みたい
ダッセえから自分らしくありてえよな

赤い目、という書き方からクスリのことを指したリリックだということは察せられるが、如何せん内容が分からない。
とりあえず「アインシュタイン」→肖像画が「ベロ」を出している、という連想。
その後の「四角いの」というのは、立方体のゼラチン等に加工された薬物のことで、経口吸引していると言いたいのではないか?と解釈した。
「曲がりたい」って何ですか。もしかしたら耳コピのリリックが間違ってるのかもしれない。誰かこの歌詞と解釈の正解を知ってたら教えてください。

そして、MU-TONは世間で言われるところの常識、常識を身につけた「大人」は「馬鹿みたい」で「ダサい」と切り捨てている。

「当たり前(とされる)建前(に)前ならえ(することは)馬鹿みたい」と、意味が伝わる最低限の単語で歌詞を綴っている。

韻について。

1小節から大胆に踏み倒す。
赤いeyes」「長いライン」「アインシュタイン」「曲がりたい」「Life style」「当たり前」「馬鹿みたい」と、一部不完全韻を含みつつも、[(a)aiai]でキメている。

また、「当たり」「建」「前ならえ」と、「前」の連想ゲーム作詞の中にも変化をもたらしながら[ae]で踏んでいる。
そして、[ae]は[ai]とも聞こえるように歌い、上記のイカレライミングにも繋がる。
ちなみに、次の小節の頭の「ダッセえ」、中盤の「てえ」にも[ae]の流れは繋がっている。

細かいところで言えば、「し/かくいの」も「曲がりたい」も音を合わせる上で踏んでいる。
また、「自分らしありてえ」も[ai]。

Boy meets one, オンリーワン探す どうかしてる
beatsの上 水を得る魚 ポーカーフェイス
人の目 気にしてる大人 笑えてる
世間体 人間性 知らねぇよクソッタレ
服と夢 オーバーサイズ XXL
なぁ 同じひねくれ そのままでいてくれ
俺もアイツもbeatsも景色も既に同化してるよ

Boy(=MU-TON)は「自分らしく」いられるオンリーワンになる術を探している。
ただ、自身は「ひねくれ」であり、世間体や人の目は気にしない生き方で自分らしさを探して、身の丈に合わない夢ばかり追っている。それが世間から見れば「どうかしてる」のも理解できる。
そんな道を外れた生き方をしているから、「俺もアイツ(=自身と同じ「ひねくれ」)もbeatsも」世の中から見れば景色と同じように取るに足らない存在でしかないのだ。

韻について。

Boy meets one」「オンリーワン」で[o/i-an]。
ポーカーフェイス」「どうかしてる」で[o-a/eu]。
探す」「さかな」(「大人」)で[a/a]。「さかな」「大人」は「大人」の発音を[o]から[a]に近い音にすることで踏んでいるように感じさせる。
beatsの上」「水を得る」「人の目」で[iuoe]。
韻がそこかしこに絡み合っている。

「人の」「気にしてる」「笑えてる」と[e]に強勢音を置くことでグルーヴ感を出す。

「世間体~」からの一節は特にスタッカートが強めで、跳ねるようなリズムをとっている。
前の節から続く[e]のアクセントも続いていて、「」「人間」「知らねぇよ」「クソッタ」「服とゆ」「XXL」と随所に[e]を散りばめている。
その中で「服と夢 オーバーサイズ」という掛詞も入れ込んでいるのが洒落ている。

そして、原点回帰したようにシンプルに「ひねくれ」「いてくれ」と[ieue]で脚韻。

HOOK前のメロ付きの一節では、「同化してる」「どうかしてる」のダブルミーニング。
「俺のリリックに意味を求めなくていいんだぜ(TAG SHITより抜粋)」とスピットしたMU-TONのリリックは、気付くだけでもこんなにも複雑に意味が絡み合っている。

freeに泳ぐbeatsの上 今
fishのように水を得る roll up
火着けるjoint 燃やすroll roll roll
ベビーフェイス yourself it's OK
なぁ 今だけは自分を好きと言えるから
相も変わらずspitして roll up
火着けるjoint 燃やすroll roll roll
この指止まるChildren

ロ長調の音階に乗せてメロディアスに歌い上げる。

しがらみばかりのこの世界の中で、音にノッている時だけは水を得た魚の如く自由に動き回れる。 斜に構えてばかりいる自分を肯定できる。
だから、ラップして巻いている手の指の先に一緒に止まってくれるのはトンボではなく仲間=CHILDRENなのだ。

「ベビーフェイス yourself」の解釈が難しいと感じた。
自分を投影できる仲間は、世の中から蔑まれようと(プロレス的な意味で)ヒールではない、という程度の意味でいいのだろうか。

韻について。

free」「fish」の頭韻。
素直に[f]のみの頭韻ではなく、「fish」の読み方を[f/íʃ ]と音節ごとに分けることで、「free」の[fríː]後半部分にも滑らかに接続できるように発音している。

beatsの上」「水を得る」は先述の通りなのだが、頭の[i]は「joint」「spit」「」まで繋がっている。

Verse 2へ。

なぁ お前24だぜ? ちゃんとしろよいい加減
同じことを繰り返し 腰にパンツ 品がねぇ
世話焼けるピーターパン 追いかけるティンカーベル

頭2行は世間的には「更生」した元・仲間からの戯言だろう。
遊んでいられる学生時代はもう昔の話で、こっち側に来いよと呆れながらも誘っている。

ピーターパン症候群に冒されているMU-TONを追いかけてくれる仲間のティンカーベルがいる今の状態は幸せなのだ。

韻について。

「24だぜ」「いい加減」「繰り返し」「品がねえ」「ピーターパン」「ティンカーベル」と[iae]を基調に踏み倒す。

上手くいかぬこのlife 大掛かりな遠回り
late night 進む8 mile ここは通過点
始まりは鏡の前 エミネムの真似したって
どうせ一度きりだよ 嫌われてもいいだろ
振りまくのを愛想からmy flowに変えて

不器用な生き方しかできないMU-TONは、それでも現状を「通過点」と言い切る。
「8 mile」についてEMINEMの自伝的映画に掛けていることはもはや言うまでもない。いまはゲットーとアッパークラスを隔てる8マイルの短い距離を進んでいる最中。陽の光も見えないような暗黒時代だとしたって、太陽は必ず東から昇る。だったら自分の好きなことをやって生きていたいとスピットする。
Verse 1の序盤で吐き捨てていた「愛想笑いばっか上手くなっ」た奴らからの決別を歌う。

韻について。
/のlife」「大掛かり」「遠回り」と[o-aai]で踏む。
late night」[leɪt nάɪt]「8 mile」[éɪt mάɪl]は英語の発音的にも子音全踏み。

6連符のフロウを経て、「一度きりだよ」「てもいいだろ」と[oiiao]で綺麗に踏む。
かと思えば「振り」「愛想」「my flow」と[aio]で細かく刻む。

なぁ 常識とかルール 偏見とかブーム
よく聞くねSkrr Skrr それいつまで続く?
並べるスペル MU-TON
狭い歩幅 立ち止まる Rolling up, smoking now
アイツらの物差しじゃ 測れねぇ音出した
俺でいれること確か 楽しんだ者勝ちだ
You&me, listen me musicはdrug
Living proof let me see I saw the damn things

最近の流行りのトラップフロウをただパクっているだけの軽薄なMCたち(=アイツら)に疑問を投げかけ、自分が信じるものだけを信じて音楽を作っていくと宣言している。

韻について。

とかルール」「とかブーム」[oau-u]で脚韻。
「立ち止まる」「Rolling up」「Smoking now」[inau]で脚韻。
物差しじゃ」「音出した」「こと確か」「者勝ちだ」[ooaia]と脚韻。
You&me」「Listen me」「music」で[u-i]で踏んでいる。

最後の一行(特に「the damn thing」)のあたりの耳コピはかなり曖昧。御容赦ください。

HOOKを挟み、最後は一部を繰り返す。

freeに泳ぐbeatsの上 今
fishのように水を得る
Oh yeah

この部分だけ、3度上にハモりを入れている。ハスキーながら優しい声質で、メロウなビートに合っている。
HOOKが映えるのも、この歌自体の上手さもかなり影響しているはずだ。

個人的には、今のところ2019年のバラードのHIPHOPの中でいちばん良いと思う。
一部歌詞や解釈が曖昧なところがあるので、違う考えがあれば訂正等お願いします。


MU-TON
CHILDREN

いつの間にか愛想笑いばっか上手くなって
面倒くせえよな 大人って
ガキの頃に憧れた俺は馬鹿だなって
思いながらペンを綴り この音が鳴ってる
赤いeye 長いライン アインシュタイン
ベロの上に四角いの曲がりたい Life style
当たり前 建前 前ならえ 馬鹿みたい
ダッセえから自分らしくありてえよな
Boy meets one, オンリーワン探す どうかしてる
beatsの上 水を得る魚 ポーカーフェイス
人の目 気にしてる大人 笑えてる
世間体 人間性 知らねぇよクソッタレ
服と夢 オーバーサイズ XXL
なぁ 同じひねくれ そのままでいてくれ
俺もアイツもbeatsも景色も既に同化してるよ

freeに泳ぐbeatsの上 今
fishのように水を得る roll up
火着けるジョイント燃やすroll roll roll
ベビーフェイス yourself it's OK
なぁ 今だけは自分を好きと言えるから
相も変わらずspitして roll up
火着けるジョイント燃やすroll roll roll
この指止まるChildren

なぁ お前24だぜ? ちゃんとしろよいい加減
同じことを繰り返し 腰にパンツ 品がねぇ
世話焼けるピーターパン 追いかけるティンカーベル
上手くいかぬこのlife 大掛かりな遠回り
late night 進む8 mile ここは通過点
始まりは鏡の前 エミネムの真似したって
どうせ一度きりだよ 嫌われてもいいだろ
振りまくのを愛想からmy flowに変えて
なぁ 常識とかルール 偏見とかブーム
よく聞くねSkrr Skrr それいつまで続く?
並べるスペル MU-TON
狭い歩幅 立ち止まる Rolling up, smoking now
アイツらの物差しじゃ 測れねぇ音出した
俺でいれること確か 楽しんだ者勝ちだ
You&me, listen me musicはdrug
Living proof let me see I saw the damn things

HOOK

HOOK

freeに泳ぐbeatsの上 今
fishのように水を得る
Oh yeah


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