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大加州刀展の備忘録

石川県立歴史博物館で開催中の大加州刀展に行ってきました。自分なりに感じたことや学んだことなどを忘れないように書き留めておきます。 おまけで歴博周辺のごはん事情なども。

金沢駅から県立歴史博物館へ

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実は金沢駅に来るのはこれが初めてです。噂には聞いていましたがとってもお洒落な駅ですね…!!鳥居風の巨大な門が存在感あります(観光客がみんな写真撮ってました)

県立歴史博物館までは、駅前のバスターミナルから金沢周遊バスに乗り、「広坂・21世紀美術館」バス停で降りて10分くらい歩きました(この日は晴天で、鬼のように暑かったです…)

兼六園の脇を黙々と歩くと、赤レンガ造りのレトロな建物が見えてきました。石川県立歴史博物館は元々は金澤陸軍の兵器庫だった建物を利用しているらしいです。建物だけでも見応えありますね。

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中に入ると、とうらぶコラボパネルがお出迎えしてくれました。テンション上がりますね〜!!

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パネル裏にすぐ物販コーナーがあり、左に進むとチケット販売窓口があります。チケットを購入し、案内通りに進むといよいよ展示会場です…!!

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大加州刀展

展示室内は何と撮影可。でもSNS等に写真を上げるのは禁止ということなので、ここから先は文章のみで語ります。

展示は刀派ごとに分かれた構成になっており、まず第一章は南北朝期の真景、室町期の藤嶋友重から始まります。

真景は越中則重の弟子と伝えられている刀工(実際にはちょっと時代が離れているようですが…)だけあって、地鉄の肌模様が際立っていて、刃中の働きも盛んでとても見所の多い刀でした。則重の松皮肌好きなので個人的に大変好み。

初代の藤嶋友重は来国俊の門下と伝えられているそうですが、作風はあんまり来派っぽくないような…?(シュッとした直派の刀もありましたが)むしろ、備前と美濃の相の子のような尖り刃の混じった互の目が印象的でした。

実を言うと藤嶋友重には少しだけ個人的な思い出がありまして、私が通わせて頂いている刀剣会で鑑定刀として藤嶋友重が出たことがあるんですよね。

その時の私の入札ががこちら(ちなみに、ドキドキしながら初めて入札した札です)

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刃文が末備前の複式互の目(蟹の爪)っぽく見えたんですね。「にも見えます」という講師の先生の優しさが沁みます。記念すべき初入札が藤島友重だったという大変個人的な思い出でした。

なお、加州清光もこの藤嶋派の流れに連なる刀工だそうです。

第二章からいよいよ加州清光の刀です。室町期の清光から始まり、江戸の長兵衛清光(6代目清光)まで。沖田総司が使っていたとされる清光はこの長兵衛清光だそうですね。この頃の清光は生活に困窮し、藩の貧民救済施設(非人小屋)に身を寄せながら作刀していたことから「非人清光」とも呼ばれていたとか…

歴代の清光達の刀をたくさん見て思ったのは、作風が多様だな〜!?という印象。直刃もあれば互の目もあるし、美濃風の尖り刃もあるし、のたれ調もあるし、丁子もありました。需要があればどんな作風でも作る器用な刀工だったのでしょうか。でも茎尻はほぼ全て片側が欠けたような形の加州茎でした!!

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そして第三章に家次、四章に陀羅尼派と続きます。家次は別名「加賀青江」と呼ばれている刀工らしく、青江の澄肌風のものが地鉄に見られるらしいですよ…?(私にはちょっと見つけるのは難しかったです…)

陀羅尼派は加州鍛治の最大派閥とのこと。個人的に印象に残っているのは、図録番号36の「おそらく造り」の脇差と、図録番号40の瑞龍寺奉納刀です。「おそらく造り」の脇差、この独特な形も好きなのですが、鎺(はばき)がチェック柄でとってもお洒落でした。

瑞龍寺奉納刀は蛙子丁子の混じった丁子の刃文がとても華やかで綺麗な刀でした…!!陀羅尼派の刀は、丁子や美濃風の尖り刃が多かった印象です(鑑定会で出たら美濃で入札してしまうなぁ…)

五章では歴代の兼若の刀が展示されています。兼若は新刀期に美濃から来た刀工とのこと(だから「兼」なのかぁ)。腕の良さは加州新刀随一で、「加賀政宗」とも呼ばれていたそうです。初代兼若は美濃風の作風なのに対し、代が下るにつれて箱乱れや逆丁子乱れのような特徴的な刃文になっていくのが興味深かったです。こんなに綺麗な(規則的な)箱乱れの刀は初めて見たのでちょっと感動しました。箱乱れの刀が鑑定会で出たら兼若で入札してみようかな。

刃文

終章となる第六章では新々刀期の加州刀、そして七章では拵の展示があります。パンフにも載っている白澤打刀拵は必見です(雪の結晶模様の鞘も可愛い!!)

最初から最後まで加州刀たっぷり。こんなに一度に加州刀ばかりたくさん見たのは初めてです。加州刀に対する知識が正直あまりなかったので、実はこのためにけっこう予習しました。おかげさまでかなり加州刀に対する知識が深まりました。南北朝期から新々刀期までの加州刀の歴史を体系的に学べる素晴らしい展示だったと思います。ライティングも素晴らしく、刃文がとても綺麗に見えました。

そうそう、刀と一緒に展示されている鎺(はばき)も忘れてはいけませんね。お洒落なデザインですよね、加州鎺。

はばき


なお、予習にはこちらの資料を活用させて頂きました。Twitterのスペースでもお話を聞かせて頂き、本当に勉強になりました…!!


【余談】お昼ごはん食べる場所がない問題

さて、そんなこんなで大加州刀展を満喫してきたわけですが、一つだけ困った問題が…

歴史博物館の周辺、お昼ごはんを食べられる場所がありません(マジで困った)。他の場所でお昼ごはんを食べてから行くのがおすすめです。

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博物館内にはガラス張りの休憩スペースがあり、一応、ここでは飲食が可能となっているようです(パンやカロリーメイトの自販機もありました)

最も近くで食事ができる場所は兼六園の中かな…?兼六園内の池のほとりにある「内橋亭」でお庭を見ながら素麺を頂きました。

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それと、おやつに是非寄りたいのは歴史博物館の目と鼻の先にある県立美術館内にあるカフェです。パティシエの作った本格的なケーキが食べられますよ〜!!人気店なので待ち時間覚悟です。

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石川県立美術館では8月8日まで前田藤四郎、白山藤四郎が展示されているので、せっかく金沢まで来たならこちらも必見です。正宗や郷義弘(名物 北野江)も見られました。更に、本阿弥光徳の刀絵図では骨喰藤四郎や鯰尾藤四郎、一期一振など、たくさんの絵図が見られました…!!


県立歴史博物館と県立美術館を梯子したらそれだけでほぼ丸一日かかってしまいましたが、とても充実した時間を過ごせました✨

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金沢城と前田家ゆかりの尾山神社にも寄りました。尾山神社は神社なのにステンドグラスの嵌め込まれた門がある一風変わった神社でした。歴史博物館→兼六園→金沢城→尾山神社は徒歩で回れる距離です。しかし、この日は本当に暑くて途中で溶けそうでした…


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