さよなら
アパートの上の住人が引っ越しをした。
昨年の春ぐらいに引っ越しをしてきた上の住人は、私達と同年代位のご夫婦2人とその当時新生児だった女の子の3人暮らしの小さなご家族。
アパートということもあり特段何か近所付き合いをした時したわけではないけれど、顔を合わせるタイミングでは笑顔で挨拶をしてくれたりと、なかなか感じの良いご夫婦だった。
最初彼らが越して来たときには、わざわざ私たちに挨拶をして台所用の食器洗剤をくれたのを覚えている。
夫に「几帳面な人だね、今の時代アパートでこういう挨拶をするなんて」と言ったら、「小さい子がいるから下にどういう人が住んでいるか見ておこうっていうのもあると思うよ」と教えてくれた。
「確かにどういう人が住んでいるのか気になるなぁ」と1つ勉強になった。私の夫はどこで学んできたんだろう。
新生児だった子どもはいつの間にか、「あー」とか「うー」とかしゃべるようになったり、手を引かれて歩くようになっていた。子どもの成長は早いとは言うけれども。
一人っ子で親戚にも小さい子どもがいたことのない私にとって、上の部屋の住人達は小さい子どもと一緒に暮らすということを想像させてくれる家族だった。
私は玄関のとても小さなスペースで小さなガーデニングをしている。
お母さんが子どもに「お花が咲いたよ、きれいだね」と見せていてくれるのが嬉しかった。
お父さんも「お花、好きなんですね。いつもきれいに育てているので帰るのが楽しみです。家では庭仕事が得意な人がいないのですごいなと思います」と声をかけてくれた。
きっとその子はまだ小さくてこの花が何なのかなんてわからないだろうけど、その花を見て上の家族が喜んでくれたりする姿がとてもうれしかった。
来年の春には私の実家から株分けしてもらったチューリップが咲く。
私自身もちろんチューリップが咲くことが楽しみだけれど、心の中では上のご家族にも季節を感じて欲しいなと思っていた。
春に咲くチューリップを皆で見れないことがちょっと寂しいけれど、ご家族3人元気に過ごしていて欲しいと思いました。
さよなら、元気でね。