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自分の性格はどのように形作られ固まっていくのか「批判的思考」+20

クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+11,+12,+13,+14,+15,+16,+17,+18,+19

前回は、人は起こった出来事を自分の都合で解釈する傾向があると説明しました。今回は、自分のアイディンティティを構築する上で、自己都合がどのように影響するのかを考えていきます。

ぼくは誠実な人間だ!というスキーマ

たとえば、人は誰しも「自分はこんな人間だ」とラベルづけしていますよね。そのラベルが事実なのか理想かは置いておいても、いくつかのスキーマを持っているはずです。

おさらいとしてスキーマについて説明しておくと、複雑で理解し難い情報を単純化して意味づけしてくれる概念のことです。

お医者さん

この男性が医者だと予想できるのは、白衣を着てカルテを持っている人は医者、というスキーマが形成されているからです。

ぼくたちはいくつものスキーマを通して思考しており、他人だけでなく自分へのスキーマも数多く存在しています。

たとえば、「誠実」をアイディンティティにしているAくんがいるとしましょう。つまりAくんは、自分のなかに「誠実」というスキーマがあると考えているのです。

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誠実を因数分解して、以上のような要素に分けました。Aくんは、自分を約束を守り親切で、根気強く物事を進められる人間だと思っているのです。事実かは置いておいても、すばらしい性格ですね。

自己スキーマの集合体=自己概念

実際にはAくんの持っているスキーマは「誠実」だけではなく、他にもたくさんあります。このような自己のスキーマを1つまとめた総称が、「自己概念」なのです。

自己概念とは要するに、「自分とはこういう人だと思う」であり、これらは複数のスキーマが混ざりあって誕生します。

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この自己概念があるから、行動に一貫性が生まれ、個性的な人間になっていくのです。逆に言ってしまえば、自己概念が崩れると自分のアイディンティティが失われます。自分の基盤が壊れるわけですから一大事です。

たとえば自分を誠実だと思っているAくんが、Bくんに「Aくんっていつも不誠実だよね」と言われたら、自分のアイディンティティが危険にさらされてしまいます。ここで登場するのが、前回お話した自己奉仕バイアスです。つまり自分のアイデンティを守るために、自分の都合の良い解釈をするのです。

もし実際にAくんがBくんに、約束を破っても謝らないような不誠実な態度を取っていたとしましょう。しかしAくんには、自己スキーマに「誠実」がありますから、スキーマ特有の性質が動き出します。

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スキーマの働きとして、スキーマに一致する情報のみに注目しやすく、一致しない情報を歪ませる傾向があります。このように、自己概念を守るための解釈を行うのです。

自己概念が修正されない理由

複数のスキーマが自己概念を作っており、自己概念は自分にとって重要度が高いので、自己概念を修正するのはカンタンではありません。

「ぼくは小心者だからさ!」と大事な行動を後回しにする人は、それが自分のアイデンティティだと考えているので、よっぼどの変化がなければ行動は変えられないのです。お年寄りに頑固な人が多いのも、自己概念のスキーマが強くなりすぎているからだと考えられます。

いままで積み上げてきた自信が崩れるのはだれでも怖いものです。だからこそ自分にマイナスな情報はプラスに歪ませ、プラスな情報は過大評価してしまうのです。

自己奉仕バイアスは、物事を自分の都合よく考える思い込みであり、自分の性格を都合よく考える思い込みでもあるのです。だからこそ日頃からクリティカルな思考を心がけなければ、まちがった原因帰属を行ってしまう危険があるわけです。

まとめ

自己奉仕バイアスは、いろんなところで使われる思い込みの1つです。自分の都合の良い解釈をするのがダメなわけではありませんが、客観性の必要な場面で自分を見失うのが問題なのです。

【考えてみよう】
自分が大事にしているスキーマを1つ挙げて、そのスキーマのメリット・デメリットを考えてみよう。両方の側面を確認しつつ、そのスキーマをどのように改善するのがよいだろうか。

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自分の性格を否定させるとこんな考え方をしていませんか「批判的思考」+20


読んでいただきありがとうございます。これからも読んでもらえるとうれしいです。