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アフタヌーン・ティー

(これが「ティー」か……煎じ薬みたいだな)

テーブルの並ぶ喫茶室。黒髪の青年は、ティーカップを手にして香りを嗅ぐ。いい香りだ。葡萄酒や麦酒より刺激は少ないが、酔っ払うことはなさそうだ。毒味をする前に、周囲を見回す。

「こりゃ何だ?」
「ああ……角砂糖だよ。シュガー。甘い粉末状のものを固めてある。紅茶の中に入れて、溶かして、かき混ぜて飲む」
「へえ……すげェな。イスパニアのカリフはともかく、フランクの王様の食卓にもなかなかねェぞ。たぶん」

金髪で傷顔の男が、白くて四角いものを摘んで感心している。砂糖、シュガー。聞いたこともない。説明している黒髪の男は、顔が少々のっぺりしている以外に特徴もないが……頭の後ろに何か動物の仮面をつけている。なるほど、テーブルの上には、その白くて四角いものが入った小瓶がある。ひとつ摘み出し、ぽちゃんと入れる。

「ほほう。もっと詳しく話を聞きたいのう」
ティーカップを手にした白衣で初老の男が、黒髪で目付きの悪い男の言葉を聞いて目を輝かせる。だが、相手は黙り込んでしまう。
「ああ、喋りたくないなら体に聞こうかのォ。なァに、サイボーグなぞワシの得意分野じゃよ」
白衣の男は紅茶を一気に飲み干し、指をわきわきと動かす。黒髪で目付きの悪い男は眉を顰める。

「……なんでこんなとこで、異国の茶なんざ飲まなきゃならねえんだ。めんどくせぇ」

傷顔の侍が、ティーカップを湯呑みのように持ってすする。時刻は昼下がり。妙な連中、異国人、狐の面を被ったガキ。この場に集められた者たちには、何の共通点も見いだせない。

【続かない】

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