人が死なないと思う

アフタヌーン・ティー

アフタヌーン・ティー

(これが「ティー」か……煎じ薬みたいだな) テーブルの並ぶ喫茶室。黒髪の青年は、ティーカップを手にして香りを嗅ぐ。いい香りだ。葡萄酒や麦酒より刺激は少ないが、酔っ払うことはなさそうだ。毒味をする前に、周囲を見回す。 「こりゃ何だ?」 「ああ……角砂糖だよ。シュガー。甘い粉末状のものを固めてある。紅茶の中に入れて、溶かして、かき混ぜて飲む」 「へえ……すげェな。イスパニアのカリフはともかく、フランクの王様の食卓にもなかなかねェぞ。たぶん」 金髪で傷顔の男が、白くて四角いも

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眠れる彼女の夢の中

眠れる彼女の夢の中

教室の窓から空を眺め、空想に耽る彼女の横顔に、幾度も見惚れてきた。 彼女は、僕の恋人でもなく、幼馴染でもない。ただのクラスメートだ。机の位置が二つ挟んで後ろにあるだけ。会話を交わすことも、ないではない。クラスメートなんだから。でも、彼女の幼馴染で恋人は、別にちゃんといる。 いや、いた。この間、いなくなったのだ。 「神隠し、っつうのかなあ……ふっと蒸発したんだってサ」 「はァ。気体になって消え去ったわけェ?」 「なわけあるかよ。書き置きひとつなく、姿を消したってだけだよ」

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