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【絶鬼パロ】人情紙塚山バブーン・レイプ・パーティー

<前回

島の北西部、鎌石村の西のはずれの道。赤い空の下、チンピラ吸血鬼『ヤン・バレンタイン』と、トンファーを構えた黒髪の少年『雲雀恭弥』が睨み合う。雲雀の背後でハラハラしているのは、ヤンに襲われていた少女『犬山まな』。

ヒーロー然として現れ、颯爽とまなを救出した雲雀であるが、彼はまなのことなど眼中にない。これが「鬼ごっこ」だと聞いた途端、彼は「自分が鬼となって他の全員を咬み殺す(ブチのめす)」ゲームだと勝手に理解した。何を言っているか分からないと思うが、これが彼の通常運転だ。なお、彼は鬼ではなくの役だ。そして彼は、強い者との戦いを好む。目の前の男は、それなりに強そうだ。楽しませてもらおう。そう思っている。

対するヤンは、目の前の『鬼』の少年が、自分の獲物である少女を横取りしたことに憤慨していた。せっかく愉しんでやろうと思い、後でこいつにも愉しませてやると親切にも告げてやったのに、なんてことをするのか。見たところ自分より年下の、東洋人のガキだ。ちょっとケンカが強いからって調子に乗りたいお年頃、って感じだ。殺さないまでも、社会の先輩として教育的指導をしてやらねば気が済まない。然る後にそこの少女をじっくりねっとり味わわせてもらおう。同じ鬼を殺して数が減れば、なんだかんだで自分が生き返れる確率は減る。チンピラなりに、そこらへんはわきまえてはいるのだ。

まなは……この少年が鬼だろうとなんだろうと、この場を一緒に逃げようと思っている。相手の男が持っていた物騒な銃はどこかへ飛んでいったが、なにしろ鬼、吸血鬼だ。奴の口の中に牙が並んでいるのをこの目で見た。少年はかなり強いようだが、あの男に勝てるかどうかは分からない。血を吸われたら、ひょっとして、吸血鬼にされるのかも。だが、どうする。自分は無力な少女で、武器もない。この戦いに割り込んで止めることは出来ない。あの銃を拾うか。いや、逆に狙われる。少年を引っ張るか。いや、足手まといになって、敵の攻撃を浴びさせてしまう。少年の言う通り、自分だけで逃げるか。それもどうか。

「おらおらおらァ!」

ヤンが仕掛ける。蹴り、貫手、回し蹴り。雲雀は敵の攻撃をトンファーで防ぎつつ、2つの機関銃が落ちた場所から引き離す。なかなか素早く、膂力もあるが、特筆するほどのことはない。期待はずれか、何か隠し持っているか。

「ヒャハァ! お嬢ちゃんをかばうってかァ、お優しいお坊ちゃんよォ!」
「知らないね」

雲雀が身を躱し、仕掛ける。立ち竦んでいるまなのガードがガラ空きになり、ヤンが面食らう。

このイカれたガキは、このメスガキのことはどうでもいいらしい。めんどくせえから彼女を攫って逃げちまうか。それもシャクだ。あるいはこれが罠で、少女を狙ったところをガツン!とやる気か。あり得るが、いや、マジで見捨ててるのかも。さっきから理解できない言動をするし、強いことは強いが、強さ自体は人間の域を出るものではない。特殊な術とかも使ってこない。本当に鬼か、こいつは? ただのイカれたガキなのでは?

「うおッ!?」

油断した隙に、顎の先数ミリの空間をトンファーが掠めた。冷や汗。少なくとも、下っ端吸血鬼の自分が油断できない程度には強い。老いぼれ執事や新米ドラキュリーナの不意を打つ程度には素早い自分だが、兄ルークほどに戦闘訓練を積んできたわけではない。ま、トンファーで多少殴られても死にはすまい。ムカつくが一発ガツンと食らわせて、そこの銃と少女を回収して逃げちまおう。その後で本部に「鬼を攻撃する鬼っぽいガキがいる」と報告を――――

瞬間、ヤンの背後から怪物が飛びかかった。

「ホギョアアアアアッッ!!!」

「なあァッ!?」
丸太のような両腕が振り下ろされ、ヤンは辛うじて回避! バギッと破砕音が響き、樹木が両断される!

「なッ、なんだ、こいつはァァッ!?」

巨大なゴリラじみた類人猿。そうとしか言いようがないモノ。それは激しい怒りと共に咆哮し、牙を剥く!

鬼。鬼(オウガ)だ、どこからどう見ても。少なくとも子ではなかろうし、絶対に人間ではない。身長2メートル超の怪物が、殺気を剥き出しにして襲い掛かって来る。あのクソガキもいる。この場は……撤退!

恐怖したヤンは即座に状況判断し、草むらから目ざとく自分の銃2挺を回収すると、脇目も振らず逃げ去った。

大猿は追おうとするが……機関銃2挺を持つ鬼には少し躊躇したか、足を止める。ひとまず『子』を二人、あの鬼から救出できた。背後を振り向く。怯える少女と、平然としている黒髪の少年。その背後から、先程出会った少女が姿を現す。

<前回

「ええと……ひょっとして、お友達になりたいの、かな?かな?」

少し前。島の西側、菅原神社の境内。
少女『竜宮レナ』は、突如現れた謎の大型類人猿『夜叉猿Jr.』から花を差し出され、困惑していた。敵意がないことを示したい、のだろう。では、鬼ではないのか。その大猿はこっくりと頷き、歯を剥き出して笑った。言葉は話せなくても、人語はある程度通じるようだ。この大猿が仲間になれば、心強いとは言える。

「鬼じゃないなら、親か子、ってことだよね。ええと、そこのパラシュートは、あなたが降りる時に使ったの?」

境内の樹木に引っかかっていたパラシュートを指差し、尋ねる。大猿は頷き、近くの草むらからデイパックを取り出した。了解を得て中を少し調べると、内ポケットに書いてあった『』のルールを発見する。重要な情報だ。
そして―――この大猿はやはり、親で間違いない。

「友好関係が築けたのはいいけど、これからどうしようか……とにかく、他の親や子と合流するしかないよね。大猿さんが鬼じゃないってことは、私が証言する。安心して。でも、いきなり人前に現れるのはびっくりするだろうなあ……」

親や子を探し、鬼から守って逃がす。ひとまずの目標はそれだ。親と子の勝利条件が違うのは気になるが、親と子が両方助かるような方法もあるはずだ。あるようにせねばならない。人が集まるような場所。自分ならどうする。まずは民家に入る。人がいるとは思えないが、有用な道具を探すことは出来よう。

「よし、それじゃあ近くの集落に行ってみよう。ここからだと――――」

「ハァ、ハァ……。よかった、人助けが出来たんだね」

突然、大猿に抱えられて森を飛び渡り、レナは元いた鎌石村に到着していた。菅原神社からすぐ南には平瀬村があったが、大猿は独特の感覚で何事かを――おそらく鬼の闘気を察知し、全力でこっちへ飛んできたのだ。レナは鬼との戦闘前に近くの茂みに降ろされ、鬼が逃げ去ったと見るや姿を見せた、というわけだ。そこにいたのは中学生ぐらいの少女と、やや年上に見える黒髪の少年。少年の手にはトンファーがある。彼が少女をかばっていたのだろう。

「へえ……」
少年は、大猿を見ると―――好戦的な表情を浮かべ、トンファーを構えた。鬼の男には逃げられたが、この大猿もそれなりに強そうだ。大猿も闘気を察知し、牙を剥いて唸る。鬼か、子か。鬼であれば、この場で始末せねばならない。二人の少女を守護らねば。

「「ちょ、ちょっと、ストップ!!」」

二人の少女が同時に動き、少年と大猿の間に割り込んで両掌を翳す。少年と大猿は闘(や)る気をそがれ、構えを解く。
「わ、私は『竜宮レナ』。たぶん『子』の役だよ。この大猿さんは『親』で、『鬼』じゃない。私が保証する。あなたたちは?」
「……い、犬山まな、です」
「……雲雀恭弥」

「クソが……! こうなりゃ、こっちも徒党を組むしかねェな……。あと23時間もあンだ。あのメスガキはきっちりファックして、クソガキとバカ猿は必ずブチのめしてやるぜ!」

村の南、高原池の近く。ヤンは毒づきながら森の中を進む。主催者本部「神塚山」へ向かって。

【D-04/00時50分】
【ヤン・バレンタイン@HELLSING】
[役]:鬼
[状態]:健康、激昂
[装備]:FN P90 短機関銃 2挺 サプレッサー&スコープつき(弾丸を多少消費)
[道具]:四次元っぽい紙袋(不明支給品3つ、確認済み)
[思考・行動]
基本方針:殺し、犯し、食らう
1:トンファー使いの少年と大猿を「鬼を襲う狂った鬼」と認識。一旦撤退し、本部や他の鬼へ連絡に行く。
※その他
生きている人間の血を吸って殺すと、知能のないゾンビのような食屍鬼(グール)に変えてしまう。

自己紹介を済ませ、三人と一匹は海沿いの民家に移動し、情報共有してこれからの方針を話し合う。雲雀は「群れる気はない」と立ち去りかけたが、まなが必死で頼み込み、なんとか引きずってきた。大猿は話せないし、雲雀はそっぽを向いていて会話するつもりがない。必然的にレナとまなのブリーフィングになる。互いに女子中学生。少しレナが年上だが、「タメ口でいいよ」と言われたので、まなはそうした。

「あの鬼が復讐に来る確率は高いね。必要なものを回収したら、急いでこの場を離れよう」
「そうだね。固まっていた方がいいとは思うんだけど……」

雲雀は自分で『鬼』だと名乗ったが、少なくともこの少女たちを殺そうとするような存在ではない。少女たちも大猿も、それを察している。警戒はするが、そういう鬼もいるのだろう。

だが、あの鬼は、必ず戻って来る。雲雀や大猿のことを鬼側へ触れ回り、討伐に来るかも知れない。強者との戦いを求める雲雀には願ったりだが、大猿はともかく少女たちにはたまったものではない。とは言え、雲雀をここへ置いて逃げるわけにもいくまい。どうするか―――――

「とりあえず、私と大猿さんがいた『菅原神社』周辺には、鬼はいないみたい。あっちの、山の中だね」
「そこから、この村とは逆方向へ移動すれば……」

―――下級の鬼にも匹敵する戦力と、信頼できる仲間に巡り遇え、順風満帆に見える一行であるが……。ここらで思い起こして頂きたい。竜宮レナが、あの「雛見沢症候群」に感染していることを。

【チーム・竜犬猿鳥】
【C-02/00時50分】
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[役]:子
[状態]:健康(雛見沢症候群に感染、無自覚)
[装備]:
[道具]:お守り
[思考・行動]
基本方針:帰還する。子や親と合流し、共に脱出を目指す。鬼からは逃げる。
1:民家から必要な物資を回収し、すみやかにこの場を離れる。菅原神社へ向かう。
※その他
制限時間と親のルールを把握。各役の人数・会場の地図は未把握。自分の役を子であると推測。
雲雀を鬼だと思っているが、敵対する気がないなら仲間だと信じる。
雛見沢症候群は空気経由や皮膚・粘膜・体液との接触で感染し、疑心暗鬼などを契機に発症する。
【犬山まな@ゲゲゲの鬼太郎(6期)】
[役]:子
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:スマホ(自分の)、支給品(未確認)
[思考・行動]
基本方針:生還する。子や親と合流し、協力する。鬼からは逃げる。
1:民家から必要な物資を回収し、すみやかにこの場を離れる。菅原神社へ向かう。
※その他
制限時間と親のルールを把握。各役の人数・会場の地図は未把握。自分の役を子であると推測。
雲雀を鬼だと思っているが、敵対する気がないなら仲間だと信じる。
【夜叉猿Jr.@刃牙シリーズ】
[役]:親
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:デイパック(支給品2つ)
[思考・行動]
基本方針:鬼は殺す。子を守護る。
1:この三人を守護る。鬼らしき少年(雲雀)には警戒する。
※その他
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。鬼ではないと自認。
人語は多少解するが話せないし、文字の読み書きも出来ない。ノンバーバル・コミュニケーションは可能。
そう言えば雛見沢村は岐阜と富山の境あたり(飛騨地方)らしいのでレナとは同郷な気がする。
【雲雀恭弥@家庭教師ヒットマンREBORN!】
[役]:子
[状態]:健康
[装備]:雲雀のトンファー@家庭教師ヒットマンREBORN!、雲のボンゴレリング@家庭教師ヒットマンREBORN!
[道具]:
[思考・行動]
基本方針:親、子、鬼を咬み殺す。他者とは群れない。
1:強者と戦う。鬼が来るなら好都合。
※その他
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。自分の役を鬼だと誤解している。
そもそも把握したところでルールに従って行動する気がない自由過ぎる男。

あけましておめでとう。ヤンなのでマリソンだが、少々タイトルに差し障りがあるのでTweetしない(また凍結されたら困る)。note運営が不道徳だとか文句つけて来たらマリリン・マンソンに言えと答える。

前回までの二つの話をクロスさせてみた。まなは鬼太郎と縁があるので、吸血鬼および鬼っぽい少年を絡ませてみたが、雲雀が自由過ぎて鬼にまで混乱を撒き散らしている。やつとヤンが戦ったらどっちが勝つか? やや興味深いが、ヤンが勝つと危険なので夜叉猿Jr.を乱入させ追い払わせた。

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