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ムーミンが生まれた場所。映画『TOVE トーベ』フィンランド・スウェーデン、2020年


日本ではアニメにもなったムーミン。原作者は、トーベ・ヤンソンというフィンランドの女性です。1914年生まれで、2001年に亡くなっています。和暦でいうと大正3年生まれなのに、古い人だと感じないのがすごいですね。

私は、何かのドキュメンタリー番組で、無人島で一人暮らしして、電気や水道がないので、小舟自分で漕いで、水と薪を食料を買いに行くトーベ・ヤンソンを見たことがあったので、そういう気難しい芸術家を予想していたのですが、この映画は若い時代のヘルシンキ生活が中心でした。

具体的にいうと、第二次世界大戦の終わり頃から、戦後の売れない時代のトーベ・ヤンソンの創作への焦燥と、父親との葛藤、男性上位の芸術界での苦労などなど。こういうのって、どこの国でもどの時代でもあるんだなあと。まあ、第二次大戦後なら、今よりずっときつかったと思いますが。

そんな中でも、社会の規範に縛られず(結婚を望まず)既婚男性と恋愛したり、当時の法律では違法になるのに女性と愛し合ったりするトーベ。でも、彼女の自由への葛藤よりも、恋人の自由さのほうが上だった(=浮気されほうだい)で辛い思いをします。

ムーミンの絵と小説を描き、風刺漫画も描き、油絵も描き、小説も書く。トーベは多方面に才能があったけれど、英語の新聞にムーミンを連載するまではお金にそれほど余裕がなかったなんて初めて知りました。

自分の中の創造性と世の中の価値観にズレがあると、芸術家は生活できなくて苦しいですが、トーベ・ヤンソンの場合、彼女の生きているうちに、しかも若くて前途があるうちに花開いて、本当によかったとこの映画を見て思います。亡くなってから有名になったり、売れたりするんじゃ、あんまりですから。

でも、できれば映画でも無人島ぐらしを見たかったなあと思います。これは、制作費とか撮影の難しさがあったかもしれませんが。


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