【ことば記録帖】 コピーライターの心に残ったことばたち #1
株式会社エクシングのコピーディレクター、高沼です。
多くのひとのコミュニケーションを支える、ことば。
特に現代はSNSなどを中心に、さまざまな表現が生まれては消えています。
百年先に残る名言でなければ、辞書に載る単語でもないかもしれない。
けれど、心を動かしてくれたことばたちを採集しておきたい。
そんな想いで、今日から不定期で始めるこの連載。
“ことばの記録帖”と題して、ジャンルを問わず、さいきん心に残ったフレーズをご紹介していきたいと思います。
※先に書いてしまうと今回の目玉は『オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム』の話です。
もし「その部分だけ読みたい!」という方がいらっしゃったら、目次の「3」からどうぞ!
📔 1. “家でゴロゴロ”をポジティブに言い換えるなら?
突然ですが、質問です。
「休日に家でゴロゴロする」ことをポジティブに言い換えるとしたら、なんと表現しますか?
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Xで目にした瞬間、思わずスクロールする手を止めてしまったことばが……
なんとも新鮮な響きです。
▼ Xで見かけた投稿がこちら
(「おうち入院」と名付けたのは掲載させていただいたアカウントとは別の方のようです)
“おうち”と“入院”。
物理的にも印象的にも真逆のことばを組み合わせたことで生じる、良い意味での違和感。
ことばの定義を読むと「家で好きなことをしながら、健康的な食事を摂ってゆっくり休む」ことを指すようで、言ってしまえば「家でゴロゴロする」とかなり近い気もします。
けれど、「おうち入院」と表現された途端に、自らの心身を整えるための高尚かつ尊い行為に思えてくる。
“入院”という単語に元来備わる“強制”感も、いい味を出しています。
決して怠惰に過ごしたのではなく、必要に駆られて「自らのコンディションをケアしていた」雰囲気が漂っていませんか?
ネガティブに捉えられてきた物事を、ことば一つでポジティブにする。
まさにネーミングの力であり、それがいかんなく発揮された例だと感じます。
📔 2. “ふつう”の概念を考えさせられるフレーズ
当社には、デザインカンプ(完成見本)を作るために紙を切り貼りしたり、出来上がった制作物をチェックしたりするための作業台があります。
定規やカッターなど、スタッフが共用で使うさまざまな道具が並んでいます。
で、作業台に置かれたウェットティッシュに書いてあった、このフレーズ。
目にした瞬間、つい考えてしまいました。
ーー“ふつう”とは、何か。
個性がもてはやされる社会のなかで、“ふつう”のレッテルを貼られたウェットティッシュ。
「オレってそんなにふつうかな…」と、落ち込むウェットティッシュ。
「そんなことない! すごく個性的だよ!」と、励ます私。
仕事を忘れて、そんな光景まで想像してしまいました。
ま、実際はなぜこのフレーズが書かれたかというと、液晶用クリーナーの容器に、いわゆる“ふつう”の(=液晶用ではない)ウェットティッシュが詰め替えられていたからなんですけどね。
……「ふつう」のオチで、ごめんなさい。
📔 3. オードリー若林さんが東京ドームで口にしたひとこと
何を隠そうリトルトゥースな私。
(わからない方はスルーしてください…)
2月18日に開催された『オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム』に夫と行ってきました☝️
東京ドームを埋め尽くした5万3千人に加え、映画館でのライブビューイングや生配信も含めると、延べ約16万人が見届けたとのこと。(すごすぎる…)
ライブのことだけをテーマに記事を書くことも考えたのですが、東京ドームに立つオードリーのお二人がとにかく面白くて、バカバカしくて、カッコ良くて…
今はどんなことばにしても、野暮になりそうなのでやめておきます。
(もうすこし落ち着いたら書くかもしれないし、書かないかもしれません)
代わりと言ってはなんですが、オードリー若林さんがライブ終盤で発したこの言葉を書き留めておきたいと思います。
ライブへ行くには、時間もお金もかかります。地方に住んでいる方なら、交通費や宿泊代も。社会人なら休みも必要です。学生なら周りの大人に許可ももらわなくてはならない。お子さんがいる方は誰かに預けたり、同行させるための段取りもいるでしょう。体調面や仕事・学校・家庭の事情などで足を運ぶのが大変な方もいるかもしれない。
5万3千人がそれぞれの世界でそれぞれの“何かしら”を抱えながら、この東京ドームに集まった。(※配信も含めたら、16万人!)
そのことを心から理解しているからこそ、「この記憶を糧に明日からも頑張ろう」を「お守り」と言い換えてくれたのではないか、と思いました。
ことばは、つくづく視点であると考えさせられます。
「どう表現するか(HOW)」も重要だけれど、根底は「何をいうか(WHAT)」。
その人が持つ目線からしか、ことばは出てこない。
どんなに美しい表現や面白い言い回しで飾ろうとも、本質が捉えられていなければ、見る人が見たら中身はスカスカだとわかります。
まるで、衣だけをたっぷりまとった揚げ物のように。
漫才やバラエティ番組でのツッコミはもちろん、エッセイや「note」の連載*、ラップなどでも、若林さんの生き様がそのまま形になったような鋭い言語感覚にはいつもハッとさせられます。
(*若林さんのnoteは閲覧専用個人アカウントで購読しています。このアカウントは一応会社のものですので…)
かつては思っていました。
繊細って、マイナスだなって。
損してばっかりじゃんって。
こんなに生きづらいなら、鈍感にしてほしいと神様に願ったこともありました。(とか言っちゃって鈍感な面も多々ありますけど…)
なんなら今も、たまに思います。
でも若林さんの姿を見ていると、(その才能にはほど遠いですが)ささいなことに気づく視点を持っているからこそ、紡ぎ出せることばや人に与えられる喜びもあるのではと感じさせられます。
日々色々ありますが、でっかいお守りをもらったので、心の中で握りしめて頑張りたいです!
これからも、毎週土曜の深夜1時を何よりもの楽しみに。
おまけ?
▼ 都営大江戸線 春日駅に掲出された転職サイト『type』の広告。
駅名にちなんで春日さんだらけです。(同駅限定ポスター)
▼ ドーム入場時に配られた『サトゥーのごはん』。
もったいなくて開けられません…。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!