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採用・人事領域における「言語化」「定量化」の重要性

今年の4月からフリーランスに転身した私が、これまでの経験を何かの形に残したいと思い、パワーポイントにまとめました。

サービス立ち上げ当初は片手で数えられる程度だったメンバー数が、退職をする頃には500名の大所帯へ成長していました。組織が膨張していく過程で発生したさまざまな”壁”をどう超えるべきか?最も間近で見てきた私が、考え抜いてきた「軌跡」をnoteに残したいと思います。もちろん、このnoteは決して完成形ではありません。あくまで途中経過報告です。具体的な問題に対する「解法」を記したものではありません。真新しい「理論」を述べたものでもありません。「組織」に、「人事」に、携わるかたに、知っておいてほしい「思想」を私自身が咀嚼したものになります。これを読んでくれたかたがひとつでも何かの「ヒント」を得られますように。

とりとめもなく語っています。

①人事セクションの役割とはなにか?

人事戦略の目的は、「組織のビジョン達成の戦略を実現するためのリソースの最大化」にあります。この「リソース」とは、労働力をさすだけではなく、ヒト・モノ・カネ・情報・時間といった経営リソース全体を意味します。

当たり前ではありますが、企業の行動原理は「経営理念」に基づいたものであり、「ビジョン」と「ミッション」の実現と達成、そして実現と達成をするための「持続性」「継続性」が求められます。もっといってしまえば、その「ビジョン」と「ミッション」は社会からの「要請」であるべきで、社会から求められ続けることが企業の存続に必要不可欠なのです。

冒頭に戻ります。社会から求められ続ける企業であるために、組織のポテンシャルを「グッドサイクル」で保ち続けること。「ビジョン」と「ミッション」の実現と達成をするためのリソースを最大化させること。これが人事戦略、いや、バックオフィス領域の「役割」なのです。

グッドサイクルとは何をさすのか?それを私は「ESサイクル」と考えています。私たちは、どこまでいっても「人と人」との関係性のなかで生きています。サービスの提供先には必ずユーザーが存在しますし、サービスを提供するためには必ず一緒に働くメンバーが存在します。だからこそ、企業の基盤である「働き手」の満足と成功が、良い循環を回転させるための起点だと考えています。

働き手の成功と満足といっても、「みなの不平不満を享受し対策を講ずる」ことが、組織にとって良いとは一概には言えません。あくまで、「ビジョン」と「ミッション」の実現と達成をする、が主目的にあります。もっと現場レベルに落とし込むと、「成果」を出す、ことにつながるんですね。「利益追従」という言葉を耳にすると引いてしまうかたがいらっしゃるかもしれません。しかし、企業・組織の存続には「運用金」、有事に備えた「備蓄金」、そして、新たな挑戦をするための「投資金」が必要になります。確かに「利益だけ」を追求する姿は正しくないでしょう。ですが、必要な資金を求めることは悪ではありません。だから、「成果」を求めることが組織には必要なのです。

「心理的安全性」の確保、というのは人事領域ではよく語られる言葉です。しかし、この言葉に惑わされてはいけません。単純に「チームで仲良しこよしをしましょう」という概念ではないのです。少し長い引用になってしまいますが、下記の記事が大変参考になると思います。

エドモンドソン先生は、心理的安全とは、「このチームで、もしリスクをとったとしても、対人関係上(亀裂や破壊がおこらない)であろう」という(チームに)共有された信念」としています。
  
ここで重要なことは、「心理的安全」という概念が「リスクをとること」と隣り合わせの概念であること。そして、その「リスクテイキング」によって「チームのなかに対人関係上の亀裂」ーすなわち「他者から刺されたり「他者からやられたりすること」が起こらないといったことに起因した概念であるということです。
  
つまりね・・・
  
心理的安全とは「ぬるま湯」でもなければ、単なる「関係の質」を高めることではない。関係の質を高めて、みんなが仲良くチーパッパする「関係の質牧場をつくりましょうよ」的な概念ではないのです。
心理的安全とは「リスクをとること」「チームの他のメンバーから刺されないこと」といったコンテキストに存在する、ハードな概念であるということです。

引用元:「心理的安全バブル」にご注意を!! : 心理的安全とは「チームで仲良くぬるま湯につかること」ではない! 

②成果をどうはかるか?バリューチェーンを意識したデータの定量化が肝

上記の図は、人事領域の仕事をいくつかの分類にプロットしたものです。組織規模が大きくなればなるほど、部門化(セクション化)していきます。そこで、重要になってくるのが「データ」の取り扱いになってきます。これはどの業務分野でもいえることですが、「定量化」は組織においてとても重要な指標になります。特に人事領域は、「定量化がしづらい、できない」と語られることが多いですが、そんなことはありません。

データとして残すべきは「採用」~「退職」まで、一貫した流れです。下記の図は、そのとりうるデータのポイントをまとめました。黒枠で囲っているものは忘れがちな指標を示しています。

採用分野をもとに、考えてみましょう。

まずは「採用費用」を書き出します。ポイントは「目に見えていない」領域をしっかりと意識することです。例えば人件費。

ちょっと面倒ではありますが、労働リソースも金額に落とし込めます。そして、その業務にどのくらいのリソースを投下しているのか?つまり、「労働生産性」の数値を考えます。

図式に表してみるとこんな感じ。ポイントは採用の「成果」は、採用をした時点では測れません。そう、採用後の「活躍」がポイントなのです。

日本の平均採用コストをもとに、離職した場合のロストする費用をグラフに表現してみました。つまり、1人当たりの採用単価が離職率があがるごとに上昇しているんですね。

企業にとって、「離職」はとんでもない痛手です。私は「実質採用CPA」という概念を取り入れ、採用の成果をこの数値をひとつ改善すべき数値に設定しました。

前述の表にも記載していますが、労働生産性を向上させるポイントは、その変数をしっかりと炙り出すことです。再掲。

ほかにもこんな感じで数字化してみると面白い事実に気がつきます。こちらはあくまで一例なので、自社の基準にあわせて考えてみましょう。

③優秀な人材とはなにか?その定義から始めよう

以前、「5年かけて構築した採用手法が最適最短であることが実は科学的に立証されていた」というnoteにも書きましたが、私に最初に与えられたミッションは「優秀な人材の獲得」でした。しかし、「優秀」という言葉のあいまいさに悩み、一体どんな人材を採用すればいいのか、悩みに悩みました。そこで、「優秀さ」の定量化に挑んでみようと思い至ったのです。詳細はリンク元の記事をお目通しいただければ幸いです。

まずは、人材を構成する「能力」を分解してみました。ここで重要なのは、「優秀」といいながらも、人材の「優劣」をつけることが目的ではありません。あくまで、「自社に必要な人材の姿」を模索するための活動であることを忘れないでください。

新卒採用なのか中途採用なのかにもよると思いますが、人間が元来持っているもので変えられないもの(ビジョン・ポテンシャル・スタンス)が、採用時に自社のカルチャーとフィットするかどうか?というのは非常に重要なポイントでしょう。

私が当時、重要視していたのは「ビジネススタンス」と「コンピテンシー」でした。なぜかというと、新卒採用をするほど会社の体力がないため、中途採用が主体だったからです。一定の「仕事の仕方」を経験をしている人材を相手に採用活動をする場合は、育成を基準にするよりも、すでに本人が培ってきた「スタンス」と「コンピテンシー」が自社にマッチしているかいなかを見極めるほうが効率が良かったのです。

さて、このコンピテンシーをどう言語化するのか?

なんだかたくさんあって、これを咀嚼するだけでも時間がかかりそうです(笑)

ここでもデータ化が肝になりました。行動特性を測定できるツールは世の中にたくさんあります。そう、出発点は「収集」です。まずは既存の枠のなかでデータを収集し、それを眺めてみます。そのデータを「成果」と結びつけることで、コンピテンシーの輪郭が見えてきます。その輪郭を整理しながら、自社のカルチャーとして根付かせるために「再言語化」をします。同じようなことを主張していても、言葉によって得られる印象が異なりますよね。だから、自社にフィットした「表現」を探ることも重要なポイントです。

単純構造化するとこの3ステップになります。

④組織は「成長」する 必要とするリソースも「変化」する

これは人事に関わらず、どの領域でも重要なポイントだと思いますが、「仕事」に終わりはありません。「完璧」はありません。組織にも同じことが言えます。常に、組織は「成長」をします。同時に、目の前に立ちはだかる「壁」が大きくなっていきます。それは、戦う術の変化を求められることと同義です。

グレイナーの成長5段階は有名ですが、なかなか腹落ちさせて理解することは難しいかもしれません。なぜなら、組織状態は俯瞰をしなければその輪郭は捉えられないからです。何事も「渦中」にいるときは、物事の「対象化」が難しくなるもの。なので、「組織」を「個人」に軸をズラして考えてみてはいかがでしょうか。

組織から求められるミッションに応じて、求められるスキルが変化します。そのミッションを5段階に分断したのが上記の図です。仕事の主体軸、成果の範囲、成長の障壁にそれぞれ違いがあるのが理解いただけると思います。ぜひ、自分自身のこれまでの社会人生活を思い返してみてください。何かしら共感するポイントがあるのではないかと思います。

これは、採用の現場でも役立てられますし、人事評価においても重要な役割を果たします。人の能力を最大限に発揮させるためには、自分自身にどのような役割を求められているのかを、求める相手と求められる相手がお互いに誤謬なく意思疎通できている必要があります。

もう少し成長について考えてみます。成長とは「高さ」「幅」「奥行」で構成されているものと私は捉えています。

この「成長項目」は画一的なものではありません。自分自身が探っていくものと考えます。企業であれば、組織の「成長点」をどこに設定するのか言語化する必要があるでしょう。

そして、何事も「バランス」が重要です。冒頭のRPGスライドにも記載されていた通り、ラスボス相手に「勇者」5人で挑むのは無謀……(笑)組織のコンディションやフェーズに応じて、必要とされる人材タイプは異なります。それを推し量るためにも、組織のコンディションを定量化するための指標が重要ですね。採用の現場であれば、採用すべき人材像のアップデートですし、運用の現場であれば、育成すべき人材像のアップデートにつながります。

そして、どんな組織においてもメンバーの「組織への貢献度」にはグラデーションがあります。重要なのは、いま自分たちがどの「層」に向けて、メッセージングをしているのか、施策をうっているのか。どの「層」の声をひろっているのか。これを意識しないと、ボイスパワーにひっぱられ、本来組織がとるべき姿を見失ってしまいます。

⑤「壁」にぶつかったら 「●●っぱなし」にしない

現場にありがちなことですが、「他社導入してたから」「思いついたから」「なんとなく」で目標を策定したり、施策を決定したりすることがあると思います。何かを始めるときは、必ず一歩立ち止まってみましょう。

「なぜ、やるのか?」
「なぜ、いま、やるのか?」
「だれのために、やるのか?」

この問いを立ててください。そして、その問いの回答に「エビデンス」を求めてください。もっとも、「施策」ありきでエビデンスを集めてはいけません。それは恣意的なデータと分析を引き寄せるだけで、問題の根本解決でないことが多いからです。

「イシュー」を正しくとらえるために必要なこと。それは「定点観測」から得られるデータの客観的な分析です。問題が起きてから「現状把握」を行っていては、「バイアス」に毒されてしまう可能性が高くなってしまいます。もちろん、人間は何かしらのバイアスを常に持っています。その前提に立ったうえで、いかに「エラー」を回避できるのかが重要です。

「現状把握」における落とし穴のひとつに「時間軸」の欠落があります。

「過去」はどうだったのか?
「現状」はどうなのか?
「未来」はどうしたいのか?

上記の図は単純構造化したものに、採用を例にとった場合のデータ収集方法を列挙しています。「目標」は「未来」に向かっていくものです。どうなりたいのか?どうあるべきか?「あるべき姿」の中間地点が「目標」といえます。現状と未来のギャップが可視化されたときに、はじめて正しい戦略と戦術がとれるといっても過言ではありません。

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