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フードデリバリーの配達員をやって気づいたこと

コロナが流行し始めた頃、数ヶ月だがフードデリバリーの配達員をやった。
その時は「熱狂のお好み焼」が出版された直後、コロナという新しい感染症が流行し始めて、ポカンと身体が空いたのだ。

僕は昔から飲食店を応援してきた。
僕の現在の立場は様々な飲食店の繁栄を基に形作られたものだ。
そのため、コロナ禍の売上減少に少しでも貢献しようと考えたのだ。
また僕は自転車での配達を選んだので、少しはトレーニングになるという目論見もあった。

今までは客として訪れていた飲食店に、フードデリバリーの配達員として訪れる。
それはなかなか得難い経験だった。
まず、客として訪れるのと違って、対応が非常に冷たい。
お金を払ってくれる人だけに愛想が良いのか、自らのビジネスを支えてくれる人全てに感謝しているのか。
それが端的にわかった。
ざっくりした感覚だが、8割の店は塩対応。
ウチの料理を運んでくれてありがとう!という店は2割くらいだった。
へー、この店って客以外にはこんなに対応が悪いんだと再認識することが多かった。
もちろん、そういう店はその後担当したRCCのイマオシ3では紹介していない。

僕は配達用ボックスの中に梱包資材のプチプチを入れていて、シート状のプチプチと、ふわふわのプチプチを使って、料理が動かないように、温かい状態、冷たい状態を保てるように工夫していた。
店によっては冷たいドリンクと、温かい料理を同じ袋に入れて渡そうとするので、そういう時は「申し訳ありませんが、温度が違う料理は分けていただけませんか?」とお願いして分けてもらった。
それをそれぞれ柔らかいプチプチで包み、その間にシート状のプチプチを挟んで、冷たい料理は冷たいまま、温かい料理は温かいまま配達するよう心がけた。
プチプチは安いので、汚れれば捨てて換えればいい。
緩衝材としてだけでなく、保温材&保冷剤としても秀逸だった。
配達員は個人事業主になるためか、こういう工夫は誰も教えてくれなかった。

また、僕の自転車はロード系なので乗車姿勢がどうしても前傾になる。
そうするとボックスが前に傾くので、斜めの底板を入れて、乗車しているときには前傾しているように(中で料理が片寄っているように)見えるけれど、実際の料理はフラットに保てるようにした。
配達時間による劣化はどうやっても避けられないが、それ以外の要因で料理が劣化したり、崩れたりしないよう工夫したのだ。

舟入の「ポワブリエール」で誕生日のケーキを受け取った時は、シェフもマダムも興味深そうに、なるほど、そうやって崩れないように梱包するのかと感心しながら見守ってくださった。
この時は配達途中にコントロールセンターから「花束を買って、一緒に送り届けてもらえませんか?」とリクエストが入り、途中で花束を買ってケーキと合わせて送り届けた。

実際に配達した時の写真

僕は言われたとうりに作業(仕事?)するのが嫌いで、自分で考えて仕事するのが好き。
なので、こういうアレンジは大喜びなのだ。
コロナによる置き配のため、受け取った方の顔は見ていないが、ドア近くに子供の遊具がたくさん置いてあったことから、小さな子供を複数人育てているお母さんのリクエストだったのではないか?と想像している。
ケーキを受け取りに行くことも、お祝いの花を買いに行くことも難しい中で、喜んでいただけたのではないか?と想像している。

他にも届けた集合住宅の駐車場で自転車を停めていると「ありがとうございます〜」と幼い子供を抱っこしたお母さんがゴミを捨てに出てこられたこともある。
おそらく僕の移動をスマホでトラッキングし、それに合わせてゴミ捨てに出てくださったのだろう。
ここでいいですよと言われたので料理を渡し、子供と少し触れ合って別れた。
子育てしているお母さんに料理を届けて、不愉快な思いをしたことはない。
「わかりにくくてごめんなさいね」と家の外まで受け取りに出てくださったのは全員女性だ。

もちろん、それはどうなん?という事例もたくさんあったが、それは書かない。
高圧的な人はほぼ男性とだけ書いておこう。

印象に残っている対応の良い店は本通のお好み焼店「若貴」だ。
何回か受け取りに行ったが、いつも気持ち良く「ありがとう!よろしくね〜!」と送り出してくださった。

「カルシャカ」のトルコ人オーナーも感じ良かった。
何度か配達で訪れ、配達時間終了後にランチでも訪れた。
飲食店の支援が目的なので、ランチをコンビニで済ませたりせず、必ず飲食店で食べていた。
ユニフォームのままで訪れると「おー!受け取りだね!」と声をかけてくれたので、いや今日はランチだよと伝えると一層喜んでくれた。
世界に冠たるペルシャ商人の末裔はビジネスの何たるかをよくわかっている。

八丁堀の「丼丸」も印象的だった。
いつもサーモスに氷水を入れて走っていたが、その日は配達が多くて水が切れてしまった。
この日は「丼丸」に二度、受け取りに訪れたのだが、おばちゃんが「どしたん?兄ちゃんしか配達する人はおらんの?この暑い日に!」と言われ、水筒に水を貰えないかな?とお願いすると、キンキンに冷えた麦茶をたっぷり入れてくださった。

短い期間だが配達して感じたことは、顧客は富裕層と貧困層が中心。
配達先の住居を見れば明らかだ。
このことについては考察しないが、わかる人にはわかるだろう。

また、配達元は個人店よりもマクドナルドなどの資本店が多い。
どんな料理が届くのかわからない個人店より、食べ慣れていてどんな料理なのかよくわかっている資本店のほうが安心なのだろう。

僕は個人店を応援したくて始めたのに、実際はマクドナルドの商品が多く、ちょっと冷めてしまった。
報酬が高いわけでもなく、他の仕事が入るようになると配達員の仕事からは離れてしまった。
現在は登録すら抹消しているので、再びやろうとは考えていないが、やってみて良かったと感じている。
自分のビジネスを支えてくれる人たちに謝意を示せない人は、マーケットから退場を迫られても仕方がない。
飲食店を別の視点から観ることができたのは収穫だったと考えている。

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