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萩市でびっくりしたこと_3(飲み食い買物編)

萩市に到着してすぐに訪れたのが、20年くらい前から行きたかった「ふじたや」という蕎麦店だ。
ここは原初のせいろ蕎麦を出してくれるのだ。

せいろ蕎麦とざる蕎麦の違いは海苔の有無と語られることがあるけれど、それ以前に器が違う。
蕎麦切りを盛る容器がせいろ(蒸籠)なのか、ざる(笊)なのかという違いだ。
蕎麦は元々せいろで提供しており、なぜせいろかというと、蒸したものを提供していたから。
つまり、蒸し蕎麦である。
それが改良され、茹でて水で洗い、それをざるに盛るようになった。

そして「ふじたや」では今でも蒸したせいろ蕎麦を提供してくれる稀有な店なのだ。
店内の造作も昭和どころか、もしかしたら明治時代?と思えるようなものがたくさんあった。
椅子とテーブルは昔の人の体格に合わせて小さめだし、小上がりなんて狭すぎて身体の大きな人には厳しいだろう。
この店には珍しく蕎麦寿司もあるので頼むつもりでいたが、最近、穴子が入らないから作ってないんですと言われた。
なるほど、地元で揚がった穴子以外は使わないということなのだろう。

せいろ蕎麦780円

提供までに時間がかかるので、開店直後がお勧めだが、僕は開店5分後に訪れたのにほぼ満席だったので、土日は早めに店を開けられるのかもしれない。
せいろ1枚は小さめだが、5段になっていて、結構蕎麦が詰めてあるのでお腹いっぱいになった。
蕎麦寿司が頼めなくて正解だった。
リアルせいろ蕎麦は、せいろの底のスリットに蕎麦が挟まり、キレイに食べるのが非常に難しい。
蒸された蕎麦はモソモソすることもなく、温い蕎麦を温い蕎麦ツユに浸して食べる。
これは茹でてから蒸してあるのだろうか?
どちらも冷たいものに比べると、少し喉越しが悪く、喉太く感じられるが、これはこれで旨かった。
寒い冬には特に嬉しいだろう。
蕎麦ツユには生玉子が落としてあるので、途中から溶いて食べた。
少し味がマイルドになり、玉子の甘さが加わるので良い味変になった。
蕎麦湯は最初から出てくるので、最後に蕎麦ツユで割って飲む。
20年来の宿題を片付け、江戸時代のせいろ蕎麦に思いを馳せることができた。

泊まった宿は「北門屋敷」という江戸時代の建物や石垣が残る、武家屋敷群の中にあった。
文化財地区なので、高さ制限があるのだろう、建物は2階建てで、離れや別館など、たくさんの建物があった。
用事がない建物には訪れていないが、庭の一角には一棟貸しの部屋もあった。
現天皇陛下が雅子妃と結婚された直後、ここに泊まられたらしいので、あの離れかな?と思ったりした。

奥に見えているのが一棟貸しと思われる建物

建物と建物の間にはたくさんの花が植えてあり、散策が気持ち良かった。

ホテルの中庭

料理は卒がないというか、驚きはないけれど真っ当においしい。

前菜盛合せ
魚種によって熟成を変えているのがいい。
鯛は熟成させているが、カンパチはフレッシュ。
炊合せはその名の通り、全て別に炊いて皿で合わせてある。
真っ当な仕事だ。
メインはしゃぶしゃぶ。
見蘭牛などの地元銘柄牛ではない。
2枚でちょうどいい。
養殖のトラフグのようだが...。
夏にフグを出す意味はないと再認識した。
水っぽくて味が薄い。
たまげ茄子とスズキの焙烙蒸し。
たまげ茄子という地元産の茄子とのこと。
瑞々しく柔らかい。

この後、茶碗蒸し、ご飯、吸物、漬物、デザートが出て終了だった。
十分お腹いっぱいになったが、苦しくて動けないほどではなく、飛び切りおいしい料理はないものの、フグ以外はNGな料理はなかった。

ご飯がお櫃で出てこないのも無駄がなくて好ましい。
もちろんおかわりを促してくれる。

翌朝の料理も同様で、やはり卒がない。
中心からやや左側に置いてある、しそわかめという製品は、どうやら萩の名物らしく「ふじたや」のおむすびにはこれがまぶしてあった。
あれはどんな味なんだろう?と思っていたので、食べられたのは嬉しかった。
感心したのは塩鮭が真っ当に旨かったこと。
塩鮭のおいしさは値段なりなので、旨い鮭は高いのだ。

旅館で朝食を食べると、普段よりも圧倒的に量が多くなるので、昼になってもお腹が空かなくて、ほとんどの場合は食べない。
今回も2日目の昼食は摂らなかった。

お土産は「萩しーまーと」で天然ヒラマサのフライと無角和種の小腸を買った。
天然のヒラマサは珍しいのと、1/4身のサクもあったが、食べ切れそうにないので調理済みのフライにした。
するとこれが、下味にうま味調味料が使われていない真っ当なフライで、温め直して食べると素晴らしく旨かった。
またここには無角和種の肉も売られていて、そちらにも惹かれたが、内臓のほうが牛種の差が出やすいかも?と思って小腸を買った。

原材料欄を見て、これはアタリかも!と気付いたのだ😁
まだ食べていないが、無角和種の小腸はどんな味なのか楽しみだ。

続いて訪れたのは「みどりや本店」。
ここには日本在来種の一つ、天然記念物の見島牛を育て、販売している。

見島牛は年間20頭以下しか屠殺されないので、肉があるかどうかは行ってみないとわからない。
見島牛のF1、見蘭牛はいつでも大量に品揃えされている。
やっぱ見島牛はないかなー、と思いながら陳列棚を丁寧に見て行くと、、、おおっ!あった!見島牛のハラミが4つだけ並べてあった!

見島牛のハラミ!
ダレた感じがなく、色艶もいい。
鋳鉄のグリルパンで焼き、銀象の肉用塩で食べてみた。

このハラミは明らかに食べたことのない旨さだった。
まず香りが異なる。
牛肉輸入自由化前の昔の牛肉の香りで、広島県内だと見浦牧場の肉にそれを感じることができる。
ああ、あの香りは古い系統の和牛が持つ香りだったのかと理解できた。
写真ではサシが入っているように見えるが、焼いてみるとむしろ肉質は硬めで、筋繊維が太い。
噛みしめるとじわじわ旨さが出てくる肉で、一口食べてうまっ!というタイプではない。
古武士のような風格を感じさせる肉だった。
和牛のオリジナルの一つである見島牛の肉を味わって、これまで感じていたことがクリアになった。
ちなみに味付けは吉岡香辛料研究所の唐辛子が使われている青唐辛子醤油が最も好相性だった。

冷凍のミックスホルモンも発見!

肉はハラミしかなく、僕が買った後、他の人も買ってすぐになくなったが、ホルモンが少しだけ売られていた。
無角和種とはどのような違いがあるのか、こちらも食べるのが楽しみだ。

歴史も食事も買物も、萩市で素晴らしい経験ができたのだった。

萩市でびっくりしたこと_1(松蔭先生編)
萩市でびっくりしたこと_2(毛利家の歴史編)

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