2023年 WBC 侍ジャパン優勝、日本野球の強さの証明

準決勝以前(3月17日)に書いた上記の記事の通り、予言というかジンクス通りの決着侍ジャパンこと野球日本代表がWBC優勝を達成しました。

正直準決勝・決勝ともにできすぎた展開というか、日本が優勝するために、大谷翔平選手が活躍するために舞台が整えられすぎていて怖いくらいでした。
何かに仕組まれているのか、リアル大会風の映画でも見せられているのかという気分でした。大会MVPになった大谷翔平選手は既に現役世界一の選手であり瞬間的には歴代世界一の選手といっても否定することが難しいくらいの選手でありながらもまだ28歳と若く、数年から10年は成長の余地をまだまだ残している選手ながら、もう最高の最終回が来てしまったくらいの感じです。

まあ厳密には本塁打王やサイヤング賞などのMLB個人タイトルだとかワールドシリーズ優勝などやり残してることは沢山ありますが、既に細かな数字だけで測ることができない世界最高の選手の地位を得ていて、チームを勝たせるという意味では野球界の頂点の1つであるWBC優勝をMVP受賞しつつ達成していますから、ここで物語が終わっても誰も文句つけられないくらいの凄さです。

今大会は日本の勝利、優勝というより「野球界の勝利」という形容が準決勝以降、国内外の監督やファンなどからされていましたが、大谷翔平選手という野球そのものを体現する選手が活躍して優勝し締めくくることで、野球というスポーツ自体の物語が完結したようなそんなカタルシスがある大会でした。

野球日本代表WBC優勝の法則(継続)

半分は偶然だと思いますが日本はWBCで今回含め3回優勝しており、3回とも同じ条件に適っている時にだけ優勝できています。


1.投手・野手にそれぞれ1人以上の現役メジャーリーガーがいる

2006年優勝時…投手:大塚晶則 野手:イチロー
2009年優勝時…投手:松坂大輔 野手:イチロー、城島健司、岩村明憲、福留孝介
2023年優勝時…投手:ダルビッシュ有、大谷翔平 野手:大谷翔平、ラーズ・ヌートバー、吉田正尚(同年から)

2013年ベスト4…現役メジャーリーガー不在、野手に元メジャーリーガー1人(松井稼頭央)
2017年ベスト4…投手に現役メジャーリーガー不在、野手:青木宣親

2.不調の主力打者が準決勝以降に劇的な復活打を打つ(準決&決勝で打点?)

2006年…不調でスタメン落ちした福留孝介が準決勝で代打決勝2ラン本塁打(決勝でも代打タイムリーヒット)
2009年…好調日本で唯一不調で悪目立ちしていたイチローが決勝戦で決勝2点タイムリーヒット(準決勝でもタイムリーヒット)
2023年…不調の三冠王村上宗隆が準決勝でサヨナラ2点タイムリーツーベース(決勝でも同点ソロ本塁打)


3.NPB日本一経験監督が代表監督

2006年…王貞治監督:1999年・2003年に福岡ダイエーホークスを率いて日本一
2009年…原辰徳監督:2002年・2009年・2012年に読売ジャイアンツを率いて日本一
2023年…栗山英樹監督:2016年北海道日本ハムファイターズを率いて日本一

2013年…小久保裕紀監督:NPB監督経験なし
2017年…山本浩二監督:広島東洋カープを率いて優勝1回、日本一なし

以前の記事で書き忘れてましたが、これも大事な要素だと思われます。
日本一経験があるというのは高いレベルの短期決戦を監督として勝った経験があるということになります。
ただ正直栗山監督は今大会含め短期決戦はあまり得意ではないタイプの長期シーズン、長期政権向けの采配をしている気がしますが、それを温かい人柄とコミュニケーション、雰囲気作りでカバーしているのかもしれません。


野球日本代表WBC強さの法則(継続)

1.ベスト4以上進出率100%

日本代表は2006年、第1回大会の優勝から2023年の第5回大会まで5大会連続でベスト4以上(優勝3回)に進出し続けています。これは当然最高記録で唯一の記録です。
主要出場国では、ベスト4以上3回のアメリカ(優勝1回準優勝1回)のが単独でこれに次ぎ、ドミニカ(優勝1回)プエルトリコ(準優勝2回)韓国(準優勝1回)ベネズエラらのベスト4以上2回がそれに続きます。

2.決勝戦の勝率100%

日本は出場国で唯一3回決勝戦に進出し、3回優勝。つまり決勝戦の勝率は100%です。決勝戦に進出さえすれば優勝する確率は100%ということになります。

3.4点差以上敗戦回数0回

日本代表はWBC5大会出場全38試合の中で30勝8敗勝利数30、勝率.789いずれも出場国中最高ですが、8回の敗戦の内容もレベルが高く、

①2006年韓国3-2日本 1点差
②2006年アメリカ4-3日本 1点差※サヨナラ、日本側は誤審で1点以上取消あり
③2006年韓国2-1日本 1点差
④2009年韓国1-0日本 1点差
⑤2009年韓国4-1日本 3点差
⑥2013年キューバ6-3日本 3点差
⑦2013年プエルトリコ3-1日本 2点差
⑧2017年アメリカ2-1日本 1点差

いずれも3点差以内の僅差の敗戦であり、最も試合数・勝利数が多い国でありながら一方的に大差で敗れたことが1度もありません。
これは以前の記事でも書いた通り主要出場国では唯一で、本大会に3回以上出場した国は日本以外全ての国が2回以上4点差以上での敗戦を経験しているので、日本代表が伝統的に追加点を許さない高い投手力と、食らいつく攻撃の粘り強さを備えていることをうかがわせるデータです。

4.日本が4得点以上した試合は勝率100%

3の項目の日本代表の全敗戦試合8戦を見ると分かる通り、日本が負けた試合ではいずれも3点以下の得点にとどまっています。
つまり4得点以上した試合では必ず勝っているということになります。

2023年の準決勝メキシコ戦は序盤から3点リードを許す厳しい展開でした。終盤やっと吉田正尚選手の起死回生同点3ラン本塁打で3-3と追いつくものの、再び2点勝ち越されて8回裏の攻撃時点で3-5と厳しい状況でした。
しかしなんとか総力戦で代打山川穂高選手の犠牲フライで4-5と4得点目をあげて1点差にすると、9回は村上宗隆選手のサヨナラタイムリーで逆転サヨナラ勝ち。
結果的にまたも4得点以上したら勝利確定の法則は継続されました。
つまり、8回裏山川選手の犠牲フライで4点目が入った時に日本の勝ちは決まってたと言えてしまうというわけです。


野球日本代表WBC優勝の不安要素(解消)

日本ラウンドの試合数が多く、アメリカラウンドの試合数・滞在時間が短い

2006年・2009年の優勝時は日本らアジア勢でも2次ラウンド以降がアメリカ開催で負けられない決勝ラウンドまでにアメリカの環境に慣れる時間がありました。
2013年・2017年(ともにベスト4敗退)準決勝から初めてアメリカへ行って数日ですぐ負けたら終わりの試合。
時差ボケなどてんやわんやの内に試合をさせられるので単純に不利でした。
2023年も2013・2017年と細かな点は違いますが基本的には同じように準決勝からアメリカで試合という条件でした。
しかし違うのは今回は2009年以来の投手・野手ともに歴戦のメジャーリーガーを揃えた布陣。アメリカでの過ごし方、アメリカの球場の特徴、メジャーリーガーとの対戦などの知識や心構えにおいては安心感があったでしょう。そのおかげか見事に優勝を達成しました。
さらに今回はアメリカ生まれアメリカ育ちの日系アメリカ人メジャーリーガーであるラーズ・ヌートバー選手もいましたから、なお心強かったでしょう。

他方、逆に言えば投手・野手ともに現役メジャーリーガーを揃えられなければ、大会の開催が従来通りであればアメリカでの準決勝以降はこれからも不利で難しい戦いになるという意味では完全な不安点解消にはなっていません。
メジャーリーガーがいなくてもいきなりアメリカで力を発揮できるようにというよりは、次回以降も大谷選手やヌートバー選手、吉田選手ら代表レベルの日本人メジャーリーガーが多数参戦してくれることを期待したいところです。



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