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デザインを通して、“そもそも”を考え続けたい。

社会人にデザインの知見を、という想いで講師と学生が共になって日々の学びを深めているXデザイン学校。実際に学びの場にいる方々の声を届けていく、クラスルームインタビュー。第15回目は現在アドバンスコースで学ばれている平間久美子さんです。


平間久美子さん
Webデザイナー、Webディレクター、UXデザイナー、電子工作研究者。2014年に事業会社の中で協業すべくWeb制作会社からフリーランスへと転身され、主にスタートアップ等の自社サービスやアプリ開発に従事。また、電子工作やインターネット上のデータと連動して実際のモノが動くIoTにハマり、初心者向けのIoTワークショップを企画・開催。電子工作書籍の出版や、ものづくり特化型の情報サイト「fabcross」にライターとして参加されなから、地元(宮城県白石市)で子ども向けのプログラミング教室(CoderDojo白石)を主催されています。

現在、どんなお仕事をされていますか?

WEBデザイナーとして就職してもともと地方でWEBの制作をしていたんですが、25歳ぐらいの時に東京でWEB制作やWEBデザインの勉強をしたいと思い上京して、その後7年間ほど制作会社でWEBデザイナー/WEBディレクターとして務めました。2014年に受託制作というよりクライアント先の会社の中へ入って制作をしたいと感じて、フリーランスのデザイナーに転じて顧客先で仕事をしています。フリーランスになってからはWEB制作以外にもIOT系のデバイスを使った制作であったり、趣味で電子工作をしているので、電子工作を使った書籍の執筆やライター活動もしています。現在はUXを意識したデザインに重きを置いている会社が周りで多くなってきたので、ディレクターというよりデザイナーとしてクライアントのサービスに伴走することが多くなってきて新規のプロダクトの立ち上げからご一緒してることが多いです。

なぜデザインを学ぼうと思われたのですか?

もともとXデザイン学校は2018年ぐらいから知っていたのですが、その頃より良いユーザー体験みたいな文脈のデザイナー向けイベントに参加したんです。当時はまだディレクションがメインで動いていまして、やっぱり自分自身デザイナーじゃないのにそんなに頑張ってもいいのかな、って感じがあったんです。その後4年くらいフリーランスでディレクターをしていたんですが、ある時、ある会社さんにデザイナーとしてアサインされて。自分としてはデザイナーとしてのスキルは弱いのかなとずっと思っていて、デザイナーとしてやっていくのはフリーという立場的にも難しいのかもと自分自身諦め的なところもあったんですが、その頃お仕事でご一緒した方にXデザイン学校を出られた人がいて「平間さんはディレクターをやってきた分、UXに対しての関心というのが非常にあって、これからのデザイナーはそういう領域に興味がないと難しいよ」と話を伺っていて、自分のそういう部分を評価していただいた、そして、まだまだ学べるチャンス、成長できるチャンスってあるからXデザイン学校に行ってみませんってお誘いをもらって、では説明会だけでも参加してみようと赴いてみたら、直接的なデザインの仕事じゃない方も充分学べる機会があるよと聞いて、デザイナーとしてのスキル不足を感じていて一緒に学べるのかなと思ってたんですが、マスターコースに去年1年間参加して、翌年の今はアドバンスコースで学んでいます。

「すっごい感じてた」、組織を変える必要性。

どういう学びでした?

プロダクトの提案っていう形でそれに向けて企画を練ってみたり、アウトプットでどう伝えるかという点でよりイメージが伝わるよう、実際のものを作ったり動画で撮ってストーリーを伝えたり、課題企業さんが来てオリエンされて、その企画をみんなで考えていくので本当に会社の中で新規プロダクトを作るイメージに近い感じでしたが、マスターでよかったのは、UXに留まらず会社の中の組織を一緒になって変えていくことも必要だね、って話を聞くんです。私もそうなのかもしれないとずっとモヤモヤしてたので、実際に授業を受けると「それすっごい感じてました!」って頷くことが非常に多くて。私はフリーですが契約期間はフルコミットでメインはデザイン業務でも、結局その組織の中でいろんな人と折衝をしたり、エンジニアと対話することによって、この組織の中で何をどう動かせばうまくいくか?ってところまで入ってきちゃうんですよね。いいプロダクトっていい組織状態じゃないと作れないと思っているので、だからこそチームの各々が働きやすいよう考えて仕事してきたので。

それに加えて一緒に学ぶ仲間がいるのがとても良かった。本当にすごかったのが、行動を変えさせるというか、自らやらなきゃいけないような形にしていくんですよ、みんなが。この行動変容ってなかなか自分一人だと難しいって思ってて。ずっとそのモヤモヤを抱えて、もしかしたらこうなるんじゃないかなとか、いい体験ってこう作っていかないといけないんじゃないかとか考えてても、会社の中だとなかなか自分の仮説だけではそうだねって動かないことも多くて、やっぱりその点でフラストレーションを抱えるところもあったんです。でも、それをマスターコースの仲間たちと話すことによって、より自分の中で腑に落ちる形になったりとか、それを元に一歩進んだ仮説をもう一回会社にぶつけてみようとか、会社の中でやり方をこう工夫してみよう、って学校で学んだことを会社で生かしつつ、会社で学んだことを仲間とフィードバックし合う機会がものすごくあったので、非常に学びが得られたし、深く考えることができた1年間だったと思います。

アドバンスはいかがでした?

アドバンスにステップアップしてからは一人で考えてテーマを決めて、深く検証しながら進んでいくって時間が増えたのですが、最初にテーマを3つ考えました。1つ目は、私は地元の地域に対して何も貢献してないなってずっと思ってて、宮城の白石なんですが生まれた町に何か返したいんです。私が貢献できる文脈で言うと、電子工作やプログラミングを子どもたちに教えて、ゆくゆくは町を出なくても生活できる、とか、むしろここから新しい文化を創造していけるような人たちを育てたいという想いがあったんで、何かできないかというのがあります。コロナ禍で地域の人と関わり合う機会があって、授業でも地域の課題があって実際に地域の人に聞いてみないとダメだなって思っていろいろ聞いた中で、“諦めているご老人と早くこの町を出ていかないと焦る若者”というのが見えて「ああ、これってまずいな」と思ったのがきっかけです。2つ目はUXリサーチってちゃんと勉強した人じゃないとできないと思われてるようで。自分たちではできないからプロに頼まないとダメって皆言うんですが、本当に小さい範囲で始めてみるとかできるんじゃないかと思ってて。前の会社で「やってみなよ」って初めてユーザーインタビューを振ってもらえたことがあったんですね。そこでやってみたら「これはやらない手はないな」と思うほど気づきがいっぱい得られて、目の前がパッと広がったんです。その時のやり方やアウトカムをnoteに書いたんですが、やっぱりいいね押してくれる方が結構いて“興味はあるけど自分には無理って思い込んでいる方が結構多いんじゃないか?”と思って。じゃあこのUXリサーチを初めての人も取り組めて自分で気付きを得られるようなプログラムが作れないかと。そして3つ目、私がフリーになった理由は会社にいるのつらいなって思っちゃうタイプなんです。あそこがうまく動いてないとか、そういうところがすごく気になっちゃって、いろいろ相談受けるとじゃあ私が何とかしなきゃと思って、上司に伝えると角が立つみたいなことも経験してきて、もう嫌だとフリーになったんですが、会社の中で個人の想いが自由に実現できるとか、例えば私はフリーランスとして電子工作やそのライターをやってますがそれが会社の中で実現できたら会社に入ってもとてもハッピーだと思うんですよ。で、世の中見てみると、結構実現できてる人がいて、何が違うんだろうな?って。どうすればうまくやれるかを研究したくてそれが3つ目だったのですが、結果として今は東京が拠点ですが月の半分くらいは宮城に行って。1つ目の「CoderDojo白石」というプログラミング教室の取り組みで考えています。マスターはみんなでやるので力を合わせられるのだけど、アドバンスは一人でマンパワーが圧倒的に足りないので、テーマをどう動かしていくか……。一人じゃできないので、どうやって世の中にあるいろんなリソース・人を巻き込みながら進めるかってところで汗をかいています。

生活をより豊かにする製品を考えるワークショップにて

学びが生きる度に、ニヤニヤ。

仕事に役立ってると感じることはありますか?

ものすごく感じます。特に今は新規のプロダクトを作っている会社とご一緒してるのですが、学校の学びを元に進めることでうまくいってる感覚があります。アドバンスは組織のデザインという点でも役に立ってることが多くて、私が参画するのは若い会社がメインで組織は柔軟だけどちゃんとできてない、場合によってはプロダクト自体も作られてなかったり、これから作っていく会社も多いので、どうアイデアを発散させたり、収束させるか、って点を一番活用してるんですが、私もデザインをしていて「このパーツをデザインしてください」ってことが気になっちゃうんですよ。どういうユーザーが使うの?そもそもこのサイトって誰に向けて発信してるんの?それにあたって本当にこの広告でいいの?子どもが見るのにこんな敬語でいいの?これ作ってもどう周知させるの?そもそもこれってWEBじゃなくてもいいんじゃないの?って。そういう“そもそも”を考えることが大好きなんです。フリーとしてもより顧客のメリットになる方がいいわけで、顧客がWEBを作りたいって言ってるけど、それが本当に顧客のビジネスに役に立つのかを考えると、もうちょっと全体を見ないといけないし、例えばロジのシステムから裏のCSカスタマーサービスまで一体化してないと多分ここでつまちゃいますよね、と見えてくる。その考え方をできる人にWEBデザイナーとして作ってもらった方が体験はより良くなるよねってクライアントに言われて、少し自信持っていいのかなと思えるようになりました。デザインが悪かったからって評価されるのがすごく嫌だったんです。ちゃんとすべて理解した上でデザインを作ってダメだったら私の責任ですが、ものすごくデザインだけで残念がる人が多かったんで、ではもうちょっと広くから見て、それに適したものを落としてリリースしたいんです。それだけでなくビジョンとは?って話をしたり、学んだことをそのまま仕事で実践していて。新しいものを作っている時って一回発散させても小さくなってまた戻ってくるわけですが、それを皆さん一直線上に進めようとするんです。でも、戻ってくるのはそれが重要だからということがわからないメンバーでやってるとモヤモヤする。そういう時に自分で「これは重要なことだから何回も戻ってきてるので、皆さんが腑に落ちるところまで話しましょう」ってファシリテートできるようになったので、メンバーも安心していい関係性でプロジェクトを進められています。そんな仕事の中で、前言ってたのこういうことなんだなって思うことが多々あって、その度にちょっとニヤニヤしてます。

私にとって、デザインとは「問題の発見と解決を行う創造性」。

平間さんにとってデザインとは何ですか?

私にとってデザインとは「創造性を使いながら、問題の発見と解決をおこなっていく一連の流れ」なんだなと思います。普通のことだと思うのですが、創造性を自分から出したり、人から引き出したりしながら、より良い問題を発見して解決していきたいと思っています。


時に楽しげに、時にしっかりと、デザインの学びについて語ってくれた平間さん。その話しぶりには虫の目だけではいられない彼女の鳥の目がデザインと出会って喜んでいる空気がありました。デザインのおもしろさは、やっぱり広くて深いです。