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自分にとって一番の学びは、 答えのない問題に対する取り組み方。

社会人にデザインの知見を、という想いで講師と学生が共になって日々の学びを深めているXデザイン学校。実際に学ばれてきた方々の声を届けていく、クラスルームインタビュー。第3回目はベーシックコースに通われた後、マスターコースに参加された剣持貴志さんです。

剣持貴志さん
WEB制作会社でWEBディレクター/UXプランナーとして働きながら、小田原に移住して地域活性の活動や本を通して人と人を繋ぐ取り組みを実践されています。

ー現在、どんなお仕事をされていますか?

WEBディレクター/UXプランナーとして働いています。前者としてはWEBサイトを作るのがメインで、根幹となる企画を考えたり、実装に向けてのプロジェクト管理や情報設計を担当しています。後者としてはWEBでもまずは調査をちゃんとしてからどういったものを作るか考えようという流れがあって、そういう仕事が増えてきています。調査会社があって制作会社があるんですが、この2つの会社が使ってる言語が違うんですよね。“全体の絵(企画)としてはなんとなく素敵に見える大きな風呂敷が調査会社とかデザインコンサルからポンと降りてきて、実際制作する側は「これどうするの……?」”って話に近いんですが、やっぱりインサイト的な話があってもそれを具現化するチームへ翻訳する人間が必要なんですよね。私はそういう翻訳の部分でよく声をかけて頂いています。


ーどんな経緯でXデザイン学校に入られたのですか?

WEBの仕事をしているとそこかしこでUXって言葉が出てきて、当初はUXって言葉を使いながらもUXっていうものが何なのか?っていうのは全然わかってない状態でした。なので、興味を持ってちゃんとやってみたい、それに自分としても好きなんじゃないか、このジャンル?って思ったのが最初です。

他の学校なども調べていたんですが、全体的なカリキュラムや実際会社に通いながら確保できる時間を考えると、Xデザイン学校以外で候補に挙がった学校は無かったですね。

考えることって、こんなに面白い!


ー実際にXデザイン学校に通われていかがでした?

2019年ベーシックに通って、その翌年にマスターだったんですが、やっぱりすごく面白かったんですよね、もう間違いないですね。まず、浅野先生が非常に面白かったです。はっきりダメなものはダメって言われるし、何かアイデアを出してもつまんないことはつまんないね、ってズバッと言うので、人によっては苦手だなって思う人もいると思うんですが、私は感動してました。何かを否定するのってよほど自信がないと難しいし、大人になればなるほどやんわりと“こういう部分はいいよね、こういう部分はもうちょっと頑張ろうね”って、特に学校ってそうなりがちと思ってるんですが、本当にそれが全然なくて。全部のグループが発表し終わって「今回はどこもいいのがなかったね」みたいなところが私はすごくいい環境だなと思いました。

初年は手法として1個ずつ学んでいったので、実際浅草に行っていろんな人がカメラで撮影してるところを観察しながら、その様子を記録、整理、分析して、そこから価値の抽出をしてアイデアを考えて。という一連のフローをやっていって、最終的にはこういうサービスどうですか?っていうのをモデルになってるクライアント企業にプレゼンするようなカリキュラムでした。1カ月1回の計10回なのですが、シンプルに“考えることってこんなに面白いんだな!”ってことを毎回の授業で感じていました。

そういう「UXデザインの手法」的なこと以外にも、浅野先生が大事にしている「変化し続けることを前提にした生き方、姿勢」の話などを聞いて非常に刺激になりました。何歳になっても常に何か新しいことに取り組まれたりされていて、“よくやるなあ、やっぱりすごいな”って。ホント私もそんなふうにできたらいいなって思うし、大事なことを教わったなと思います。

答えがない問題に、どう取り組む?


ーそんなXデザイン学校で得られた一番の学びって剣持さんにとって何ですか?

私がXデザイン学校で学んだことって、「答えのない問題に対する取り組み方とか解き方みたいなもののヒント」なんだと思うんです。普通の学校教育を受けてくると、もう既に答えがあって、暗記した公式を使ってちゃんとその答えに辿り着けるかってことを測られるわけですが、世の中に出ると答えを誰も知らないじゃないですか? その答えがない問題に対してどう取り組むかっていうことを教えてもらったし、そのヒントがここにあるんだなってことに気付けたのがすごく大きな成果でした。

仕事的にもどうしてもクライアントワークだと考える幅が狭くなりがちというか“これをやってください”って依頼があってその方法や手段を考えるんですが、Xデザイン学校がやろうとしていることってそもそも問いの部分から問い直そうっていうことなので、“目的として掲げられているものが本当に目的として正しいのか?”って部分から考えていいんだな、と。でも、本当にその通りだなと思うんです。

世の中にある問題はほとんど問題設定自体がうまくいってないと思うんです。私はXデザイン学校をきっかけにこの目的と手段の関係について深く考えるようになったんですが、東京の普通の公立中学の校長で工藤先生という方が本を書いておられるんです。学校のあたりまえをやめたという本で。宿題を出さないとか、クラスに担任がいないとか、中間期末テストがないとか、服装指導を行わないってことを公立中学校でやられていて、本を読んだ時に大きな衝撃を受けたんです。そもそも公立中学でそんなことできるんだ?!って。

工藤先生がやっていることって結局は“目的を達成するための手段として何が一番必要で最適なのか?で選んでるだけ”って話なんですよ。先生の目的は、社会に出て自立した大人として活躍できる子どもを育てていくってことで、その際に例えば、クラス担任って担任がいることによって生徒たちに当たり外れみたいな意識が出るんですね。親から見てもあの先生が良かったねって。先生と言えど一人ひとり違う人間なので得意なこと・不得意なことも違うわけで、それを一人の先生が勉強やメンタルケア、部活指導や親の対応を全部やるなんていうのはそもそも変じゃない?と。で、先生たちがチームになって全部のクラスを一緒に対応しながら得意なことをきちんと分担してやる、ってことを実行する。それは目的がはっきりしていて、その目的を達成するための手段は何なのか?っていう問題設定から考え直せてるんですよね。そもそもの問いの部分が、学校って何のためにあるのか?って問い直しからスタートしていて、工藤先生はその答えを自分で考えることで必要な手段が決まってくると。それに近いなと思ってます、Xデザイン学校でやろうとしていることも。この思考ってすごい汎用性が高いなって思っていて。Xデザイン学校ってUXとかサービスデザインを教える学校というくくりになってるけど、本当に“答えのない問題の解き方”を教えてくれるところで、もっと広くの人に知ってもらえたらいいなと思ってます。

ーそんな剣持さんは、これからその知見をどう生かしていきたいとお考えでしょう?

2年間やってみて、なんとなく頭の中にUXデザインについての領域ができた感じがあるんです。次はこれをどう実践するか?ってところで、最近は本屋さんのような場所を作る準備を進めているのですが、その中でサービスデザインやUXを使ってどうやったら目の前にいる人が喜んでくれたり、目の前にいる人がなんかちょっと考え方が変わったりとか、そういう体験を作れるのかなっていうのを実践してみたいなと思っていますね。

私のとって、デザインとは「答えのない問題の解き方を考えて、形のある解決策を生み出すこと」。


ー剣持さんにとってデザインって何ですか?

デザインって、すごい幅広いですよね。でもそのデザインという行為でやろうとしてることって、結局何らかの問題を解決しようとしていて。それも答えがひとつじゃない問題があって、その問題に対してどう取り組むか?みたいなことを、最終的なアウトプットまで含めて考えて実践していくことが全部デザインだと思いますね。組織のデザインもそうだし、文化のデザインもそうだし、そういうの全部ひっくるめて、どうやったら新しいものが生み出せるか、問題を解決できるか。何らかの目的があってそこに近づくための手段として最適なものを選んだり作ったりしていくこと、その営為がデザインだと思っています。


そんな剣持さんにオススメの本をリコメンドしてもらいました!

人口約8000人、神奈川県の端っこにある真鶴半島で「泊れる出版社」をテーマに出版業と宿泊業を営む真鶴出版さんの、穏やかだけどとても力強い挑戦の記録をまとめた一冊です。

本の中にこんな一節がありました。
``
東京にいて、かっこいい写真を撮る、コピーライトをする、デザインをする、はたまた芸大で村上隆さんみたいにアートする人が「クリエイター」だったんです。
でも今のクリエイターは「暮らしをつくる人」、なんでもできる百姓です。(中略)
一旦細分化されたものが新たにつながって総合的なクリエイティブになったことで、紙やモニターに変わって「まち」がキャンパスになった。
``
クリエイターのキャンパスが「まち」になった、という表現は個人的にすごくしっくりきていて、Xデザイン学校で学ぶ広い意味での「デザイン」を「どうやったら普通の人の日々の暮らしに落とし込めるのか?」という視点で読むと、とてもワクワクできる本だと思います。


Xデザイン学校で得られた学びを明確に言語化してくれた剣持さん。世の中で問題とされてきたさまざまなことを問い直すことによって確かな未来を生み出すために、デザインには具体的に価値があると教えてくれました。デザインのおもしろさは、やっぱり広くて深いです。