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ゼロイチのワンオペ状態で作る育成制度。「自分に何ができるか」と起こした行動とは。

世の中の99.9%は「普通の人」。スポーツやビジネスなどで活躍する著名人は、あなたにとって憧れであっても手が届かない遠い存在でもあります。

一方で身近にいそうな人のエピソードを通じて学べることもあるのではないでしょうか。あなたにとって今後のヒントになるかもしれません。

今回はイジゲングループ(株)の小宮翔子さん。前職でゼロベースから育成制度の立ち上げを実現できた要因とは一体、どんなところにあったのでしょうか?

《プロフィール》小宮翔子(こみや・しょうこ)
 福岡県立玄界高校卒業後、アパレル販売、人材派遣営業、通販コンサルティング会社での労務、育成担当などを経て、2022年にイジゲングループ(株)に入社。現在は地方の中小企業へのDX支援や社内の人事関連の業務を担当している。趣味は食べ歩き、旅行。1989年生まれ、福岡県出身。

【イジゲングループ株式会社のホームページはこちら】https://ijgn.group/

「ゼロを追う」仕事から「ゼロからイチ」の仕事へ

育成制度の立ち上げ当初は「何から始めればいいのかわからなかった」と話す小宮さん

社会人になってからしばらくは「目の前の仕事をこなすだけだった」と話す小宮さん。人材派遣会社の営業職だった時に「もっと人に支えることをしたい」と感じたことで人事や採用の仕事に関心を持つことになります。

自分のキャリアを意識して転職した通販会社のダイレクトマーケティング支援を手がける企業では労務担当として働くことになります。約1年半働いて環境に慣れてきた頃、小宮さんにある変化が訪れます。

小宮
「人事異動でそれまでの部署の雰囲気と真逆の上司がやってきて、『もっとチャレンジしてオフェンシブにやらないとよくならないよ!』といった方針に変わったんです」

部署内ではそれまで「守りにいこう」との考えが強く、労務関連ではミスやトラブルなどの「ゼロを追う」スタンスでした。そんな雰囲気がガラリと変わり、人材定着率の向上を図るため育成制度の立ち上げに取りかかることになりますが小宮さんには複雑な思いもありました。

小宮
「会社が採用に力を入れていたし、人のいい部分に関われて面白そうと思った反面、労務の仕事と兼務だったので『こんなに忙しいのにできるのかな』との不安のほうが大きかったですね…」

小宮さんにとって不安の種はもう1つありました。それはこれまでの社会人として最初から仕組みを作ってきた経験がなかったことです。いわゆる「ゼロイチ」の経験がなかったことも、「楽しみだけ」ではない複雑な思いを抱く要因となっていました。


知見を得るためのアクションと周囲を巻き込む「キャンペーン」

「周囲を巻き込むためにも社内での信用をどう高めるかを考えていた」と振り返る

育成制度は上司とともに目的や方向性を定めることから始まり、直近で退職した人の理由の洗い出しなど分析を進め、「入口の部分が大事なのでは?」とまずは入社研修の仕組みを作ることになります。ただ、社内にノウハウは全くありません。そんな状況で小宮さんは「外」に向けて動き出します。

小宮
「『人事の人と繋がれれば、人事の人と繋がらなければ…』と交流会やセミナーに足を運び、ノートにメモを取ることを繰り返してました。経験不足をどう埋めるかを考えた時に情報や人の知見しかないなと思い、『何もわからないので教えてください!』とずっと言っていました」

「チャレンジは苦手」と語る小宮さんですが、営業職時代に磨いたフットワークの軽さもあって自分の足で稼いで知見を得ようとします。ただ、他社のノウハウをそのまま取り入れるには応用できないことばかり。そこから自社でできることを反映させ、約3か月で研修の仕組みを作り上げていきます。

小宮
「最初は入社日のオリエンテーションを作り、会社の歴史や愛着心を湧かせるような項目を考えて3日間、5日間と広げていきました。ただ、各事業のマネージャーを巻き込んで協力してもらうことがとにかく難しかったです」

当初は小宮さん1人で研修を回し、ある程度手ごたえも感じていました。その上でさらなる浸透を図るために現場のマネージャーたちに声をかけますが、「なぜ、やらなければいけないのか」と感触は芳しくありません。時には衝突しながら、小宮さんの中であるアイデアが浮かびます。

小宮
「『育成って大事なんです!』と伝えても意味がないと思い、自分の中で『キャンペーン』をやろうと決めました。聞かれたことに親身に答えたり、呼ばれた時に誰よりも早く駆け付けたり、社内でギブアンドテイクの『ギブ』をし続けようと動き回っていました」

小さなギブを与え続ける「キャンペーン」は、「いずれは見返りがあるかも…」との思いもありつつ自身への信頼度を上げる目的がありました。さらに実際に研修を受けた人へのフォローアップも重ね、「入社した人にもキチンと向き合っているんだ」との「口コミ」も広がって半年ほど経った頃には現場の協力も得られるようになっていきました。


「目に見えるものを作ろう」と結果を残して得た仕事のポリシー

「周りの人の背中を後押しできる存在になりたい」と今後への思いを描く

ただ、育成制度は「研修をすること」が目的ではありません。働くことに対する満足度や会社への愛着心、相互理解を高めるため、その後も次々と仕組みを組み立てていきます。

小宮
「バラエティ番組のパロディで『しくじったこと』を幹部にインタビューして公開したり、動画コンテンツやカルチャーブック、社員図鑑などを作ったりと『目に見えるものを作ろう』ととにかく色々やっていました」

目に見えるものを作り続けた育成制度は約1年が経った頃には小宮さん1人だけでなく各事業部からの協力も得られる形となっていました。当初は「ゼロイチ」の経験がない状況でしたが、周囲からの反応も出始め、実績を積み重ねたことで現在につながる心境の変化に至ります。

小宮
「『置かれた環境で自分に何ができるか』を考えられるようになったことが大きいです。自分に矢印を向けて考えた時、おせっかいで心配性な性格だからこそ人のために何かをすることが好きだし、自分の性格として向いていると気づけたことが今につながっています」

制度を作る過程で周りを巻き込むことの大切さを学び、「自分が体現しないと説得力がない」と感じた小宮さん。現在勤めるイジゲングループ(株)でも「地方や自身に関わる人すべてのパワーを最大化できるようにサポートしたい」と人事コンサルタントと社内の人事業務を兼務しながらチャレンジを体現し続けています。


今回のおさらい

土台の無い状況から新たなものを作り出す「ゼロイチ」な事柄は、正解がないだけに二の足を踏んでしまいがちです。小宮さんの場合、外部に知見を求めたり、社内で周囲を巻き込んだりとアクションを起こしてチャレンジしたからこそ結果や実績として自信にもつながりました。「自分に何ができるか」を考えてパフォーマンスを最大に発揮することは、正解がない物事に取り組む際に最も大切な考え方なのではないでしょうか。


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