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「会社人生終わったな…」取締役の言葉で悟った入社間もなく起きた事故とは。

世の中の99.9%は「普通の人」。スポーツやビジネスなどで活躍する著名人は、あなたにとって憧れであっても手が届かない遠い存在でもあります。

一方で身近にいそうな人のエピソードを通じて学べることもあるのではないでしょうか。あなたにとって、今後のヒントになるかもしれません。

今回は岡野バルブ製造(株)の荒内洋さんに焦点を当てました。入社直後にまさかの事故。さらにその先に待ち受けていた出来事とは…

《プロフィール》荒内洋(あらうち・ひろし)
 小倉工業高校、福岡スクールオブミュージック専門学校卒業後、2007年に岡野バルブ製造(株)入社。行橋工場で機械加工に従事後、生産技術、調達、経営計画立案などに携わる。2020年から経営本部長とバルブ事業部長を兼務。学生時代に寿司店でアルバイトをした経験を活かし、今でも親戚が集まる際は市場で仕入れた魚を握って振舞う。1985年生まれ、福岡県出身。


「機械が壊れてしまう!」ととっさの反応でケガ

入社試験を受けた時は「覚悟を決めた感じだった」と振り返る

ミュージシャンを目指して通った専門学校を卒業後、岡野バルブ製造(株)に入社した荒内さん。働くなら上を目指そうと思い、面接の際に「工場長になる!」と宣言したといいます。

そんな荒内さんが「失敗した」と感じた時期は、入社から3~4か月の頃でした。一体、何が起きたのでしょうか。

荒内
「大型のバルブを作るために使う治具をクレーンがないところで転がして運んでいたのですが、その治具が倒れかかってしまって。加工機の近くで『機械壊れてしまう、デカイ音がしてしまう』と思い、音がしないように足を出してしまったんですよ」

機械の操作を教わり、簡単な加工を少しずつ始めていた時期。突然の出来事でとっさに反応したことで、鳥肌が立ちそうな状況が訪れます。

荒内
「入って間もないから『鉄の重さ』がわからず、木とかプラスチックとかの感覚で重量目測が出来ていませんでした。ただ、100キロもあると足は耐えきれないですよね。脛の皮が剥げて腫れてしまいました」

100キロの重みが足にのしかかると大ケガをしても不思議ではありません。病院に連れていかれて治療を受けましたが、幸い骨に異常はなく何とか後遺症を抱えず事なきを得ました。

ただ、その数か月後に「俺の会社人生終わったな…」と感じてしまう出来事に遭遇します。


「目をつけられたな」と感じた懇親会での言葉

工場勤務時代には「加工ミスでトイレに駆け込んで20分籠ったこともある」と語る

試用期間を終えて開かれた懇親会。荒内さんは声をかけられてある取締役のもとに向かいました。

荒内
「有難い言葉でもかけてもらえるのかなと思っていたんですよ。それで意気揚々と行くと、『君かね、ケガをしたのは。次やったらないからね』と言われたんですよ」

思わぬ形でクギを刺され、「目をつけられたな」と感じた荒内さん。ただ、大ケガにつながりかねない事故の情報は上層部の耳に入っていても不思議ではありません。工場長になるとの夢は儚く消えたと振り返ります。

ただ、荒内さんのキャリアはその後大きく動いていきます。製造現場での数年間の経験を経て生産技術部門の業務に移った際には、自身の無知さに気づかされたと言います。

荒内
「原価の知識もなく、設計や強度計算も未知の領域で。Excelは表を作って電卓を叩いて計算していました(笑) ただ、負けず嫌いで『あの人ができて自分にできない訳がない』と思うタイプなので、無我夢中でやりました」

負けず嫌いな性格は他の場面でも発揮されていきました。

荒内
「全社の部門横断型プロジェクトに入れてもらい、営業、技術、調達などの他部署と関わることがありました。そこで会社の強みや弱みが見えて見る目がグンと上がって。中でもかなりアナログだった資材業務を変えなきゃいけないと思い、自分で手を挙げて行きました

自ら進んだ資材課では、業務プロセスの改善で実績を上げた荒内さん。その後も数年ごとに各部署へ渡り歩いてキャリアを重ね、組織を俯瞰して捉えるようになっていきました。


「何をやるか」より「誰とやるか」が仕事の原動力に

4児の父として「家族と過ごす時間が良いリフレッシュになる」と語る

現在は経営本部長とバルブ事業部長を兼務する荒内さん。入社当時と現在を比べて最も変化した部分を次のように挙げています。

荒内
「見てる世界や興味の範囲が最も変わりました。当時は給料をもらえればいいと感じてましたが、今は事業をどうしていくかを1番に考えます。昔は仕事とプライベートで完全に分かれていたのも今は一緒くたですね。よく言えば、人生の中に両方一緒にあるというか」

「会社人生が終わった」と感じたエピソードも、多くのメンバーを率いる立場となったことである思いを抱くようになりました。

荒内
「相手によって話し方というか伝え方を変えることを大事にしています。失敗しても同じ失敗をしないようにするのが伝える目的なので。だから、当時(懇親会)の取締役みたいにただ言うだけでは目的達成にはならないとも感じます」

指示を出したり、注意したりする時にも伝え方次第で相手の受け止め方は変化します。自身の発言が組織に与える影響が大きくなったからこそ、「伝え方」を重視するようになったといえます。

そんな荒内さんに仕事を通じてモチベーションが上がる瞬間について聞くと、次のように答えてくれました。

荒内
「『こんな案件で助けてください』と歩み寄って相談に来てくれるのは、頼られているようで何とかしなければならないと思いますね。結局は『何をやるか』よりも『誰とやるか』がモチベーションになっていると思います」

仕事での目標達成に向けては「何をやるか」が優先される一方、メンバー構成も成果の行方を左右します。荒内さんにとって「誰とやるか」は、「仕事は楽しく、成果は大きく」と掲げる自身のモットーを推し進める上でも大きな意味を持つことがうかがえます。


今回のおさらい

入社初期の事故後にクギを刺された出来事がなければ、荒内さんはその後も事の重大さに気づかず過ごした可能性があります。一方で生産技術部門への異動で感じた無力さや自ら資材課に進んだことなど、「気づき」があったからこそ自身の性格も生かしてキャリアを重ねたのではないでしょうか。

皆さんにも「大したことない」「いつものこと」と見過ごしていることはありませんか。「気づき」を得て行動や成果に至るには、自分自身が置かれている環境で物事をどう捉えるかがポイントとなるのではないでしょうか。


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