「焦らないこと」が何よりも大切。巨大な工作機械を操ることで身に付けた仕事との向き合い方
働く人にとって、日々扱う道具は「相棒」と言っても過言ではありません。
相棒とどのように出会い、どんな思い出を刻んできたのか。
長らく使ってきた道具に焦点を当てると、その人の個性やこだわりが滲み出てきます。
今回の「相棒」は、三島光産(株)の矢野奨真さんが使い続けるマシニングセンターです。
背丈の何倍もの高さがある巨大な機械を縦横無尽に操り、周囲から信頼を置かれる裏には、ある出来事を機に意識し続ける仕事への心構えが隠されていました。
初めての担当は社内で最新鋭の工作機械
ー「相棒」と出会ったきっかけは。
矢野
「入社2年目の時からです。1年目は先輩に付いて仕事のやり方を教わっていましたが、前任の方が異動になったことを機に担当することになりました。当時、社内で1番新しいマシニングセンター(MC)でしたし、初めて自分1人で担当することになって当初はプレッシャーもありました」
ーどんな時に相棒は活躍していますか?
矢野
「当社は製鉄所で使われる連続鋳造モールド(鋳型)を製造しています。そのモールドに使われる銅板を削ったり、穴を空けたりする加工の際にこのMCを使います。入社1年目に工作機械を扱う先輩の姿を見て感覚は掴んでいましたが、実際に触れると操作や段取りで慣れない部分も多く、使いこなせるようになるまでに2年ほどかかりました」
ミスから学んだ仕事と向き合う心構えの大切さ
ーそんな相棒にはどんな「個性」がありますか?
矢野
「主軸部分のアタッチメントが多く、取り替えると軸の扱い方も変わるため操作が複雑になります。その分、複雑な形状の加工に対応できることが強みです。他にもワーク(加工物)を置くテーブルが2つあるので、稼働させながら次の加工の準備ができる点が社内にある他のMCと違うところですね」
ー印象に残っている思い出を教えてください。
矢野
「担当になって半年ほど経って慣れてきた頃、操作ミスによってワークを削り過ぎてしまうことがありました。削り過ぎた分、やり直しをしたことで何とかなりましたが、入社して初めての大きなミスだったのでその時は家に帰宅後も落ち込んでしまったことを今でも覚えています」
ーその時の経験から学んだことや意識していることはありますか?
矢野
「『焦らないこと』を心がけています。周りからは落ち着いているように見られることもありますが、実際は焦りがちな性格で当時もそんな部分が影響してミスにつながりました。気持ちの部分で影響を与えないためにも、何気ないことですが、毎日朝食をきちんと摂り、日々体調を意識して整えることが、落ち着いて仕事に取り組む上で大切だと思います」
先輩のノウハウを後輩に伝える”メッセンジャー”としての使命感
ーもし相棒が現れなかったら、どんな社会人生活になっていましたか?
矢野
「会社で当時最新の機械を担当することになり、やる気や責任感が大きくなりました。操作や段取りで稼働時間をいかに高めるかが重要なので、数字で目に見える結果が出ると達成感があります。もしこのMCを扱ってなかったら、そうした段取りの重要性を意識できないままだったかもしれません」
ーこれから相棒とどのように付き合っていきますか?
矢野
「仕事の幅を広げるためにも、別の機械も使いこなせるようになることが今後の目標です。その上で後輩が仕事をやりやすい環境を整えることも役割だと思っています。その1つとして、先輩方の作業の様子を動画撮影する取り組みを進めています。自分は先輩の姿を直接見て仕事を覚える環境に恵まれていましたが、ベテランの方が在籍中に記録に残すことで今後作業を覚える人にとってマニュアルのような形で伝えられたらと思っています」
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