「木材加工は一発勝負」住宅建築に欠かせない内装材を生み出すために求められるきめ細かさ
働く人にとって、日々扱う道具は「相棒」と言っても過言ではありません。
相棒とどのように出会い、どんな思い出を刻んできたのか。
長らく使ってきた道具に焦点を当てると、その人の個性やこだわりが滲み出てきます。
今回の「相棒」は、森本商店(株)の森本耕平さんが扱う溝突き盤から掘り下げていきます。
住宅建築に欠かせない内装材を生み出すには、材木選びや加工の細やかさなどさまざまな視点が問われていることが窺い知れます。
内装材づくりで問われるまっすぐ削る正確さ
ー「相棒」と出会ったきっかけは。
森本
「前職では建築用木材の営業と配送がメインだったので、木材加工を本格的に始めたのは森本商店に入社してからです。入社してすぐに加工の受注が来たこともあり、周りの方に教えてもらいながら1年ほどかけてこの溝突き盤での加工を覚えていきました。機械自体は社内で30年ほどあり、代々色んな人が使っています」
ーどんな時に相棒は活躍していますか?
森本
「溝突き盤は、主に鴨居や敷居の溝の部分を掘るために使う機械です。事前に溝を掘るポイントに印を付け、手で位置を合わせてどれ位削るのかを考えながらやらなければ障子やふすまがキチンとハマりません。そのため、まっすぐ削る正確さが常に求められます。鴨居や敷居以外にも、屋根の側面に取り付ける破風板を加工する際にこの溝突き盤を使っています」
木材ならではの選別や加工の難しさ
ーそんな相棒にはどんな「個性」がありますか?
森本
「材木をまっすぐ切るための定規(添え木)を溝突き盤にあるネジで固定しようとする際、強く締めると結構な頻度で斜めにズレてしまいます。いい具合の締める難しさもありますが、ズレた角度を考慮しながら材木自体を斜めに動かしてまっすぐ削れるように調整しています」
ー印象に残っている思い出を教えてください。
森本
「建築用木材は、目に見える部分に節があると商品価値が落ちてしまいます。加工前には表面に節が見えなくても、削った後に見えることもあります。節が見えるからといって毎回廃棄するわけにはいかないので、予備の材料を使って試し掘りしながら加工の技術や材木の選び方を学びました」
ー材木ならではの加工の難しさがありそうですね。
森本
「材質によって扱い方が違いますね。ヒノキのように堅いものだと、溝突き盤のローラーが削るために回転し過ぎて材木が焦げることもあります。乾燥材を使うので大きな反りが生じるわけではありませんが、納品日に近い日程で加工するなど現場に合わせて調整しながらやっています」
やり直しが利かないことで身に付いた仕事に対する意識
ーもし相棒が現れなかったら、どんな社会人生活になっていましたか?
森本
「『一発勝負』の大切さがわからないままだったかもしれません。材木は一度掘ると元に戻らないので、失敗すると商品になりません。加工を通じて木材の選び方、時間のかけ方など前もって準備を重ねて臨む意識を持ち、段取りの大切さを学びました」
ーこれから相棒とどのように付き合っていきますか?
森本
「材木を削っているとどうしても摩耗してしまうので、刃やローラーの定期的なメンテナンスや掃除が欠かせません。長年使い続けているものなので大切に扱わなければなりませんが、いずれは現場監督の経験を重ねるなどして現場でのイメージを基に材料の見極めやお客様への提案に反映できるようになりたいです」
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