見出し画像

「成熟社会」で普通に生きる

ただ複雑になってくるが、決して便利ではない

世の中、どんどん面倒になってきていないですか?何でも電子化になって、世の中の公的や私的を問わずやり取りもすべて記号化され、その対応で高齢の人は大変だと思う。贅沢を望まなければ、もともと人間として生活するのはそれほど難しいことではなかったと思うのだ。
最近、若い人に限らず結構中年の人や、高齢者が移住を考え始めてるような気がする。単純に言えば、家があって、生計の方法があれば基本的に生活するための土台は出来上がっている。後は付加的に子供があれば成長のために何を与えて、どう育てていくかを考えればよい。もっと理想を言えば、食べて生きるだけではなくて、何か好きなことで人生を楽しみたいということもある。

空き家は余っているのにもっと家を建てたい産業界

例えば家のことを考えれば、住宅の確保は人生において大事業になっている。しかし東京圏に日本の総人口の30%くらいを集めて、また大阪や名古屋に、横浜、京都、福岡など大きな都市にとそれぞれ相当な人口を集めておいて、しかも日本の家族制度を木っ端みじんにしてしまったのだから、誰も住まない余った家屋が日本中にあふれている。しかもそうした家が今も毎日毎日空き家になっていってるのだ。それを無駄にしないでどう活用するかなどということは誰も考えない。それでも住宅の建設会社は、空き家はそのまま放置して、東京圏や全国の大きな都市圏で新築の一戸建てや上等のマンションを無尽蔵に生み出して、未来永劫に売り続けようとしている。確かにハウジングセンターなどで、新しい家やマンションを見ると、大きいな、きれいだな、使いやすそうだなと思うのはよく分かる。

リモート+地域の仕事のサポートで、

都市に負けない生活クオリティ

しかし初めに言ったように、本来生活するのはそれほど面倒なことではないはずだ。ずっと昔は口分田(くぶんでん)というのがあって、子供が生まれればその子供の分の土地が国からもらえた。もちろん税金を取るための方策の一つなので、喜んでばかりではおられないが、家だって近所の人が相互扶助という形で、建築を全面的に応援をする。手伝ってくれた人が家を立てるときには当然お返しで応援する。ただで家が建つわけはないないけれど、それでも今よりぐっと簡単に家が手に入る。
生計を立てることだけれど、ずっと昔は農業をするほかなかったのだろうが、今はリモート半分が標準のスタイルなので、少し努力してスキルを上げれば、リモート+地域の仕事のサポートで、十分生活ができる。まあこれは極論だけど、そろそろそんな風に生活を考える時代が来ているのではないだろうか。もう、日本が昔のバブル時代のように繁栄することはないと思う。世の中の10%くらいの人は、永遠にリッチな生活ができると思うけれど、そこまで行くには死ぬほどが頑張らなくてはならないし、それでも成功率は極めて低いと思う。まあ私たちが望める生活のイメージとしてはヨーロッパの小さな都市の普通の生活レベルが目標になる感じだと思う。

「経済大国」は忘れて、「成熟大国」を狙う

日本が世界1、2の経済大国になるのは無理だと思う。金は無くなったのに、昔ほどガツガツしたバイタリティもないのだ。しかし、世界1、2の「成熟社会」というのはあり得る。成熟は多様だし、かなり高度にもなり得る。夢がない話だけれど、未来をその程度の生活感覚で見ておいた方が無難だと思う。もう日本が経済大国として復活するのは無理だと思う。というのも、最近そう実感することが多いのだ。私は一時、日本や中国の古美術品の販売をコーディネートしていたことがあった。
ところがごく最近、やはり日本の古美術の販売をサポートして欲しいという話がよくある。これは、団塊の世代と言われている人がそろそろ亡くなりだして、この人たちが多くの美術品を蒐集していたからだと思う。相続人である子供たちは実際のところそんな面倒なものを引き継ぎたくはないので、まとめて販売したいと思うらしい。この話を引き受けた時、相続人は美術品に興味もなく、一生懸命高く売ろうと思わなくてもいいので、時間を優先して早く売って欲しいということだった。ところが、私がこの世界と親しかったころから20年くらい経っているのだが、世の中、とりわけ若い人になるほど昔の美術品に関心がなく、結果的には販売価格もずいぶん下げ止まりしている気がする。

昔の資産家は、美術品の蒐集を趣味にしている人が多かったが、最近の資産家で、と言っても比較的若いIT長者が多いのだが、美術品を蒐集している人は少ない。だから、この辺りの資産家の好みの変化を分かり易い例えで言うと、「横山大観の雲海の中の富士」を売って、車の「ポルシェ」を買うといった感じとなる。しかし私などは、かつての資産家の家の応接間にさりげなく、尾形光琳の三十六歌仙の屏風が飾られていたように、その方が「経済大国」よりはるかに天晴れな「成熟大国」だと思うのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?