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アイドル握手会のスタッフをした話

こんにちは。
暇すぎるので昔の話をしようと思います。
コロナウイルスのせいで様々なイベントが中止あるいはオンラインになっていますが、ここではあえて対面握手会のスタッフをしたときの思い出でも語ってみます。

注:記憶を基に執筆するので事実と異なる点があるかもしれません。またあくまで当時の話なので今はまた違うところがあるかもしれません。


数年前、私はイベントスタッフのアルバイトをしていました。
一日あるいは数日間、時には数か月にわたりイベントの受付や運営補助など様々なことをしてお金を稼いでいました。
そんな私に舞い込んだ1つのお仕事。


アイドルグループの握手会イベントスタッフ


お!これは面白そうだぞ!と思った私はすぐに応募しました。
私は昔から芸能人にさほど興味がなかったので握手会に行ったことはなかったのですが、いい人間観察ができそうだという非常に不純な動機を胸に、その日が来るのを心待ちにしていました。

待ちきれなかったので当日イベントを行うアイドルグループはどんな人たちなのか調べてみました。
どうも、最近デビューした期待の新人ユニットらしく、私が携わるのは初めての大体的な握手会らしいです。

メンバーの顔は?   うーん、若々しいが私好みではない。
人数は?       うーん、多すぎてわからん。当日困りそう。
握手会のスケジュールは?

うーん、、、、、、

あれ?新人のくせに規模デカくね?

確かにアイドル界では「期待の新人」扱いだったんですが、一般層には大して知られていないと思います。それにも関わらず、比較的キャパの大きい会場、何週間にもわたるスケジュール(しかもほとんど東京近郊)。


これ大丈夫か?閑古鳥にならないか?


私の不安は、残念ながら見事に的中してしまいます・・・・・・


当日

午前7時半、会場に集合。午前中から夕方まで行われるイベントなので集合時間が早い。着なれないスーツで一日過ごすと思うと少し心配でした。
様々なところから派遣されてきたスタッフと元締めっぽい社員が集まっています。ひとまず担当の社員を探し名前を名乗ると、ここで待っていろと言われました。

午前8時、会場入り。ここで握手会の流れを説明されスタッフの割り振りが決められます。
握手する前に必ず身体検査(手に何かついていないか、帽子に何か隠していないか)をする、握手できる時間は〇秒、など細かいルールが定められていました。(具体的な数字は言えません)


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これが簡単な会場図です。
私の担当はオレンジ色の握手券確認、身体検査、タイムキーパーでした。仕事多いな
アイドルの握手会の仕事で有名なのはおそらくはがし(時間になっても帰らないオタクを文字通りアイドルから剥がす)ですが、これはすべて男性担当でした。表情を悟られないように必ずマスクをつけないといけないという徹底ぶりでした。

そして説明の最後にこう言われました。

「絶対にアイドルのほうを見るな」

そう、私たちは何があっても待機列のオタクと向かい合って仕事をしないといけないのだ……


ところで、先程の図には不思議な点があることにお気づきでしょうか。
通常、アイドル一人につき一つレーンが作られ、そこにオタクたちは並ぶのですが、レーンの半分くらいは2人で共用していました。
つまり、売れっ子で1人で客を呼べるメンバーだけがレーンを独占でき、そうではないメンバーは他の人と並ぶことになるのです。
そして、説明の際に

「1つの握手券につきどちらか1人しか握手できません。券確認担当のスタッフは受付の段階でどちらと握手するかお客さんに聞いてから、メンバーと他のスタッフに伝えてください」

と言われました。

つまり、握手の相手として選ばれなかったメンバーは、もう一方のメンバーとオタクが握手をしている姿を無言で眺めていないといけないのです。

これはまさしく、新人アイドルに対する試練である。

そして私にとっても試練である。握手会開始までに担当メンバーの顔と名前を把握して、他のスタッフに指示しないといけないのですから。しかし、アイドルの顔が全員同じ顔に見える現象がたびたび起こる私にとってそれは簡単なことではありませんでした。


開場

やけに物々しい身体検査を終えたオタクたち(入場する地点でかなり厳重に検査をしていた。正直物騒)が会場に入ってきます。
どのくらい入ってくるのか、私はソワソワしながら入り口のほうをチラ見していました。

今回のイベントは最初に別室でオープニングライブを行い、その後各々持ち場について握手会を行うという流れでした。
別室のオタクの入り具合……ヨシ!

オープニングライブが終わり、いよいよ握手会が始まります。
握手するアイドル達が所定の位置にやってきました。やはりかわいい。それに単なる雇われの身の私達スタッフにも挨拶をしてくれます。礼儀正しい。

どうもオタク用語で「鍵開け」というものがあると勉強していた私は、新人アイドルと握手する記念すべき最初のオタクは誰なんだろう、きっと争奪戦になるんだろうなと楽しみにしていました。

※鍵開け:握手会において一番最初に握手すること。これに対し、一番最後に握手することは鍵閉めと呼ばれる。


しかし。
一向にお客さんが入ってこない。
鍵開けのお客様が入ってきたのは、握手会開始のアナウンスが流れてから数分後のことだったのです……


異変

先程、オープニングライブの客入りはよかったと書きました。
しかし、あれは狭い場所に密集していたから多く見えただけであって、広い握手会会場に散らばってからはひどく少なく見えました。
ライブ終了後も、すぐに握手に向かうのではなく、周りのオタクと歓談しながらのんびり向かっているようでした。

※解説:握手会は一部・二部・三部のように時間制でチケットが分かれていることが多いらしく、オープニングライブを見たからといって朝一で握手ができるとは限らないのです。だからのんびりしている人がいても何らおかしくないのです。

だとしても。
客が来ない。

レーンを独占しているような人気メンバーは比較的すぐにお客さんが来ましたが、私が担当していた二人一組のレーンにお客さんが来るのには時間がかかりました。

しかし、ついにその時が来たのです。

初めて来たお客さんからチケットを預かり、「手と頭を見せてください」と言ったところ、パッと見せてくれました。どうやら行きなれている人みたいです。
そして私はこう言いました。

「Aさん1枚(握手券の数)です、お願いします!」

握手会スタート前に死ぬ気で覚えた名前を正しい相手に対して言うことができました。幸先の良いスタートです。
こう言っている間にも時間計測は始まっているのですぐにストップウォッチをスタートさせます。
指名されたアイドルはお客さんとおしゃべりしながら握手をします。オタクにとっては至福のひと時。
しかし、そんな時間も私の呼びかけによって終わってしまいます。

「終わりです」

この言葉をかけられると、お客さんとアイドルは名残惜しそうにバイバイと言って別れます。


これが一連の流れでした。


私の担当したアイドルはファンが少ないらしく、二人一組にしてもなかなかお客さんが来なかったので、はっきり言って相当暇でした。
あまりにも暇だったうえにアイドルの顔面を眺めることは許されなかったので、待ち時間はずっとオタクたちの観察に勤しんでいました。

以上が観察の成果です。

・金を払わずにファンサを貰おうとするオタク
握手レーンの後ろはフリースペースで、オタクたちが自由に休んでいたのですが、そのスペースからアイドルに声をかけたり手を振ったりして、アイドルからファンサを貰おうとしているのです。

いや、握手券買えよ

乞食かよ

正直私はこう思ったのですが、アイドルたちはとても偉いのでご丁寧に手を振り返しています。
私には死んでもアイドルできないや、あの子たちすごいわと思った瞬間でした。

・名札を下げてくるオタク
これはよくいるみたいですね。アイドルに名前を覚えてもらうためにグッズを着けたり(荷物は荷物置きに入れさせられるので文字通り身に着けてくる)、名札を下げてくるオタクは多くいました。

しかし、いい歳したおっさんが可愛いフォントでひらがなで書かれた名札を下げているのはとてもシュールな光景です。
いっそのこと名刺下げたほうがアピールになるんじゃないのとちょっと思ったり。

・主張の強いオタク
元のファッションセンスがやばいのか、はたまた目立つためなのか分かりませんが、やたら変な恰好をするオタクはいました。
色々な人がいましたが、野球のユニフォームを着て来た人が一番よく分からなかった。

・全体的にオタクがオタクっぽい
一般的に、アイドルオタクといってもはまり具合や性格は様々であり、人気アイドルの握手会ではキモオタからオシャレイケイケライトオタまで様々な人が集ってくる(と思われます)。しかし、本件はデビューしたての新人だったので、ライトオタへの知名度はまだ低かった。したがって握手会に来たのはどちらかというと歴戦のオタクたち。そういった人達は男女問わず見た目や中身がオタク全開であり、なかなか普通に生きていると見れない異様な光景を見ることができました。


さて、こんなことをしているうちに一部、二部、三部……そして全てが終わりました。 
結果的に、私が担当したアイドルたちは大体同じくらいの数のお客さんが来ました。とは言ってもどちらも大しt ……もうやめときます。

ずっと立ちっぱなしだったのと、キモオタとアイドルのやりとりで精神がやられたのが体にたたり、終わったころには大分クタクタでした。


次の日、握手会の様子を掲示板まとめサイトで調べてみたところ、タイトルはこうなっていました。

「客来なすぎワロタwwwwwwwww」

やはりオタクたちも同じ認識でした。
ついでにいうと会場のキャパや日程が壮大すぎるといった意見も私と一致していました。


あのアイドルたちについて調べることはこの先ありませんでしたが、今はどうしているのでしょうか。握手会があったころはテレビ等のメディア露出がありましたが、最近はめっきり聞きません。活動しているのかも不明です。
あの時よりもファンが増えているといいのですが。



終わり



実をいうとまだ書いていない印象深いエピソードがあるのですが、より具体的にアイドルの正体がばれてしまう可能性があるので有料にしようと思います。
端的に言うとツーショット撮影の話です。興味のあるかたはぜひ。

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