身も心も 著:盛田隆二 光文社文庫
妻に先立たれ、毎日を無気力に過ごす礼二郎。彼を変えたのは、絵画同好会での幸子との出会いだった。やがて二人は恋に落ち、喜びも悲しみも分かち合いながら愛を育む。たとえ周囲の人間に後ろ指をさされようとも。だが、礼二郎は不意の病に蝕まれて......。ときめきを忘れかけていた男女が、限られた時の中で紡ぐ切実な恋愛模様を、まばゆいほどに美しく描く感動作。
まるで10代の少年少女のような、人生最後の恋。限られた時の中で命が輝く。
燃え尽きるまでそばにいたい。中江有里さん推薦(解説)。
解説も含め256ページ読了。こんなに人生の最後に燃え上がる恋は果たしてあるのだろうか?背表紙と帯を引用したが、まさにこの通り。酒屋をやっていた礼二郎は妻にこの幸子に恋したようには優しくできなかった。今は息子の雅人にコンビニにされてしまって、同居しているが煙たがられるような毎日に、ボケ防止の為と薦められたのが絵画教室だった。
そこで幸子と出会うのだが、幸子の方でも波瀾万丈な生い立ちがある。仲を深めて行く中でそれを知った礼二郎は突然、病に伏せってしまった。
介護シーンやリハビリなどは『父よ、ロンググッドバイ』や『二人静』で描かれた所を彷彿とさせるが、礼二郎は歩行困難からボケも患って来る。それをとどめようと日付を描いたり、絵を描いたり、健気な程、幸子の為に頑張るのだ。盛田さんはボケてなんか無い。鋭いリアリストと呼ばれる作家だ。でも、ボケて来る恐怖やボケの様子は限りなく礼二郎の本音を描く為に書かれている。ボケるってこんなに切ないんだなぁと言う感覚が読者に押し寄せて来るほどだ。
幸子の方でも親類でも無いのに礼二郎に寄り添う姿は健気だ。こんなに愛しい人に人生の最後で出会うなんてロマンチックだがあり得ないと思う。やはりフィクションだなぁと思ってしまう私は冷め過ぎだろうか。
今回はページ数が少なかったので三日で読めた。次は『蜜と唾』を読む。以上
今日もコンビニにコーヒーとタバコを買いに行きます。私の唯一の楽みです。奢ってくれた方はフォローしてイイねしてコメント入れさせて頂きます。それくらいのお返ししかできませんが、ご支援して頂けると幸いです。