見出し画像

金融機関と共に創る、シニア向けソリューションのアイデア

マネーフォワードエックスカンパニー公式noteです。
共創サービス紹介第4弾として、共創サービス本部でソリューションプランニンググループに所属する若林さんより、現在企画中のシニア向けソリューションについて語っていただきます。

若林 亮(わかばやし りょう)
首都大学東京(現 : 東京都立大学)卒業後、エーティーエルシステムズ、スカイライトコンサルティングを経て、JTBビジネスイノベーターズにて複数のプロジェクトを推進。スタートアップであるランドデータバンクで事業開発に従事し、2022年3月よりマネーフォワードにジョイン。共創サービスの創出を担当している。

私が所属するソリューションプランニンググループは、共創サービス本部の発足とともに新設された部隊です。金融機関の課題や、お客様のペインに接する中で、弊社であればどのような解決方法(=ソリューション)を提供できるかを検討しています。
今回は、前回の記事でも取り上げたシニア向けソリューションに関して、実際にどのような検討をしているかをご紹介いたします。

シニア向けソリューションが求められる背景

日本が超少子高齢化社会と呼ばれて久しいですが、高齢者の数は年々増えています。団塊の世代の方々が全て75歳となる2025年には、75歳以上の人口が全人口の約18%となり、さらに2040年には全体の人口数が減少する中で65歳以上の人口が全人口の約35%となると推計されています。
シニア問題の中で切り離せない論点が「認知症疾患者の数」です。厚生労働省が実施した「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、65歳以上の認知症患者数は(各年齢の認知症有病率が一定の場合)、2025年には約675万人(有病率18.5%)と5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。

金融機関の多くは、認知症等により契約者ご本人の判断能力が大幅に低下したと判断すると口座取引を制限します。金融機関の取引が制限された場合、年金の振り込みや公共料金の口座引き落としは継続しますが、出金や契約内容の変更はできなくなります。ご家族が代わりに口座を管理するには、法定成年後見制度を利用するほかありません。

成年後見制度とは、認知症の方、知的障害のある方、精神障害のある方など判断能力が不十分な人の財産管理や身上監護を、代理権や同意権・取消権が付与された成年後見人等が行う仕組みとして、平成12年4月1日からスタートした制度です。

ただし、法定成年後見制度を利用するにしても、手間と時間・費用がかかることや、柔軟な財産管理を行えないこと、成年後見制度の利用を途中で解約できないことなど、利用者(ご家族)にとっては、いくつかの問題点を抱えています。
そのため、各金融機関ではシニア層のニーズを捉えたサービスの提供や身体・認知能力の変化に対応したサービスの高度化が検討されており、弊社へのご相談も増えてきています。

これまでのマネーフォワードの取り組み

弊社が提供するお金の見える化サービス『マネーフォワード ME』においても、シニア層(55歳以上)の利用者数が増えてきています。
マネーフォワードは「すべての人の、『お金のプラットフォーム』になる。」というビジョンを掲げており、シニア層のお客様も重要なステークホルダーとして認識しています。

過去には、弊社のFintech研究所が、京都府立医科大学大学院医学研究科・成本迅教授と共に、高齢化社会におけるお金の課題解決に向けた取り組みを行っています。実際に地方金融機関と実証実験を行うなど、高齢化社会におけるFintechサービスの在り方について検討をしました。
こちらについては、Fintech研究所長の瀧と、成本教授の対談記事がありますので、是非そちらもご覧ください。認知症の実態なども改めて読み取ることができます。

また、エックスカンパニーとしては、NTTファイナンス社と終活をテーマにした『楽クラライフノート』のデザイン設計、技術提供、開発サポートの実績がございます。※2024年6月にサービス終了予定
『楽クラライフノート』はエンディングノートの役割に加え、終活に備え元気なうちから資産や家計を把握し管理しておくことができます。クラウド上で「誰に」「どの情報」を共有するか詳細に設定し、家族とのコミュニケーションをサポートできるスマートフォンアプリです。共有される情報には利用者の歩数やアプリの登録情報、スマホの充電状況がわかるライフログも搭載されており、見守りサービスの側面もあります。

楽クラライフノート

共創サービス本部として取り組む、シニア向けソリューションのイメージ

これまでの事業推進や研究活動の中で弊社が感じたのは、「認知症対策を前面に出したサービスだと使ってもらえない」「日常的に使われるサービスでないと、継続的に利用してもらえない」という課題です。認知機能の低下が顕在化してからのサービス利用では預金口座の制限のリスク回避に寄与できないため、健康な状態での登録が必要となってきます。しかし、認知症検知を想起するようなサービスは健康な状態では必要性を感じづらく、どうしても登録が後回しになってしまいます。また、仮にサービス利用をしたとしても自身が健康な場合にはサービスを使い続けることが少なくなってしまうため、日常使いするサービスとの組み合わせが必要です。

以下は、筆者が考える妄想のようなものですが…日常使いのサービスとの組み合わせには、次のようなものがあると考えています。

  • 孫の写真や成長記録を見守れるサービスとの組み合わせ

    • 定期的に閲覧、購入がされていたが、それがぱったりと無くなった際に、家族に連絡

  • コミュニティサービスとの組み合わせ

    • 地域SNSや、シニア世代での交流コミュニティへの参加頻度が減った等で家族に連絡

  • スマートウォッチやスマートフォンについている健康系アプリ(歩数計)との組み合わせ

    • 継続的に取得している健康データに変化があった際に、家族に連絡

などなど…

サービスを使う中で、普段とは違う行動が散見されるようになってきたようなタイミングでご家族に通知を送り、ご家族と利用者との会話を促していきます。その結果を踏まえて、金融機関の代理人設定などの仕組みを活用し、ご本人にとって臨む形での終活とする。このような姿のソリューションを作れないかとイメージを抱いています。

ソリューション活用の流れ

なお、上記はあくまで一例であり、実際のケースとしては多岐にわたる問題や課題を乗り越えた設計をする必要があると認識しています。

この点を意識したサービスにするためには、共創サービス本部のユーザーの声を取り入れたデザイン設計から着手することが有効です。アジャイルで意見をフィードバックさせるモノづくりを進めることによって「使いやすい・使われ続ける」サービスを創り上げることが可能になります。また認知症の検知だけでなく、アカウントアグリゲーションの技術を活用したお金面での見守りという要素を組み込んだサービス設計も可能です。

アカウントアグリゲーション技術とは、APIまたはスクレイピングを用いて、データの取得を行うことをいいます。ユーザーが利用する複数の金融サービス(銀行、クレジットカード、投資口座など)の情報を、金融機関から一元的に集約・表示できます。

我々の強みを生かしながら、パートナーと一緒に、社会課題であるシニア問題に対して良い形でサービスを生み出していければと考えています。

各ステージに応じた活用イメージ

最後に

共創サービス本部では現在、上記シニア向けソリューションの構想に賛同してくださるパートナーを募集しています。意見交換なども含めて、ご関心がある方がいましたら是非ご連絡ください。まだまだ弊社としても検討段階ですので、一緒にカタチを作るところから共に取り組みませんか。

他にも共創サービスに興味をいだいていただき、何かの課題感を抱えている企業様がおられましたら、お気軽にお問い合わせください。