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熊本県熊本市|sitateruによるアパレルサプライチェーンのDX化、リードタイムを70日から46日へ短縮

熊本県熊本市は、熊本県北部にある熊本県の県庁所在地です。政令指定都市になっています。

今回は「アパレル×IT」に取り組んだシタテル株式会社による事例です。シタテル株式会社は、熊本県熊本市で創業され、雑誌『AERA』で「日本を動かすベンチャー100」にも選ばれたスタートアップ企業です。

熊本を中心とした全国の中小零細縫製工場ICT化のプロジェクトです。


衣服生産のプラットフォーム事業「sitateru」

衣服を生産したい個人・アパレル・メーカーなどの「事業者」と、優れた技術を持っていながらそれを活かせずにいる「中小縫製事業者」の情報をベースにした事業です。

具体的には、事業者からの依頼を受けて縫製工場へ発注する際に、工場の生産キャパシティ(閑散期、繁忙期、生産対応アイテム、対応生地、最大ロット数と最小ロット数、納期など)やリアルタイムな稼働状況を加味し、依頼主がリクエストする品質・価格・納期にマッチする最適な工場を選定するサービスです。

2014年から熊本県内の4つの工場でテスト事業を開始し、需要が高いことが分かりました。その後、九州エリアへ拡大し、2015年には全国に連携工場を拡大しています。


システムを支える3つの機能

1)チャットツール機能
衣服を生産したい事業者からの様々な依頼に対応するためには、作りたい衣料品のイメージ化が重要です、そこで、仕様の相談や進捗確認をスマホやPCからできるチャット機能を設けました。チャットにより、デザインや仕上がりに関して細かな確認が可能となります。

2)工場マッチング機能
前述したように、技術力、生産対応アイテム、価格帯、リードタイム、繁忙期、閑散期といった情報を管理することで、衣料品を生産したい事業者と、事業者のオーダーに最適な工場をマッチングします。最適な工場をマッチングすることで、小ロット生産・短納期化を実現しました。

3)IoTセンサー
工場の稼働状況を把握するためにIoTセンサーを使いました。IoTで状況を検知し、リアルタイムに情報を取得することで、よりスピーディーで柔軟性の高い対応ができるようになります。


リードタイムが圧倒的に早い

アパレル産業では、春夏に秋冬もののデザインを提案、秋冬に春夏もののデザインを提案します。通常は、デザインを作成してから量産して世に出るまでには約6ヶ月かかります。
しかし、資金力が少ない中小事業者であれば、もっと早く生産して世間の反応を見たり、短期間で売上を上げていく必要があります。そこで、sitateruでは約2カ月で生産して納品することを実現しました。しかも、小ロットから受付が可能です。

リードタイムを含め、大きな効果が以下のとおりに表れています。

◯ 登録事業者数 100社→3,100社
◯ 連携工場 5工場→230工場(加工、生地メーカーも含む)
◯ 関連雇用数(1工場30人とした場合)150人→6,900人
◯ 平均量産生産リードタイム 約70日→46日


シタテル社は最近ではEC領域にも進出し、ますますサービスの拡充を進められています。


ポイント

「工場は極めて協力的でした。やはり需要と供給のバランスにどの工場も困っていたようで、閑散期の顧客獲得に苦戦していた。ただ莫大な費用をかけてまで仕組みをデジタル化することには抵抗があったようで、パソコンを使えない従業員もたくさんいました。
だから導入のハードルを下げて、とにかく使ってほしいという思いでサービスを改善してきました」
※出典:https://www.businessinsider.jp/post-210522

シタテル社代表の河野さんはこのように語っていました。

最近でこそ「DX」というワードが(バズワードのように)トレンド化され、生産者が直接消費者へ商品を届けるための仕組みをdely社やhey社などが手掛けています。こういった取り組みの先駆けとなるような事例です。

創業した地元熊本市で、まずはスモールスタートしてサービスの仮説を検証したというのがポイントとなる点だと思います。

サービスにおける立ち上げ時は、「1000人に興味を持たれるサービスよりも、10人に対して強烈に刺さるサービスにすべし」という話しがあります。今回の事例でもまさにそれを実践されており、熊本市の4つの工場が抱える課題を解決した、というのがスタートであり、仮説検証に成功した点です。

こういった新しいサービスを立ち上げる時に地元の工場や企業を巻き込んでいくという進め方は非常に勉強になりました。

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