見出し画像

京都府与謝野町|IoTセンサーでデータ取得しAIで農作業を適切に判断、毎年入賞するお米

京都府与謝野町は、京都府の北部に位置する、数々の歌人のゆかりある町です。与謝野晶子が明治39年に発表した歌に京都府与謝野町の稲作について触れられています。それほどに、昔から稲作が有名な場所です。

今回は農家が抱える課題に対するICT活用事例です。


高齢化によりノウハウが途絶えてしまう課題

高齢化はどの地域でも起こっており、与謝野町でも直面していた課題です。高齢化により労働人口が減ってしまい事業が衰退してしまうだけでなく、長年働いて蓄積されたノウハウが途絶えてしまうという課題もあります。

特に農業においては天候や気温によって収穫量や質が左右されてしまうため、長年経験して積み重ねたノウハウがないと対応が難しいことがあります。そういった貴重なノウハウはベテラン農家の方の頭の中にしかありませんので、引き継ぐことが難しい状況でした。

これから農業を始める方も少なく、ノウハウの引き継ぎ先がいない状況でした。一つの要因として、農作業のノウハウを学び習熟するには時間がかかるという理由があります。天候に大きく左右されやすいのですが、天候は毎年大きく変わります。そのため、農作業を始めることに対するハードルが非常に高い状況でした。

これらの課題を、IoTセンサーによるデータ化で解決しました。

センサーによる徹底的なデータ化とAIによる判断のアシスト

京都府与謝野町の農家では、ソフトバンク社の「e-kakashi」というセンサーを導入しました。

スクリーンショット 2020-10-05 20.33.03

※上記サイトから画像を拝借しました。ありがとうございます。

農家の田んぼにセンサーを設置し、温度・湿度・日射量・ 土壌水分量・土に含まれる肥料の量などのデータを取得することができます。それだけではなく、長年蓄積してきたノウハウ・経験・勘の情報を紐付けます。

こうして、田んぼで取得したデータ、ベテラン農家のノウハウが合わさることで、病害虫発生の環境リスクによるアラート通知だけではなく、このタイミングで次にこの作業をしてくださいといった作業指示まで出してくれます。(ekレシピという機能です)
このekレシピはスマホからでも閲覧できるため、どこでも、いつでも、詳細の情報を知ることができるようになります。

最終的には、全てのデータが分析されてグラフで表示されるようになります。そこから得られる結果を、ekレシピ側へフィードバックすることで、より精度があがる、といった仕組みです。


新規就農者へノウハウを継承し農作業を適切に判断、毎年入賞するコシヒカリ

ここまでデータ化されて、作業指示までシステムが出せるようになると、これから農作業を始める新規就農者の方々にとってハードルが高いという課題をクリアすることができます。現地で取得したデータとベテラン農家のノウハウがシステムに蓄積され、作業指示まで出してくれるためです。

また、ekレシピで農作業の手ほどきをしてくれるため、これまで勘や経験を頼りにしていたベテラン農家にとっても助かるシステムとなっています。自分の経験やノウハウに加えて客観的なデータを判断材料にすることができるからです。

ベテラン農家では、「丹後産コシヒカリ良食味米共励会」で行われているコンテストで毎年入賞するほど美味しいコシヒカリを作ることができています。


ポイント

今回は与謝野町の町長を中心に、自治体が一緒になって取り組んだという点は一つ成功のポイントだと思います。自治体と民間企業(ソフトバンク社)が手を取って取り組んだ良い事例ですね。

また、全てをデータ化してAIだけで判断するのではなく、ベテラン農家が長年蓄積したノウハウもデータとして加えたという点もポイントです。

例えば、温度・湿度などはセンサーで検知したほうが正確なデータを取れるので、田んぼで取得したデータを使えばよいものです。一方、稲刈り時期を見極める作業においては、データだけで判断することは難しく、人の判断も必要になってきます。そのため、現地で取得したデータだけではなく、農家のノウハウ・経験もシステムへインプットすることで、より精度の高い指示ができるようになります。

昨今話題になっている「DX」「デジタル化」という言葉を聞くと、1から100まで全てデジタル化して全てAIが判断して・・・という極端な想像をしてしまい、うちの会社では無理だ、と捉えてしまうことがあると思います。

しかし、人の判断が必要な仕事はたくさんあります。判断するところだけは人が行う、というやり方も一つですし、今回のように人が持っているノウハウ・経験もデータ化して判断できるようにする、というやり方も一つです。

何から何までデータやシステムで解決するのではなく、インプットやプロセスにおいて人のノウハウ・経験・勘を介在させる、というアプローチは非常に勉強になります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?