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広島県福山市|製造・卸売業のDX事例、オンライン営業活動の取り組み(深江特殊鋼株式会社)

今回は、広島県福山市に本社拠点を持つ「深江特殊鋼株式会社」さんのDX事例をご紹介します。社員の方々から直接お話をお伺いし、内容をまとめましたので、ぜひ参考にして頂ければと思います!

■本記事のまとめ
◎中小企業基盤整備機構が運営しているビジネスマッチングサイト「J-GoodTech(ジェグテック)」で閲覧数1位を獲得。
◎自動見積り機能のあるWebサイト「BTA・ガンドリル.com」、新しい機械加工の調達方式を実現したWebサービス「Meta-Navi(メタナビ)」でオンライン営業活動を実現。お問い合わせを数多く獲得。
◎SNS(Twitter、Facebook、Instagram)の公式アカウントを開設、フォロワー数1,000人以上。
◎DXに取り組んで最も良かったことは「社員の成長」。

コロナ禍で対面営業が難しくなったことがDXへ取り組むきっかけ

深江特殊鋼株式会社さんは鋼材の販売をメインに行い、金属材料の選定・調達・加工まで一貫したサポートを提供されている企業です。

元々は対面営業で、ルートセールス・訪問営業を行っていました。しかし、2020年3月頃からはコロナウィルス感染症拡大により、訪問営業をすることが難しくなりました。どの企業でも直面した問題です。

そこで、コロナ禍においてどうやって取引先へアプローチすればよいか、どうやって見込み顧客を獲得すればよいか、ということを考え始めたことが本取り組みのきっかけでした。また、今後仕事量が増えたことを想定し、今のうちからいろいろな会社とパートナーシップを結んでおこうと考えていたということも取り組む理由の一つでした。

大きく4つの取組みを実施されていたので、まずはそれぞれの取り組み内容についてご紹介します。

1.中小企業基盤整備機構「J-GoodTech」で閲覧数1位

中小企業基盤整備機構が運営しているビジネスマッチングサイト「J-GoodTech(ジェグテック)」への掲載を開始し、定期的な更新を続けた結果、2020年9月・10月で閲覧数ランキング1位を獲得されました。

コロナ前から登録自体は行っていましたが、コロナをきっかけに有効に活用する方法はないかと考え、掲載ページ内容を充実させ更新頻度を上げた結果閲覧数が増え、見積り依頼や相談などのお問い合わせを獲得しています。

まさにオンラインでの営業活動と言えます。

J-GoodTechを更新されていた社員の方にお話を聞いたところ、
「1位を取ってみよう!と話しをしたところからスタートしました。」
「どうやったら見てもらえるのかを考え、特に件名には工夫しました。あまり専門的な表現は使わないように、かつ抽象的になりすぎないように気をつけました。」

とお話しされていました。

2.Webサイト「BTA・ガンドリル.com」

コロナが拡大し始める少し前の2020年3月に、BTA・ガンドリルの加工受託サイト「BTA・ガンドリル.com」を立ち上げました。このサイトでは、鋼材の穴開け加工に関する同社の技術や設備、実績を公開することで受注に結びつけるものです。

BTAとは、Boring and Trepanning Associationの略で、ボーリング・トレパン加工という意味で、深穴切削加工のことを指しています。

ガンドリルとは、深穴加工用のドリルのことで、歴史的には小銃や猟銃などの穴を開けるために開発されました。その由来からガンドリルという名称がつけられています。ドリルの先端から高圧の切削油を噴射し回転して切削することによって、切りくずをドリルによって開けられた穴から取り除きます。

このWebサイトでは発注依頼はもちろん、加工作業における見積りを自動で行うことができます。これまで鋼材加工の価格は見積りを取るまで分からないと言われてきましたが、長年の受注実績を活かして自動での見積りを可能としました。そのため、人を介すことなく見積りから見込み客の獲得まで行うことができます。

小売業界など低価格帯の商品においてはECサイトや見積りサイトを使うことが増えていますが、鋼材・鉄鋼の製造・卸売業界においてはWebサイトで展開しているのは珍しいので、先進的な取り組みと言えます。

実際に反響が多く、お問い合わせ数が非常に多いとお話されていました。こちらもオンラインでの営業活動を実現できています。

3.機械加工調達ナビ「Meta-Navi」

問題解決型のソリューションサイト、機械加工調達ナビ「Meta-Navi(メタナビ)」を2020年10月に立ち上げました。

従来は、製造・加工を行っている企業に対してまずは見積りを取り、予算に収まるかどうか確認した上で、金額や納期の交渉を行ったり…というプロセスを経て、ようやく発注に至っていました。

しかし「Meta-Navi」では、見積りプロセスにおける煩わしさを解消し、まず発注者が希望する納期・価格を提示し、その条件に合った企業・工場を調達先として見つけるということを実現しました。

Meta-Naviは、コロナ前から構想自体は持っていましたが、コロナ禍になり対面営業ができなくなってしまった空き時間を活用し、営業のメンバーが中心となって、社長や専務を巻き込みながら推進しました。

また、アナリティクスを使ってアクセス分析を行うことで、特定のページを長く閲覧している企業に対して営業をかけるということができるようになりました。まさにオンラインでの営業活動です。

Meta-Naviは2020年10月にオープンしたばかりですが、既に成約もしており、着実に効果が出始めています。

※日本経済新聞でも紹介されていました。

4.SNS(Twitter、Facebook、Instagram)の利用

2020年5月頃から会社公式でSNS(Twitter、Facebook、Instagram)を始めました。先にご紹介した「BTA・ガンドリル.com」「Meta-Navi」は同業界の企業向けのWebサイトなので、製造業以外の方にも製造業自体のことを幅広く知ってもらうための手段としてSNSを使いました。

特にTwitterはフォロワー数が1,000人を超えており、着実にフォロワー数を伸ばしています。

Twitterを運用されている、いわゆる"中の人"にお話をお聞きしたところ、
「自社の宣伝ばかりする営業っぽいアカウントにはならないように気をつけています。フォローする立場で考えると、営業アカウントはフォローしたくならないためです。」
「ユーモアに富んだ内容を面白おかしく紹介するようにしています」
とお話されていました。

実際にTwitterのつぶやきはほっこりする内容も多く、必見です!

・Twitter

・Facebook

・Instagram

DXの取り組みで苦労したこと

(1)手探り状態で始めたこと
一番最初は「zoomを使ったオンラインの打ち合わせが便利らしい」ということを聞いて、オンラインの打ち合わせをやり始めたことからスタートしました。

社内にはDXや最新のIT技術について知見・ノウハウのある社員はいませんでした。そのため、手探り状態で各取り組みを行ってきたという点には苦労されていました。

正解があるわけではないため、今もなお手探りでやっているとお話されていました。特にSNSの更新についても、今の運用が合っているかどうかが分からないという不安を抱えながらも継続して続けています。フォロワー数が徐々に増えてくると「この写真をアップしたら、危ないと指摘されて炎上するのではないか…」という懸念も出てきます。そのため、アップする写真や文面には常に気を使っているようです。

(2)継続することの難しさ
SNSだけでなく、J-GoodTechでの更新、BTA・ガンドリル加工.com内の加工事例更新、Meta-Navi内のコンテンツ更新など、更新を継続して続けていくことにも苦労されていました。

Webサイトは作って終わりではなく、見てもらわなければ意味がありません。そのため、見てもらうためにトピックスを定期的に更新する必要があります。継続していくことは重要でもあり難しいポイントでもあります。

現在は営業メンバーが中心となってコンテンツを考えて更新を続けられているようです。

DXに取り組んで最も良かったこと「社員が成長したこと」

最後に、専務取締役の木村様へ本取り組みで良かったことをお聞きしたところ、以下のようなお答えを頂きました。

「DXへの取り組みの結果として、今後どこまで売上に繋がっていくかどうかは正直まだ分かりません。」
「しかし、今回の取り組みを通じて、社員が成長してくれたということが最も良かったことです。企画を考えて計画し実行する、そして軌道修正をしながらプロジェクトを進めていくという経験により、"プロジェクトを推進する力"が身に付いたのではないかと思います。」
「そういう意味でもDXへ取り組んで良かったと思っています。」

DXというと、アナログだった業務を自動化・デジタル化する、ビジネスモデルを変革する、という目に見える成果に注目されがちです。もちろん企業にとっては目に見える成果は重要ですが、何よりも社員がDXの取り組みを通じて成長できるというのは企業にとって最も大きな価値であり資産になるのではないかと感じました。

今回の事例を参考に、DXへ取り組もうと思うきっかけになれば幸いです。

(深江特殊鋼株式会社の木村様、正岡様、平上様、本記事執筆に際してご協力頂きまして、誠にありがとうございました)

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