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京都府舞鶴市|廃棄物収集の走行距離を最大42%削減、IoTを使ったゴミの見える化

京都府舞鶴市は、京都府の北東部に位置し、日本海側に面している人口約8万人の町です。京都市から車で2時間ほどで行くことができ、山と海の自然に囲まれた町です。

ICT技術を活用して廃棄物処理効率化へ取り組んだ事例をご紹介します。

「廃棄物をできるだけ無くし、資源として上手く使う」ということは持続可能な開発目標(SDGs)で掲げられており世界共通の目標です。京都府舞鶴市では従来から課題であった廃棄物回収のコストを下げつつ、効率よく回収する仕組みを構築しました。

■本記事のまとめ
・ゴミ収集車が廃棄物を回収する業務に無駄があり、時間がかかっていた。
・ゴミ捨て場にセンサーを設置して、各回収拠点にあるゴミの量を可視化。センサーからサーバへの通信はLPWAを利用。
・収集したデータを分析し、ゴミ収集車が効率的に回収できるルートをシステムが計算。
・効果として、回収時の走行距離が最大42%削減できた。
・業務効率化により得られることは「人手不足の解消」「利用者の利便性向上」があげられる。

廃棄物回収と処理の課題

企業から排出される廃棄物ピストン方式(回収場所へ行き、廃棄物を回収してゴミ処理場へ送るという輸送を繰り返す方法)で回収し、各家庭の廃棄物は一括回収(複数拠点を一度にまわって回収する方法)が多く採用されていました。

企業のゴミ収集においては、ゴミの量が少なくて例え積載量に余裕があったとしても、次に回る拠点でゴミの量がどれだけあるか分からないため、都度ゴミ処理場へ戻っていました。家庭のゴミ収集においては、仮に廃棄物が全く出ていなかったとしても、回収場所までゴミ収集車が行っていました。

いずれに方法においても、どの場所でどれだけの廃棄物が出ているのか把握できないことが原因で非効率な収集となっていました。このように廃棄物を回収するコストがかかっているということが、再利用を阻害する要因の一つでした。再利用するためにも設備投資等の費用がかかりますが、再利用に向けたコストを割きづらい状況だったのですね。

堆積量を測定するセンサーと回収ルートの解析

効率的に廃棄物を回収するために、2つの仕組みを構築しました。

(1)堆積量を測定するセンサーで見える化
超音波で内容物の堆積量を測定できるスマートセンサーを、廃棄物を入れるボックスに設置しました。これにより、廃棄物の量を測定することができるようになりました。

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※画像:enevo 導入事例

廃棄物置き場や廃棄物を入れるコンテナは、企業や場所によって形状が異なりますが、このセンサーであれば後から簡単に取り付けることができます。また、センサーが取得したデータは無線通信でクラウド環境のシステムへ送信されるため、配線に気を遣う必要もありません。

無線通信においては、消費電力を抑えて遠距離通信を実現する「LPWA」という通信方式が使われました。LPWAについては、以前取り上げた熊本県御船町の事例でもご紹介させて頂きました。

(2)回収ルートの解析で効率的なルートを提示
センサーで収集した情報はゴミの量だけでなく、場所の情報も含まれます。つまり「どこで」「どれだけの量が」排出されたのか把握することができます。そこで、蓄積された拠点ごとのゴミの量のデータを分析することで、ゴミ収集車が効率的に回収するルートを提示するシステムを導入しました。

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※画像:NTT西日本 HP

走行距離最大42%を削減!廃棄物の収集効率化を実現

実証実験を行った結果として、最大42%の走行距離を削減できました。

◯ 産業廃棄物の回収走行距離:20%削減
◯ 小型家電の回収走行距離:42%削減
◯ プラスチック包装類の回収走行距離:40%削減

ポイント

今回の取り組みでは、Enevo Japan株式会社が提供するセンサーや仕組が採用されました。センサーを簡単に設置できる上、頑丈にできているため故障しづらいという点も事業者にとっては安心材料となったようです。

今回はポイントと言いますか、着目すべき点について言及します。
取り組みの効果として、走行距離が削減され回収コストが下がりました。得られる効果としてはこれだけではなく、将来性も含めて2つあります。

1.人手不足を解消できる
2.住民の利便性が高まる

1の人手不足について、日本全体の人口がこれから減っていくため必然的に労働人口も減ります。すると、今までは何とかマンパワーをかけて行ってきた業務が回らなくなってしまいます。そこで必要なことが「業務の効率化」です。今回のように回収にかかる時間を削減することで、例えばこれまで2人で対応していた業務が1人で対応できるようになる、といったことが十分に可能です。

今まではコストを削減したいから業務の効率化へ取り組む、という動機が多かったと思いますが、これからは人手不足へ対応するために業務の効率化へ取り組む必要がでてきます。人口減少は確実にやってくる未来ですので、"やった方がよい"から"やらなければならない"へ考え方をシフトする必要があります。

2の利便性については、例えば住民がいちいち回収業者を呼ばなくても、センサーでゴミを検知してくれるので勝手に取りに来てくれる、ということが可能です。これはセンサーなどICTを使った仕組みがなければ実現できないことです。ICTを活用することで、利用者の利便性も高めることが可能になる、という効果も念頭に入れておくと、ICT活用に対して前向きに捉えることができるかもしれません。

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