見出し画像

石川県加賀市|漆器の受発注・請求・支払い業務をシステム化、66時間を削減

石川県加賀市は石川県南西部に位置し、福井県と隣接する街です。フルーツ狩り、うさぎと触れ合えるテーマーパーク、日に7回も水の色を変える湖・柴山潟に建つ浮御堂、石川随一の渓谷美、など自然がきれいなところです。

漆器職人の高齢化による生産力の低下、アナログな運用による非効率作業

加賀市では「山中漆器」という古くから伝わる石川の伝統工芸があります。

画像1

この山中漆器をつくる職人が高齢化してしまい、後継者不足により生産力が低下していました。

また、従来からの慣習で受発注・請求・支払い・進捗確認などの手続きは、紙・電話・FAX・訪問というアナログなやり方をしていました。製造工程が分業制となっているため、各工程の進捗状況がわかりにくいという課題もあります。


職人の理解を得ながらデジタル化を推進

これらの課題に対して、従来からの商習慣のデジタル化により、サプライチェーンの効率化を実現しました。無駄な作業を削減して山中漆器の生産に集中し、手続きを効率化することで無駄なコストも削減する、という取り組みです。

高齢者が多い場所でどのようにデジタル化を進めたのかというと、地域にある金融機関が産地の取り纏め役となり、自治体や組合と連携して進めたのです。そこにシステム会社も加わり、クラウドシステムを導入し、デジタル化が進められました。

今回導入されたのは、サイボウズ社のkintoneと工程管理用のクラウドシステムでした。

これらのシステムを使うことで、受発注処理や請求・支払い処理などの業務がシステムで一元管理されますので、kintone上に入力されたデータは関係者がいつでも、どこからでも見ることが出来るようになります。生産工程の見える化です。

少々余談ですが・・・
kintoneは 1 ライセンス月額780〜1,500円程度なので、運用費用はかなり安く出来ていると思います。kintone、優秀ですね…。


平均30%の削減効果

システムの導入により、各業務にかかる時間が約10〜30%程度削減され、削減時間を合計すると66時間にもなります。この削減数値は導入当初のものなので、システムに慣れてくれば更なる効率化が見込めます。

スクリーンショット 2020-09-15 22.44.09


※全国地域情報化推進協会の資料からデータをお借りしました。


ポイント

今回は何といっても、高齢者の職人へ最新のクラウドシステムを導入した、という点がポイントです。高齢者かつ職人、となるとITリテラシーはかなり低いと思いますが、なぜ導入に成功したのでしょうか。理由は2つあります。

1)有志を募り勉強会を開催した
地元の金融機関が、有志を募って勉強会を開催しました。この勉強会の中で、地域全体の課題であることを再認識してもらうというアプローチです。
ここでは直接職人へアプローチするというよりも、職人に近い位置にいる「自治体」や「山中漆器連合共同組合」へのアプローチでした。
まずは周りを巻き込んでいく、という一つ目のアプローチです。

2)ITに抵抗感のない人から使ってもらった
ITリテラシーは低いと思う、と書きましたが、中にはITシステムを使うことに対して前向きな方も必ずいらっしゃいます。まずはそういった抵抗感のない人に使ってもらうことで、分かりやすく効果を示すことができます。
ITシステムへの取り組みへ消極的な人たちは、"よく分からないから"という理由で不安や懸念を頂いていることが多いです。
であれば、ちゃんと便利になりますよ、ということを示すことが重要です。

効果を示すことで「◯◯さんがシステムを使って、作業が楽になったようだ。確かにこれは便利そうだ。」という話しが出るようになれば大成功です。


このように「周りを巻き込む」「抵抗感のない人から使ってもらって効果を示す」という進め方は、あらゆるシステム導入プロジェクトでも転用できるやり方ですので非常に勉強になります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?